パリ・ダカールラリーで日本人初の総合優勝を果たしたスゴい人!DAY4

今週のスゴい人は、伝説のクルマ、三菱自動車のパジェロがバカ売れした原動力となった篠塚建次郎氏。「モノづくり大国・日本」の代表ともいえる自動車業界の隆盛をソフト面で支えたラリードライバーだ。その類まれなドライビングセンスで激動の時代を走り抜けたスゴい!軌跡を追う。

令和リニューアル記念4日連続インタビュー

DAY4

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走り続けて古希70歳、東大プロジェクトとセネガル支援

日刊スゴい人編集部(以下 編集部)本日は、今でも様々な形で現役で走り続ける篠塚建次郎さんの心の内、そしてこれからを生きる若者たちへ向ける眼差しについて伺います。

 

編集部 いきなり残念な話ですが、若い人って、昔ほどラリーを見ていないですよね。

篠塚  そうですね。本当に残念だけど、ラリーをポピュラーなものにしようと思ってる人間がいない、っていうことなのかなあ。日本人ドライバーがいないっていうことが大きいかな。だから今、一生懸命にトヨタが日本人レーサーを育ててる。

 

編集部 それからラリーに限らず、そもそも若者の車離れ?がありますよね。幼い男の子は、昔と変わらず、ミニカーや本物の車が大好きですけれども。 90年代なんかは車が好きだからトヨタに乗る、自動車メーカーに就職したい。なんて若者も多かったですが、今の子たちは、選択肢が多すぎるのかもしれないですね。

篠塚 その問題解決は実は簡単なの。ラリードライバーになって世界のレースで勝ちまくると、女優の○○と結婚できて、綺麗な女の子と付き合えて、収入は毎年20億円です、っていうのが出てくると、一気に注目されて変わるんだから。今、そういう人がいない。

 

編集部 なるほど、YouTubeより稼げるな!みたいな(笑)。彗星のごとく現れて一気に注目されるスポーツ選手もいますしね。

篠塚 そうそう、そういうこと。昔から人間の望むこと、憧れって変わってなくて、単純でわかりやすいから。

 

篠塚 今、トヨタはオーディションで2人選び、フィンランドで一年間勉強させて、トヨタ車でのヨーロッパのラリーを一生懸命やってて。もう3年になるかな。

 

編集部 モータースポーツというのはどうしてもメーカーさん主導になりますね。

篠塚 お金がかかるからね。何十億~100億という単位でかかるから、個人ではできないよ。

 

実はトヨタは、1991年にも同じこと1回やったんですよ。その時は、僕に対抗してという意味合いもあったのだけれど。

編集部 つまり、刺客的な?

篠塚 90年のサファリラリーっていう世界選手権があって、その時、私は5位だったの。優勝がトヨタ。でも、新聞に「篠塚建次郎5位!」ってドーンと出て、あとは取って付けたように「尚、優勝はトヨタ。」って、一行出ただけだったから。

 

編集部 わあ、それは恨まれますね。(笑)

篠塚  その頃トヨタはラリーに桁違いに投じてたからね。「こんなに使ってこの扱いか!」って、トヨタの副社長が頭に来たもんだから、91年にオーディションで一人藤本君って子を1年間フィンランドで研修してて、僕が出る海外ラリーに全て出場させてた。

 

編集部 それは真剣になられたでしょうね。さて篠塚さんは現在もソーラーカーで走ったり、学生の指導などもなさっていますよね。

篠塚  私は今70歳で古稀なんですけれども(インタビュー当時)、77歳の喜寿まで走るつもりでいます。だからチームTシャツに「古稀から喜寿へ」って入れようと思っててね。

学生は東京大学工学部の3年生のチームをもう7年くらい指導しています。<東京大学HPより>

具体的には、クルマの準備・修理や、英語でのエントリー、飛行機やホテルの手配、船会社でクルマを送り出す手続きをしたり。モナコ、フランスに同行して食事を作る班もあって。ちゃんと単位ももらえるし、とても人気があります。東大生は頭が良いから、世の中に出ると何でもできると思われるでしょう?だから座学だけではなくて色々と体を動かす経験を通して逞しい実践力を身に着けてほしいと思っています。

 

編集部 なるほど。では、篠塚さんの経験を指導されているのですね。

篠塚 まあ、でも、アドバイスは極力控えて、あえて失敗も見守る。もちろん整備などで本当に危ない時は、口を出しますけどね。毎年失敗が多いのは、スケジュール管理だね。(笑)

編集部 スゴいですね。。

篠塚 それからパリダカのゴールの町、セネガルの首都ダカールに、2002年に小学校(篠塚小学校)を造りました。レースが終わると文具を持って行くのよ。でも、2008年に情勢不安からラリーが中止になって以後、開催地が南米に移ってからはいけなくて。2019年1月に、70歳の挑戦で、12年ぶりに文具を持って行ったの。今住んでいる、山梨県北杜市の小学校に文房具の寄付を募り、子どもたちが持ち寄った沢山の文具をね。地球のほぼ真裏のセネガルと子ども同士の繋がりができるといいな、と。2020年1月下旬にも寄付に行きました。<セネガル大使館HPより>2020年は、ちょうど、日セネガル外交樹立60周年記念なので、国同士の結びつきを強くしよう、という年でね。

来年、ラリーが開催されるかわからないけれど、今度はマスクと石鹸を持って行こうと思ってます。「日本でコロナの被害が比較的少なかったのは、手を洗う習慣があるからなんだよ、だから、マスクして手を洗ってね」って。

編集部 篠塚さんにしかできない素晴らしい社会活動ですね!今後も末永く両国の関係が続くように願っています。

篠塚  ありがとうございます。

 

 

【取材を終えて】

乗馬に始まり、自転車、自動二輪、軽自動車、四輪駆動車、大型トラックにソーラーカー。

「乗る」「運転する」ことが宿命づけられ、且つ、それが取りも直さずご本人の情熱を注ぎたい方向、幸福感と見事に一致するとは、なんと究極の理想だろう。人は誰しも、そういう宝を得るチャンスを隠し持って生まれて来ているのかもしれない。宝を見つける鍵は、篠塚さんのようにふいに訪れるかもしれないし、躊躇せず行動してみた先に、思いがけず待っているのかもしれない。

会社に多大な恩恵をもたらしながら、自身の待遇に不満を持つことなく、命懸けで大好きなことに挑み続けた姿勢、ご家族仲の良い様子、ペンションのお客様や学生、子どもたちを笑顔にする篠塚さんの人生に、人間の真の幸福を教わった気がしました。

取材:アレス ライター:MAYA 翻訳:Tim Wendland

◆篠塚建次郎氏 プロフィール

大田区出身 1948年生 東海大学卒

1971年 三菱自動車入社

1997年 ダカール・ラリー総合優勝 他多数

 

 

取材:アレス ライター:MAYA 翻訳:Tim Wendland

 

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