対話支援機器「comuoon」を発明したスゴい人!

子どもの頃からアイデアマン

理解と協力を得られなかった日々

さらに聴こえやすい環境を

本日登場するスゴい人は、話す側から聴こえの支援をする対話支援機器「comuoon」を発明したスゴい人!
補聴器は聴こえに悩む人側の改善であるのに対し、comuoonは話す側から聴こえの改善に歩み寄るという逆転の発想から生まれた。
マイクから入力された音を明確に分解し、聴き取りやすいクリアな音へと変換し、スピーカーから耳へ届ける。
彼の経歴は異色である。
設計、IT、レコード会社を経て、comuoonの開発へ。
彼がcomuoonで実現しようとしている社会とは。

さあ…
ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社
代表取締役 中石 真一路様の登場です!

子どもの頃からアイデアマン

小学生の頃からアイデアマンでした。
虫取り網の先にハサミをつけて、枇杷をとるための道具を作ったり。
釣り場でたくさん釣っている人が帰った後に、落ちている練り餌の匂いを嗅いで、何が入っているか分析し、自分で配合したものを次の休みにもっていくと、よく釣れました。
その頃から研究者気質でしたね。
細かい絵を描くのが好きで、「手先が器用だから設計士になれば」とお袋から言われ、高校は建築科に進み卒業後も建築に進みました。
東京で現場監督をしていたのですが、現場でけがをしてしまって。
辞めて建築の専門学校を出て、サッシ会社の企画営業を始めました。

出会いに導かれ、建築からITへ

ある時、ふらりと立ち寄った不動産屋にたまたま社長がいて、話していると「仕事は何をしているの」と聞かれ、「ケガして現場監督を辞めて、今はサッシの営業をしています」と言ったら「うちの会社で2年後に建築を事業化したい。あんたやらないか」と言われて。
断っていたのですが、2年越しでオファーされて行きました。
すごい出会いですよね。
そこで出会ったお客様から「中石君、これからはネットだよ」と言われて興味を持ち、会社を辞めてデジタルハリウッド大学に通いました。
IT業界に入って手掛けたのが、QRコードを使ったクーポンです。
当時ネットのクーポンが流行っていたのですが、なぜデジタルに上げた情報をアナログにプリントアウトするのか、ダサいなと思って、デジタルのクーポンを考えました。
QRコードを液晶に表示しても白黒だから読まなくて、ダメだと思ったら、ちょうどカラー液晶が出て。
それを開発して、矢井田瞳さんのコンサートなどで使われ始めました。

自分の企画で人を泣かせたい!

その後もいくつかの会社を経験する中でEMIミュージック・ジャパンの方から誘いを受け、一つだけやっていないことがあると気づきました。
自分の企画で便利だ、楽しいと言われるコンテンツはたくさん作ってきました。
でも、自分の企画で人を泣かせたことが無いと思い、音楽なら自分の技術と音楽をうまく組み合わせて人を泣かせられるかもしれないと思い、EMIへの転職を決意しました。
50周年の節目で新規事業をすることになり、音を遠くに飛ばすスピーカーの研究をしている先生のセミナーに社長のカバン持ちで行き、本当に音が遠くに飛ぶのですごいと思って、すぐに話を聞きに行きました。
その時に「難聴の人にも聞こえやすい」と言われたものの、理由はわからないと。
それを僕が研究したいと思い、会社に許可を得て予算をもらいました。
1年くらい研究して、聴こえやすい音のイメージに合うスピーカーのサンプルを見つけたものの、会社の状況が変わり一度は諦めることに。
それから1年後に東日本大震災が発生。
「音楽は無力だ」「音楽なんて聴いている場合じゃない」と言われていましたが、絶対に違う、音楽にも言葉にも人を元気にする力が必ずあると思っていました。
その時に、やはり聴こえるスピーカーはやらないといけないと思い、会社に直談判。
会社がやらないなら、僕はNPOを作って自分で研究したいと言い、それからは自費で、寄付を集めたりしながら進めました。
EMIでは音楽とは何かも教わり、すごく楽しかったし、勉強になりました。

理解と協力を得られなかった日々

一番苦労したのは、聴こえる人が作っていると、「良からぬものを作って売りつけるんだろう」などと思われて、なかなか協力してもらえなかったことです。
父が難聴で、父に協力を得ながら研究開発していると話すと理解してもらえたのですが、一年くらいやってようやく本気度が伝わり、難聴の方々に協力してもらえるようになりました。
困っている人のためにやっているのに、なかなかすぐは協力してもらえないものなんだと感じましたね。
comuoonの試作ができた時は「やっとできた」と、感無量でした。
研究途中で1社目の開発会社からこれ以上は小さくできないと言われて諦めかけています。
参ったなと思っていたら、佐賀の開発会社さんを紹介されて2社目の会社さんが作ってくれるようになって。
本当に巡りあわせですよね。
ダメだと思うと出会いがあって、つながっていく。
作れと言われているんだと思いました。
だから製品として世に出させてくれたんでしょう。

ようやく完成!しかし簡単には受け入れられず…

comuoonができてからも、スピーカーを使って支援することが当たり前ではないので、近距離でスピーカーを使って話すという、受入のハードルがありました。
ただ、使ってよく聴こえた人からは「良いね」と言ってもらえました。
途中で気づいたのは、聴こえにくい人の為だけではなかったということです。
人は話し伝えたい気持ちも強いので、難聴の人たちのご家族が、伝わらなくていらいらしているのを発見したんです。
「聴こえにくい」と「伝わらない」問題を両方クリアにすればいいと確信しました。
ただ、なかなか浸透していきません。
真剣に作っているから、わかってくれる人たちも中にはいましたが、「やっていることはいいけれどお金になるの?」と言う人もすごく多かったですね。
今は言い続けてきたからこそだいぶ浸透してきましたが、やっていることの重要性を理解してくれる人が少なく、苦しみました。
逆に、聴こえにくい方々の苦労を知ることができました。
聴こえる人たちは聴こえにくいことに対する理解が全くないので、何のためにやっているのかがわからないんです。
「大きな声で話せばいいじゃない!」って感じです。
僕はマイナスな事を言う人を見つつも、必要性をわかってくれる人たちを見つけようと頭を切り替えて。
そう切り替え自分から発信し続ければ、理解していただける方が少しずつですが集まってきます。
苦労されている人たちが大勢いるけれど、その人たちも言っても理解されないため結局言わなくなるから、それを伝えることを始めました。
モノを売るというよりは、「何を解決するためにモノを作ったのか」の説明をしないといけないんです。
講演活動を始めて、聴こえの大切さ、音声コミュニケーションの大切さを伝え始めたことで、徐々に広がっていきました。
今も、聴こえのセミナーを医療機関や自治体、学校、企業からお呼びいただき全国で開催しています。
セミナー後に子どもたちやたくさんの方からいただく感謝の手紙が、僕のモチベーションですね。

夢中であれ

やり遂げるためには、真剣に思うことが大切です。
その為には、好きなだけではなく、夢中になれる事でないといけません。
夢中なことはずっと夢の中のような感覚なので、お腹も減らないし、どんなことも苦労も苦労ではないんです。
好きだけだと、つらいと辞めてしまいがちですが、夢中になっているものはなかなか辞めることもできないと思います。

さらに聴こえやすい環境を

今、「comuoon イングリッシュスクルール」という学習塾をやっています。
聴こえにくいお子さんたち向けの英語塾です。
聴こえにくい子どもたちも塾に行きたいのですが、聴こえにくい子どもたちを受け入れてくれる塾が無いので、comuoonを活用した英語塾を昨年から始めました。
また、障害者差別解消法の施行や2020年にはパラリンピックもありますし、高齢者の方が住みやすい町づくりに自治体も意識を高めていると思います。
その中でやっと音声の聴こえやすさに意識が行き始めていると感じています。
電車やバスの中のアナウンスや、防災無線など聴こえにくい環境が色々なところに出てきているため、様々な場面で聴こえやすい環境を作りたいと思っています。

取材を終えて

数々の賞を受賞された「comuoon」の生みの親である中石社長。
建築、IT、音楽、そしてcomuoonの開発と、全く異なる分野でそれぞれに成果を出していらしたお話はとても刺激的でした。
聴こえやすいのは「大きい音」ではなく「クリアな音」だと以前から仰っていましたが、その研究成果が、2017年4月に米国で開催された米国脳科学関連学会「14th Annual World Congress of Brain Mapping and Therapeutics」および、5月に日本で開催された「第118回日本耳鼻咽喉科学会通常総会・学術講演会」において広島大学宇宙再生医療センター 聴覚リハビリテーション研究グループで発表され、その論文は米国神経学関連誌『Neuroreport』に2017年8月に掲載されて高い評価を得ているそう。
子どもたちからの感謝の手紙や、学校講演での感想文を見せていただきましたが、聴こえることへの喜びが伝わってきました。
ありがとうございました。

プロフィール

中石 真一路(なかいし・しんいちろう)
ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社 代表取締役
慶応義塾大学SFC研究所 所員
広島大学 宇宙再生医療センター 研究員
日本聴覚医学会 準会員
日本教育オーディオロジー研究会 会員
日本ヘルスコミュニケーション学会 会員
第2750地区 東京世田谷ロータリークラブ 親睦活動委員
熊本YMCA専門学校建築科卒業後、技術営業施工管理に従事。その後デジタルハリウッドに入学。卒業後は12年間に亘りwebディレクターおよび、プロジェクトマネージャーとして大手webサイトなどの市場調査、サービス開発、有料サイト立ち上げに従事。携わったwebサイトは、200を超える。携帯電話のカメラにQRコード読み取り機能を導入し、雑誌からのWEBアクセスの普及に貢献した実績をもつ。
前職のEMIミュージック・ジャパンおよび、NPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会にて約3年に亘る研究の末、「スピーカーシステムによる聴覚障害者の情報アクセシビリティ」という新しい分野を確立する。2012年4月実の父と共にユニバーサル・サウンドデザイン株式会社を設立。

◆ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社 http://u-s-d.co.jp/

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