『ONE PIECE』『サクラ大戦』などのヒットソングを手がけたアニソン&ゲーム音楽界のスゴい人!DAY2

今週ご紹介するのは、『ONE PIECE』の歴代オープニング曲や『サクラ大戦』シリーズの全楽曲をはじめ『ジョジョの奇妙な冒険』、『かいけつゾロリ』、『天外魔境』、『笑ゥせぇるすまん』、『エスパー魔美』など、アニメ・ゲーム音楽史に残る名曲の数々を手がけてきた巨匠、田中公平様。今年で活動40周年の田中氏に作曲家になった経緯から、長きに渡り売れ続ける秘訣、今後の構想まで、知られざるスゴいエピソードを 4 日間お伝えします。

令和リニューアル記念4日連続インタビュー

DAY2

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【田中公平が明かす独自の作曲法とスゴい音楽家たち】

編:卒業後は一度サラリーマンを経験されたんですよね。 

田:いきなり作曲家になれるわけもなく、ビクターに就職しました。宣伝部に配属されて、レコード業界のことはよくわかったと思います。当時、どんなに忙しくてもピアノは毎日、欠かさず弾いていましたけどね。作曲家になりたいという情熱だけは持ち続けていました。

 

編:3年で退社され、バークリー音楽大学に留学された話は以前の取材でも伺いました。

田:父親が体を壊して亡くなる前に「サラリーマンにするために医者にするのをあきらめた訳ちゃうぞ」と言われて、ハッと思いましてね。作曲家としてデビューしたのが帰国後の26歳の時。あれからもう40年になりますね。

 

編:40年もの長い間、第一線で活躍し続けることができた理由は何だとお考えですか? 

田:私は運命論者では無いけれど、艱難辛苦はたくさん乗り越えたものの、なんか一直線で来た気がしますね。燃えるようにやりたいって感じでもなく、自分探しって事でもなく、自然とここに来た、という感じ。だからやりたい事がわからない、って人の気持ちはわからない。

 

編:自然にここまで来られたと言うと、まさに作曲家になるために生まれてきたようなものですね。 

田:そう。このために生まれているからしょうがないんだよ(笑)。魂の赴く方向に、自然に任せて。道が二股に分かれているとするじゃないですか。「こっちへ行け、こっちへ行け」って自然とそういう流れになるんですよ。実はバークリーに留学する時も迷ってたんです。これから2年も3年も留学するのは時間の無駄じゃないかな、とか。でも、一度顔を合わせただけのジャズメンや、先生が「行ったほうが良いよ、もう明日から行け!」と言ってくれる。結果として、アメリカで素晴らしいジャズの先生にも会えましたしね。私は運命に対してものすごく素直なんです。

 

編:なるほど。田中さんはスピリチュアルなことは普通に受け止めていらっしゃるんですか?

田:割と普通ですね。ただ、それに縛られてはいないです。感じる時に感じるなと思うだけです。霊が見えるわけでもないですし(笑)。ただ、私の場合は音に色がついているのがわかります。共感覚4の持ち主なので。

4音に色が見えたり、文字に色を感じたり、味や匂いに、色や形を感じたりする知覚現象

 

編:共感覚ですか。

田:ええ。共感覚を鍛えるには、五感の中で違うことを考える努力をするんですよ。私が寝る前によくやるのは、真っ白な本を想像して、1ページ目をめくる。「ここに船の挿絵があって、あっ、こんな話になってるんだ。次のページをめくるとこうなってるんだ」という感じで、頭に浮かべながら読み進めていくんです。段々物語になってくるんですよ。

 

編:スゴいですね!

田:『ONE PIECE』で言えば、ゴーイングメリー号の風と潮の匂い、カモメの鳴き声…。そういうことを感じながら曲を書いているんです。ポーンと世界に入り込まないと、曲が書けない。その世界の中に自分を入れて、真ん中に立って曲を書く。だから『ONE PIECE』の世界も『サクラ大戦』の世界も全部違うわけです。『Gガンダム』の闘いの真ん中だと焦げ臭いだろうなとか、そういう感覚です。

 

編:物語の中に完全に入っちゃってますね。

田:そうそう。ルポライターですね。頭の中で完成形ができているから最初から見えるんです。絵として。あとは譜面に書いていくのが面倒くさいだけ(笑)。

 

編:言葉が出ないです。スゴいやり方ですね。 

田:別にスゴくはないですよ。人がやらない方法で自分のメソッドを高めていった結果こうなっただけですから。やっぱり人と同じようなことをしていると生き残れないですよ。

 

編:さすが40年も最前線に立ち続けていらっしゃる方は言葉の重みが違います。田中さんは小学生の頃からベートーヴェンをよく聴かれていたとのことですが、やはり彼は偉大な存在でしょうか?

田:ベートーヴェンは格が違いますね。曲を芸術、アートだと思って書いていますし。しかも作曲家の立場を変えてしまったところがスゴい。

 

編:立場を変えたと言いますと?

田:ハイドンでもバッハでも、貴族の家に招かれたら裏口から入って演奏していました。名のある音楽家とはいえ、それくらいの扱いだったんです。それを「何をいってるんだ、俺はお前たちより偉いんだ。正門から入れろ」と言い放ったのがベートーヴェン。貴族の女の子たちとしかデートもしなかったしね。なぜそれがまかり通ったかといえば、ベートーヴェンの音楽がそれほど圧倒的にスゴかったからですよ。

 

編:さすが歴史に名を残す音楽家です。

田:どんなにダメな人間でも、音楽が世界で受け入れられるんだったらいいのかなと思いますね。そりゃ人間性も音楽の才能も両方いいに越したことはないですが、それはなかなか難しい。ワーグナーなんか酷いですよ。他人の女を奪うわ、人に借金する時に「キミはとても幸運だ。この大ワーグナーにお金を貸せるんだから」なんて言ってたりするんですから(笑)。それからブルックナーは神様に毎日「この曲でよろしいでしょうか? こんなつまらない曲しか書けなくて申し訳ございません」と懺悔していたような人。なのに口に入れるのは肉とビールばかりで食生活はメチャクチャ。顔も脂ぎってギトギトだったらしい。言ってることとやってることが全然違う(笑)。でも、そんな人たちがたくさん歴史に名を残してるんですよね。私はきっと人が良すぎるから世界的な作曲家にはなれないんじゃないかな(笑)。

 

編:いえいえ、充分、世界でご活躍ではないですか! 

田:いや~私は理想を言うと、世界的な作曲家になるというよりも、みんなの心に残る作曲家になりたいな。曲を作るだけじゃなくて、コンサートで演奏したり、トークショーもやっちゃうような。そういうことがどんどんできるようになってきたのは素直に嬉しいですね。

 

編:田中さんの活動と言えば、2017年に日本のアニメーション100周年を記念した企画『アニメNEXT_100』の公式ソング『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』を製作総指揮されたことも記憶に新しいですが、今後も大きいイベントの予定はございますか?

田:まだ構想段階なので詳しくは言えないんですが、実は今度はアニメとゲームを集めて万博をやろうと思っていて、ちょうど関係各社に打診しようとしているところです。

 

編:それは期待せずにはいられませんね! こんな大きいプロジェクトを仕切るって誰もができるようなことではないと思います。

田:大事なのは能力じゃないんです。やりたいという情熱やね。お金儲けじゃないと相手にわかってもらうことが大切かなと思いますね。私はもうお金は充分いただいているので大丈夫ですって(笑)。お金を持っている人が成功者だというような風潮には賛同しかねますね。ですからこの『日刊スゴい人!』に関しても、そこら辺で働いている、無名だけどスゴいおばさんとか出してほしいです(笑)。

インタビュー:アレス 編成:Wahsy ライター:西秀進

 

(明日へ続く)

 

◆オフィシャルブログ:田中公平のブログ My Quest for Beauty

https://ameblo.jp/kenokun/

◆株式会社イマジン 田中公平

http://www.imagine-music.co.jp/artist/tanaka/

◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式サイト

http://avex.jp/tsubasa-project/

◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式Twitter

https://twitter.com/tsubasa_PR

◆『アニメNEXT_100』公式サイト

http://anime100.jp/index.html 

Amazon:田中公平作品

http://amzn.to/2kKph56

 

Profile

田中公平(たなか・こうへい)

作曲家・歌手

 

1954年大阪生まれ。

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業.

ビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)勤務後、米国ボストンのバークリー音楽学院に留学。帰国後、本格的に作・編曲活動を始める。

アニメ『ワンピース』、『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』の主題歌や、ゲーム『サクラ大戦』の主題歌をはじめ、アニメやゲームの音楽を多数手掛ける。

近年は作曲活動のほか歌手、演奏者として国内外でライブも行っている。

2002年 新世紀東京国際アニメフェア21にて、『ワンピース』でアニメーション・オブ・ザ・イヤー音楽賞を受賞。

2003年 『サクラ大戦』で第17回日本ゴールドディスク大賞アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。

2017  『アニメ100周年アニバーサリーソング「翼を持つ者 〜Not an angel Just a dreamer〜」』。ささきいさお、水木一郎、堀江美都子、串田アキラなど、レーベルを超え集結した豪華アニソン・声優アーティスト23組が参加する、アニソン版『We Are The World』を目標に制作された本作は、「アニメNEXT_100」の公式ソングにも決定した。

 

 

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