フランス育ちだからこそ、三味線の魅力を伝え、演奏、指導するスゴい人!

フランス人形の中にお菊人形が1人

日本の子どもたちって不思議!?

沢山の寄り道、回り道から生まれた結晶

本日登場するスゴい人は、国内のみならず海外においても三味線演奏及び指導を果敢にされている方だ!
古き伝統文化の中において彼女の活動領域や表現方法は自由奔放に見えるかもしれない。
しかし、彼女が育ってきた環境を知れば、バランスの良い彼女の活動を応援したくなるだろう。
日本の文化に古くから根付く三味線を通じ、彼女は何を伝えていきたいのか聞いてみよう。きっとこれから彼女が手掛ける計画にワクワクする人も多いだろう。

さあ…
山尾 麻耶様の登場です!

西洋文化の家族だったからこそ

祖父も父も洋画家で、母はフランス語の教師、祖母は洋服のデザイナーで、母方の父もインテリアデザイナーという西洋文化家族でした。
西洋に触れていた家族だからこそ「和」の良さも理解していたのでしょう。
そして、私は6歳の6月6日に習い事として三味線を始めました。
三味線を習う子どもは珍しく先生からも可愛がって頂き、自然と好きになっていました。
友だちから「麻耶ちゃんは三味線なんてやっているの?と、うちのお母さんが言っていた」と言われたのを覚えています(笑)
父はスペイン留学中に母と出逢い、帰国して私が産まれました。
私が7歳の時に、「毎月家族が生活できる生活費を送るのでフランスで絵を描きなさい」と父を支援する人が現れ、突如フランスへ。

フランス人形の中にお菊人形が1人

フランスでピアノやタップダンス、器械体操を習っていたのですが、ダンス教室での私は、ビジュアルがフランス人形の中のお菊人形(笑)
可哀想を超えて笑える程でした。
子ども心に、この世界を目指してはいけないと思いました。
まだ幼い時期だったのでイジメというのは無かったのですが「なんで麻耶の顔はそんなに平たいの?」「麻耶の頭皮は顔の皮膚の色と違うの?気持ち悪い!」など、人種差別ではなく自分では東洋人という認識がまだ持てていないので、相手がびっくりすることに自分がびっくりしていました。
そんなカルチャーショックを日々受けていると、自分はフランス人ではなく日本人なんだと否応なしに認識させられました。

喜怒哀楽を感じる音色

先代の市川猿之助さん(猿翁さん)一座がフランス公演で子役を募集され応募し、子狐役で舞台に立つことに。
舞台は毎回スタンディングオベーションで拍手が鳴り止まないほどに大盛況。
お芝居の地方(じかた…伴奏)で、義太夫という太棹の三味線の音を聞いた時に「日本人の喜怒哀楽が全て三味線で表現されている!三味線が上手くなれば喜怒哀楽を素直に伝えられるから素敵!」と衝撃と感動を同時に味わったのです。
フランスの子どもたちは自分の感情も含め物事をハッキリ言うのですが、私は言葉の壁もあり、性格的にもなかなか表現できないし、フランス人は日本人と違うコミュニケーションを取るんだなと思っていたのもあるかもしれません。
ただ、この舞台を通じて日本人ってカッコいいし、ありのままで良いんだと思え、日本に帰ったら三味線を絶対に弾くんだ!と強く心に決めました。

日本の子どもたちって不思議!?

バブルが崩壊し父への支援も途絶えることになり、6年生になるときに帰国しました。
フランスの子どもたちは「僕はこんな詩が好きだけど麻耶は?」「昨日、お母さんとこんな料理を作ったんだ」と、誰とでも話せる会話が中心なのですが、日本の学校は「昨日のテレビ見た?」「あのゲームクリアした?」がほとんどで驚きました。
フランスではピアノを習っている子どもたちは上手でなくても、人前でも恥ずかしがらずに弾くし、勝手にアレンジもするんです。
でも日本でピアノを習っている子どもたちは発表会に向けて練習し、それ以外に人前で弾くことや、ミスタッチを恥ずかしがります。
お友達には三味線を習っていることを話してもまた「麻耶ちゃん三味線なんて習っているんだ」と言われるのがわかっていたので、一切話しませんでした。
自分の表現活動の話はできない雰囲気なので、友だちとの会話のためにテレビを見て、三味線は自分の道としてやっていこうと決めました。

学びと実践の藝大時代

中・高は両親がフランス語を忘れないように気をつかってくれて帰国子女受入れ校に通い、大学は藝大の音楽学部邦楽科に進みました。
藝大では美術学部や作曲科の友だちが多かったです。
在学中は1曲覚えたらレッスンしていただき、また新たに曲を覚えレッスンへ。
試験と発表会を繰り返します。
三味線1本で喜怒哀楽を伝えるのは難しいことですが、そこに照明や映像などの舞台美術、踊りやパフォーマンスがあると音の威力は倍増します。
せっかく藝大にいるなら、総合芸術的な空間で表現をしてみたいと思い、洋楽器とのセッションや、ファッションショーや絵画展、ダンサーが踊るステージで弾いたり、それは自分の三味線が社会に繋がっていると強く感じる場所でもありました。
他の学部の方と沢山の作品を作りながらも、大学院から助手まで在学したので、合計8年間しっかりと古典の勉強もさせて頂きました。

狂言師・総合芸術家「五世野村万之丞先生」との出会い

藝大を卒業する頃、「出雲の阿国」や「田楽」の舞台を素敵に演出していた先代の野村万之丞先生に会いに行きました。
日本人の底力の沸き立つエネルギーに焦点を当てた作品を作り出している万之丞先生の元で、日本文化の創作演出の方法を学びたかったのです。
万之丞先生の所で学ぶうちに、日本の古き良きものを活かす際に日本各地で生まれた三味線の風土や背景を徹底的に学びたいと思い、各地に足を運びました。
先生の舞台に出演させていただく一方、アルバイトをし、お金を貯めて「今回は四国の阿波踊りに行こう」「沖縄から奄美まで、すみからすみまで島唄を聞こう」などと全国各地を4年間掛けて周りました。
日本の三味線音楽の全てを理解できなくても、各地に足を運んで実際に触れることで説得力を持つと思いました。
また、仕事では京都や浅草の芸舞妓、芸者衆のお姉さんたちにもお世話になり、民謡とは全く違う、芸道への心意気も学ばせていただきました。
いずれにしても、私の三味線放浪では日本各地の風土に合った、日本人が作り出した優しい心根とたくさん出会えました。

沢山の寄り道、回り道から生まれた結晶

万之丞先生が大河ドラマで芸能考証を担当されていたご縁もあり大河ドラマやテレビでのお仕事も頂き、日本の文化に携わる一流の方々やクリエイターの方々のもとで様々な勉強の場を与えていただきました。
万之丞先生亡き後は、先生の作品のひとつともいえる「大田楽(だいでんがく)」に携わらせていただいています。
山代温泉、伊東、六本木の皆様はじめ全国各地に現在でも先生の「作品力」がたくさんの笑顔と共に継承されています。
2018年5月3日、4日には、自由学園明日館で、NPO法人ACT.JT(理事長 野村萬先生)主催による、ファミリーや外国の方に向けた日本音楽のコンサートに出演させていただきます。
昨年、NHKの「おかあさんといっしょ」ファミリーコンサートで、NHKホールで三味線を弾かせていただいた時、子どもたちや親御さんたちの反応がもとても良かったのです。「おもちゃのチャチャチャ」など子どもの歌を洋楽器と一緒に弾き、歌のお姉さん達、着ぐるみのキャラクター達が歌ってくれて、みんなおおはしゃぎ!
番組プロデューサーさんからも「今回初めて三味線を入れて良かった」と言って頂きました。
これまで壮大な寄り道、回り道をしてきた積み重ねが、今やっとキラキラした結晶になり始めたと感じています。

日本初の和文化カルチャーセンター

今年は日本の伝統芸能を気軽に学べるカルチャーセンターを立ち上げます。
スポーツジムのように気軽に三味線、お琴、お茶、日本舞踊、華道などを学べる空間です。
例えば発表会の形として、着付け教室の成果として着物を着て、一部は華道で舞台を飾り、二部はその舞台で三味線や踊りの発表や点てたお茶をいただいたり、〆には一流の方の芸を一曲だけ鑑賞するなど、気軽にかつしっかりと学べる総合的な発信も手掛けて行きたいですね。
今までの伝統的な継承の在り方も尊重しつつ、先人を敬い、そして間口は広く、自然に楽しめる場所であることが重要だと思っています。
今まで既に埼玉県入間市にご協力いただき、子どもを対象に和文化イベントを実施しています。
今年は東京で大人バージョンを。
形にしたら各地方に、そして海外にも和文化発信プロジェクトとして持っていきたいです。
私は世襲家庭に生まれること無く、海外生活も長く三味線が大好きながら常に俯瞰せざるを得ない環境で生きてきました。
外から見る冷静な力を武器に、和文化に興味のない人たちに興味を持って頂く仕掛けを沢山して、和文化活性の一翼を担って行きます。

取材を終えて

山尾さんに初めてお会いしたのは永澤仁さんの写真展の企画イベント。
色々な種類の三味線を、その土地の歴史的背景を説明しながら弾いてくれ、スゴくわかりやすく勉強になる時間だった。
日本の伝統文化は知っていて当たり前という気持ちが強いのか、全くの素人が触れようとしても理解できない所が多々ある。
その敷居の高さを彼女は見事に外してくれた。
もし彼女が男性だったら間違いなくどこかに内弟子に入っていたという。
海外での経験、女性であるがゆえの立場、とどまることのない好奇心と行動力が今の山尾さんを創り上げているのだろう。
ここ最近は若者たちも日本文化に魅力を感じ始めている。
きっと10年後はもっと違った日本文化が繰り広げられているのだろう。
自分の国や文化に誇りを持てる事は本当に大切なこと。

プロフィール

山尾 麻耶(やまお・まや)
6才より長唄三味線を始める幼少期をフランスで過ごし、市川猿之助歌舞伎フランス公演に出演。以降日本の伝統文化に興味を持つ
東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業
東京藝術大学大学院音楽研究科修了
駿河台大学客員准教授
東野高等学校伝統芸能部コーチ
一般社団法人長唄協会、長唄東音会 所属

主な活動
大河ドラマ「平清盛」「軍師官兵衛」「花燃ゆ」、NHKドラマ「眩」「悦ちゃん」「花子とアン」「ザ・ラスト・ショット」、NHK「いっとろっけん」「首都圏ネットワーク」等に出演、楽器指導など担当
NHK「おかあさんといっしょ」ファミリーコンサート2017 出演
映画「昼顔」出演
マルちゃん正麺CM、梅沢富美男主演舞台等のレコーディング参加
野村万之丞プロデュース作品、“坂田明と役立たずのあり方”出演
蜷川幸雄演出「元禄港歌」三味線指導助助手、南原清隆&野村万蔵出演・演出「現代狂言Ⅴ・Ⅵ」沖縄の三線指導
ドイツ、フランス、アメリカ、ロシア、オーストラリア等での招聘演奏
いるま和文化祭実行委員として、いるま大田楽を毎年担当
エフエム茶笛(埼玉県西部・東京都多摩西部地区)「三味線放浪記」パーソナリティー
泳遊系和空間 麻茶屋主宰
http://asachaya.com

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