キリンで数々のヒット商品を生み出したスゴい人!

努力を見せないアイデアマン

新商品開発への3つの軸

クラフトビールの可能性

本日登場するスゴい人は、キリンビールで多数のヒット商品を生み出してきたスゴい人!
缶チューハイの「氷結」や発泡酒「淡麗」やノンアルコールビール「キリンフリー」など、それまでになかった全く新しいものを作り、新たな市場を開拓してきた。
そんなスゴい人が現在取り組んでいるのが、クラフトビール。
キリングループの中で「新次元のクラフトビール」と「ワクワクする新たなビールの未来」を追究するSPRING VALLEY BREWERYの社長として、同社を率いている。

さあ…
スプリングバレーブルワリー株式会社
代表取締役社長 和田 徹様の登場です!

努力を見せないアイデアマン

小さい頃から、模型づくりやアイデア工作など、始めたら終わるまで諦めず、泣きそうになりながらもやりきる子どもでした。
完璧に仕上げて、友達や家族をびっくりさせたかったのです。
アイデアマンと言われるのが好きでした。
学生時代は数学の美しさにのめり込み、ただ解くのではなく、美しくスマートな解き方を探求していました。
高校時代は医学部志望でしたが、大学受験の時、なぜか医学部を受けなかったんです。
1月の共通一次のころに、本当に医者になりたいのかと考えた結果、文系に進学しました。
大学時代はラジオ局とホテルのバイトをしていて、ラジオ局では深夜番組のネタ集めや企画のようなことをして。
ホテルのバイトで、世界中の大抵のお酒と料理は覚えました。
フランス料理やイタリア料理の知識、お酒の知識、飲食に関する知識は一通りそこで詰め込みましたね。

オリジナリティにこだわるキリンのDNA

大学卒業後キリン・シーグラムに入社し、洋酒を扱っていました。
やはり新しいものを発明したりアイデアを考えるのが好きで、洋酒の新商品開発に携わり、97年からキリンビールで新商品の開発を始めました。
新商品開発と言うよりは、新市場開発・新規事業創造のような感覚でやっていました。
未来の市場の中心になる商品を作ろうと、新しい市場での「原型」を作るつもりでやってきました。
キリンにはオリジナリティにこだわり、独創的なものを作ろうというDNAが流れているので、新しいものを作ることを支援してくれていました。

最終候補が2つあった「氷結」

氷結は最後まで2つのデザイン候補があって、若者から上の方までより幅広い層を対象とする手堅い候補と、結果、採用された当時には斬新すぎる全く新しいもの。
どちらも市場調査の評価が高く、甲乙つけ難くて、2つとも経営会議にかけてみると、当時のキリンの社長は「新しい方、振り切った方にしよう」と最終判断してくれました。
革新的なものは、ホームランになる可能性も高いけれど、大空振りする可能性もあります。
話としては面白いかも知れませんが、サラリーマン本人としてはちょっとビビります。
もし失敗したら会社が大損しますが、うまく行けば大きく市場を変革できる。
商品を出すときにバットを長く持って大振りできるか、バントで塁に出るか。
そこを選ぶのは、今振り返ると醍醐味ですが、当時は本当に怖かったです。

新商品開発への3つの軸

自分の中に、新商品を考えたり、発売したりするときの3つの軸があります。
1番大事な指針は、人々を本当に幸せにするかどうか。
それが登場することによって笑顔になったり、泣いて喜んだり、それが無いと生きていけないくらい幸せになってもらえるか。
2つ目は真のオリジナリティ。
何かに似ていると言われた時点でアウトです。
独創性、オリジナリティ、ユニークさが極めて重要です。
3つ目は100点満点。
98点と100点は全然違って、120点をつけてもいいくらいのものが100点を取るんです。
正直に考えて、妥協が無いか、納期までにできる事の中で考えていないかと問います。
氷結は2001年3、4月の発売予定でしたが、どうしてもダイヤカット缶が良くて。
そのためには設備投資もかかるし、発売を4か月遅らせることになります。
味も良い、グラフィックデザインも名前も良い、合格点だという見方もありました。
私はリーダーだったので、メンバーに問いかけてみると「妥協が混じった商品をお客さんは喜んでくれますか」との答えがあり、100点満点にするためにダイヤカット缶にこだわりました。
この3つが満たされていない限り、会社がどう言おうが「自分の中での商品発売決裁」がおりません(笑)。

クラフトビールの可能性

スプリングバレーブルワリープロジェクトを始めたのは2011年。
当時はクラフトビールを知っている人など社内にはあまりいませんでした。
クラフトをやるべきだと話した時に、社長の磯崎が最初にOKしてくれたため幸運にも話が進みました。
それまで色々な人と話しても「地ビールをやるつもり?」「ビール全体の1%にも満たない小さな市場に力を注いでいる余力はない」と言われていました。
でも将来的には5%を超える影響力のある市場に成長するという確信がありましたし、それによってビールビジネスが変わるのだと私は考えていました。
昨今の少子高齢化、健康志向の流れの中で、かつてのdrink moreという考えが通用しない中、どうやって未来のビール産業を成立させ、お客様にもっと幸せになっていただくか。
drink less だけどdrink betterの時代。
だからクラフトの市場はニッチマーケットではなくて、メインストリームになりうるくらいの可能性を持っていると考えました。
規模の経済として考えられていたビールビジネスのスキームを変えるような変化です。
クラフトは多彩な味わいを楽しめて、とりあえずではなく、とっておきのビール、自分好みのビールになります。
ビールの持つ魅力をお客さんにしっかり届ければ、ビール離れなんて絶対に起きません。
クラフトビールのすごいところは、そこにこそビールの本質があること。
クラフトの美味しさに目覚めた人は、ビール自体に興味を持ってくださります。つまりクラフトを活性化させることは、ビール市場全体を活性化するという信念のもと、今はやっています。

新しいビール体験を

商品を作り、全国の量販店・小売店に配荷し、TVCMなどマスメディアで広告するという、旧型のマスマーケティングモデルの時代は次第に終わりつつあります。
最近の若い世代の多くは新聞や雑誌も読まないし、コマーシャルすら見ない。
お客様が体験してSurpriseしてもらわないと、新しい美味しさや、新しいワクワクは伝わりません。
そこで、「体験施設としての店舗」を作りました。
嬉しいのは「ビールがこんなに面白くておいしいお酒だって知りませんでした」と言って頂けること。
我々にとってはドンピシャの答えです。
フードとのペアリングによる至福のサプライズ体験をできるのも、店舗の魅力です。
ワインとフレンチだと数万円することが、ビールでは2000~3000円から楽しめます。
また、世の中にビールほど味覚のバリエーションの広いお酒はありません。
使える素材が無限な上に、製法や作り手の感性によっても味が変わり、その組み合わせは天文学的な数字になります。
その世界を楽しんでいただいて、ビールを飲んでよかった、人生変わったと思って頂けたら嬉しいです。
素材や料理によってビールを選ぶ楽しみが出てきて、ビール市場が様変わりします。
この仕事は本当に奥が深く、楽しいです。
クラフトビールのビジネスは、今まで私がやってきた洋酒の知識、食べ物の知見、ビールの経験のいわば和田徹の集大成だと感じます。
無限の美味しさの広がるクラフトビールの世界、フードとのペアリング、とりあえずではない、とっておきのビールを楽しんでください。

取材を終えて

SPRING VALLEY BREWERY TOKYOの店舗で取材をさせていただきました。
今ではあって当たり前の存在となった「氷結」や「淡麗」や「フリー」を開発された和田さん。
新商品誕生までのお話も大変興味深く、特にご自身の中に設けているという3つの軸のお話は勉強になりました。
クラフトビールとフードのペアリングのお話をしている時にはもう、ビールを飲みたい!早くペアリングを試したい!という気持ちになってしまいました。
店舗では様々なフェスが開催されていますし、年間40種類もの限定醸造ビールをはじめ常に多種多様なクラフトビールがあり、ビール大好きな人も、ビールが苦手な方も、何度行っても楽しめます!
気になった方はぜひお店へ♪

プロフィール

和田 徹(わだ・とおる)
スプリングバレーブルワリー株式会社 代表取締役社長 

1985年(昭和60年) 3月 慶應義塾大学 経済学部卒業
1985年(昭和60年) 4月 キリン・シーグラム株式会社 入社
1989年(昭和64年) 7月 キリン・シーグラム株式会社 マーケティング部 新商品開発グループ 国内外ウイスキー、スピリッツの商品開発
1997年(平成9年) 10月 キリンビール株式会社 マーケティング部 商品開発研究所 「麒麟淡麗<生>」開発
2000年(12年)   6月 キリンビール株式会社 マーケティング部 新商品開発リーダー 「キリン氷結」、「杏露酒」、「キリンフリー」、「キリン・ザ・ゴールド」他 開発プロジェクトリーダー
2009年(平成21年) 6月 キリンディアジオ株式会社 ギネスビールブランドディレクター
2011年(平成23年)10月 キリンビール株式会社 マーケティング部 商品開発研究所リーダー 「ハードシードル」、「スプリングバレーブルワリー」プロジェクトをスタート プロジェクトリーダー
2015年(平成27年) 1月 スプリングバレーブルワリー株式会社代表取締役社長

◆スプリングバレーブルワリー http://www.springvalleybrewery.jp/

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