累計発行部数1,000万部以上!「犬マンガ」第一人者のスゴい人!▶DAY2 高橋よしひろ様

熊犬やマタギ犬という言葉を知らない人も、熊と戦う銀という犬の名はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。銀は巨大な熊と戦い犬たちの熱いドラマを描いた名作『銀牙 -流れ星 銀-』の主人公。動物漫画の金字塔といえるこの作品はシリーズ累計で現在までに1,000万部を超える国民的大ヒットを記録し、アニメやミュージカルにもなりました。そんな熱い犬たちのドラマを長年に渡って描き続けた作者が高橋よしひろ先生。シリーズも主人公の代替わりを重ねながら現在も『銀牙伝説ノア』を連載されています。2022年にはデビュー50年を迎える高橋先生に、今回はご自身の半生と作品について語っていただきました。

天は人の上に人を作らず  人の下に人を作らず

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本宮先生のもとで修行し漫画家デビューへ

──アシスタントとして念願の漫画の仕事が始められたんですね。アシスタント時代はどうでしたか。

最初に先生と話したときには緊張して、俺は笑った顔になってたみたいで、先生怒っちゃって。先生が一生懸命俺を見てるからニコニコしていただけなんだけど。「お前、何がおかしいんだよ!」って。「ああ、東京は愛想笑いだめなんだ」って思っちゃった。でも後で聞くと、先生、自分の足の長さを気にしていたみたいでね。雑誌のインタビューで全身写真が掲載されたときに、ファンから「顔はかわいいけれど足は短い」って言われて怒ってたんだよ。「俺の背があと5cm高ければ……」って(笑)。

 

──本宮ひろ志先生のアシスタントを続けられて1年くらいでデビューされたんですよね。

当時「懸賞漫画があるぞ、大賞は50万円の賞金が出る」ってアシスタントの間で話題になって、みんなでやろうってそれぞれ作品を描き始めてさ。でも最後まで描いたのが俺だけだった。それが最終候補作まで残って。ただ佳作まではいかなかった。その作品をわたなべまさこ先生が「キャラクターがかわいい」って推して掲載載せてくれた。

 

──一度は手塚賞落選した作品が編集の目に止まり掲載されたそうですが。

1年に1回はということで、応募してたんだよね。『おれのアルプス』って作品を出して。動物漫画でマムシの巣みたいなところに落ちて犬が助けにいくって話だった。今とは全然絵柄も違ってたよ。1年くらいで絵は凄い進化してた。

 

──本宮先生と出会ってからたった1年でそこまでの結果が出せたんですね。オリジナルの漫画をそれまでどのくらい描かれていたんですか。

漫画自体は小学校時代から描いていたし、トヨタの子会社で働いてたときにも描いてた。編集部に送ったりしていたけれど、もうなしのつぶて。やっぱりアシスタントとして制作現場に入るってのは全然違う。雑誌になった漫画ってザラッとした紙に印刷された状態って生原稿とはまったく違うんだよ。初めて生原稿を見たときは「こんなに原稿ってきれいなんだ」ってびっくりした。

漫画家を続ける資質は『絵を描くことが好き』という気持ち

──それから連載を始められたんですよね。漫画家をやってきて苦労してきたことはありますか。

集英社との専属契約が終わった時かな。週刊の『銀牙』が終わって、月刊の『白い戦士ヤマト』も終わった後、仕事がなかったんだよ。今の社長の堀内さん(編集注:集英社代表取締役社長・堀内丸恵氏)がその話をしに家に来て。俺は「待ってくれ考えるから」って頼んだけど「ガキの使いじゃないんだぞ」って叱られた。今では仲良いんだけどね。あのとき言ってもらったから今の俺があるって言えるくらい。

 

──集英社を出られた後はどうされたんですか。

小学館で『白蓮のファング』って作品を描いてた。その前は『小学四年生』って雑誌でサッカー漫画を描いたんだよ。これ、単行本にはならなかったんだよ。当時の実在の選手、アルシンド選手なんかも描いたんだよね。小学4年生がJリーグ目指して頑張る漫画。これでようやく人間を描けるようになったって思った。人間描くのは苦手だったんだよね。犬ばかり描いてるし(笑)。

 

──そして『銀牙 -流れ星 銀-』へと繋がるんですね。半世紀も漫画家を続けられて、長く継続するためには何が必要だと思いますか。

やっぱりね。続けるのは絵を描くことが好きな人だね。うちの師匠は絵を描くのはそんなに好きなほうじゃないんだけど。

秋田の自然で暮らした体験が犬の冒険活劇『銀牙 -流れ星 銀-』を生む

 

──『銀牙 -流れ星 銀-』が誕生したのは、先程伺った秋田で生まれ育った経験があってのものなんですね。

そうだね。うちの近所の親戚の家にポチっていう名前の猟犬がいてね。茶色い秋田犬で耳がピンと立っていて、うちの犬のクロの友達だった。春先のまだ雪が積もっていた頃、クロがポチのところに遊びに行ったんだけど、帰ってきちゃったの。どうやらポチの彼女にクロが惚れちゃったらしくて。ポチに怒られて逃げ帰ってきたみたいなんだよね。

見たら傷だらけになってて、それから毎日ケンカ(笑)。

 

──人間みたいです。そういう犬の世界をずっと目の当たりにされる日常だったんですね。

犬の生態とかはうちの犬たちを見ていたから、感覚的にわかることも多いよね。俺もうちのクロがケンカで負けちゃうとかわいそうになっちゃって、周りに危ないからって止められながらも「ほら頑張れ」って。3年くらいケンカしてたんじゃないかな。

クロの彼女がポチになびいて、ケンカしに行ったこともあったね。太い杭に繋いでいたんだけど、それを引っこ抜いたんだよ。あれは子ども心にびっくりした。

 

──そういうのを見ていると『銀牙 -流れ星 銀-』で犬社会の物語もリアルになりますよね。『銀牙 -流れ星 銀-』は人間だとマタギも登場しますが。

マタギもいたよ。いつも銃を持って山に入ると兎と3羽4羽腰にぶら下げて戻ってきてた。その人はもう亡くなっちゃったよな。そういえば隣村の俺んちのいとこが「よくうちの兄貴が兎獲ってきたな」って言ってたよ。何も持っていかないで、堅雪の上に10センチくらい雪が積もると歩けるんだって。新しい雪の上に兎の足跡を見つけたら、追いかけていく。すると雪の地平線の先に黒い耳だけがピンと立ってるのが見つかる。それが兎。

そこに近くの棒を投げつけると鷹が襲ってくると勘違いして、雪に頭を突っ込んじゃうんで、それをサッと捕まえるんだって。これは大人になって聞いたんだけどね。

 

故郷秋田で横手漫画博物館の館長に就任!

──現在、故郷の秋田にある横手漫画博物館で館長を務められていますよね。どういった経緯で引き受けることになったんですか。

市長の奥さんが俺のファンだったんだよ。話が来たときに俺はさいとう・たかを先生がいいんじゃないかって勧めたんだけど、秋田出身じゃないとだめだって言われてさ。

それで快く引き受けることになって市長に名刺も作ってもらった。名誉館長みたいなもので何をしてるってわけじゃないんだけどね。

 

──これから将来の展望など、何か考えられていることはありますか?

もうくたばるしかねえなあ(笑)。

 

──そんなこと言わないでください。まだ『銀牙伝説ノア』が連載中ですよ。

うーん、やっぱり、原点に戻るんじゃないかな。原点回帰。もとに戻って、もっと友情努力を描かないとなあ。俺が生きる世界はそこにあるんだと思う。

仲間のために壮絶に戦ったジョンが死ぬような話をさ。

 

──貴重なお話、ありがとうございました。

(了)

インタビュー・ライター:久世薫

高橋よしひろ(たかはしよしひろ) プロフィール:

漫画家。惜しくも賞を逃した『下町弁慶』が編集部の目に止まり『週刊少年ジャンプ』に掲載されデビュー。翌年に『おれのアルプス』で第5回手塚賞佳作を受賞し、リベンジを果たす。以降、精力的に作品を描き続け、漫画家としてのキャリアを重ねていき、1983年に『銀牙 -流れ星 銀-』の連載をスタート。漫画家として不動の地位を築く。この作品は第32回小学館漫画賞を受賞し、日本のみならず海外でも高い評価を得ている。シリーズを重ね、現在では日本文芸社『週刊漫画ゴラク』にて最新シリーズ『銀牙伝説ノア』を連載中。

 

 

 

 

 

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