今週のスゴい人、は、
『FINAL FANTASY』シリーズをはじめ、多数の名曲を生み出してきたスゴい人!株式会社DOG EAR RECORDS 植松伸夫様です。
令和リニューアル記念4日連続インタビュー
DAY2
編集部:何者かに成れた人、って何かをやり続けている人が多いですよね。何かをやり続ける、集中できる、ってある種すごい才能だと思うんです。
植松氏:「誰よりも音楽を知っている人間になろう」と思って聴き始めるんですけど、昔はウォークマンもiTunesも無いんで。ランゲージ・ラボラトリーっていう英会話の教材用のカセットデッキをラジオのイヤホンジャックに突っ込んで、強引に録音したテープを作って。それを聴きまくるんですよ。チャリで学校に向かうときも、授業中も机にデッキ入れて袖からイヤホン通して、ずうっと聴いて。家に帰って飯食うときも、ラジカセ置いて音楽かけてね。それは流石に親父に止めさせられましたけど。勉強するときも、寝るときも、ずっと深夜放送聴いてましたんで、ほぼほぼ知らない音楽漬けでしたよね。それで、知らない音楽の魅力を知るコツを得た(笑)
編集部:それってスゴいことですけど、側から見たら「ちょっとおかしい」ですよね(笑)
植松氏:ただ好きだったんですよね。どうせやるんだったら勝ちたかったし、負けたくなかったし。「音楽のパターンを知っていること」について誰にも負けない自信がつけば、音楽家としてやっていけるんじゃないかと。
編集部:そのまま道を突き進まれるんですか。
植松氏:高校生になると、大人と子供の中間ぐらいの年齢じゃ無いですか。さすがにちょっと現実見た方がいいんじゃ無いのか、って考えも出てくるんです。大学受験もしなきゃならないから、多少は勉強しなきゃだし。でもそんな現実が多少見えても、音楽に対する熱意は全然変わらなかったからなぁ。僕の学校って地方の進学校だったんで、休み時間も皆んな勉強してるし、一人で音楽家になるって言ったって誰も相手にしてくれない(笑) だから表立って言っていた訳では無かったんですけど、なりたいという思いしか無かった。
編集部:こんな人になりたい、というような目標はあったんでしょうか。
植松氏:いや、無いですね、音楽家では。何でかって言うと、こんなに大好きでも楽器もできないし譜面も読めない人間は、どうやって音楽家になるのかって見えていなかったんです。そこから「これはおれ絶対音楽家になれる」って思った瞬間は大学一年の時。シンセサイザーと、TEACから4トラックのレコーダーが出て、それを手に入れて「おれは音楽家になれる」って思った(笑) これさえあれば自分の思い通りの音楽が作れると。思い通りの音楽ってのはきっと素晴らしいはずだし、人類が平和になる事に協力できるような音が作れるはずだし、そんな平和なイメージしか持っていないし…というのは確信を持ちましたね。そっから先が大変だったんですけどね(笑)
編集部:大学生時代から、スクウェアへ入るまでをお聞かせください。
植松氏:大学時代にバンドでライブハウスに出るようになったんですが、演奏以外にも色々とやらなきゃいけないじゃないですか。作曲だけに絞ろうかと思いましたね。音楽家への夢は持ち続けていたんですが、家は比較的厳しくて親には内密でした。でもラッキーなことに、大学卒業の年に、親父が仕事でベルギーへ転勤したんです。卒業しても、急に音楽で食べていける訳も無かったんですけど。5年くらいはプー太郎でしたよね。27歳までは「暗黒時代」。
編集部:どのように転機が訪れたんですか?
植松氏:ちょっとオカルト入るんですけど、周りに変な人が居まして。1人は23、4の頃かな、大学出たは良いけど、就活も就職もしてないし、音楽やるったってそんなに簡単に金になるもんでもないし、「俺の人生どーなっちゃうんだろう」って時。「植松くんはねぇ、絶対に世界的な音楽家になるよ」って言った人がいたんですよ。そんなの信じられる訳ないじゃ無いですか。その日喰うものも無いのに(笑) 本当に全然当てにしてなかったんですけど。信じても無かったし。でもそう言ってくれる人が居るってのは心強かった。
編集部:スクウェアに入る事を予言された方もいらしたんですよね。
植松氏:その頃住んでいた日吉のアパートって、食えない芸術家志望の奴が色々集まってて。そこにある日、スクウェアの女の子が来て、ゲーム音楽を作るバイトに誘われた。それでスクウェアに遊びに行くようになって、坂口(博信)さんとは面識があったんです。それからしばらくして、「来週、植松くんの人生が大きく変わるよ」と言った人が居た。
編集部:翌週、何が起きたんでしょうか。
植松氏:当時、スクウェアも日吉にあったんですけど、街をプラプラ歩いていたら坂口さんにバッタリ会った。「植松くん、今何やってるの?」「ほそぼそと音楽やってますよ」「今度、ちゃんとした会社にするんだけど、来る?」って感じで入社が決まりました。だから僕、あの会社に履歴書も出してないし、面接もしていない(笑)
編集部:まさにターニング・ポイントですね。予言が当たった!
植松氏:あの全然食えていない時に、あの人たちには何が見えてたんだろうって、ゾーッとしますね(笑) 世の中には間違いなく、僕らの知らないものが何かあるんだって。より一層オカルト的なものに興味を持ちましたよね。インドに「アガスティアの葉」の予言書を探しに行ったりとか。
編集部:インドまで? どういった予言なんですか。
植松氏:この話はしてない? 話しますか(笑) 35歳くらいの時にね、FFのベスト盤を出す話があって、エッセイ集をつける企画になったんです。その頃インドのサイババという聖者が話題になっていて、ネタとして見に行くことになって。ビブーティって粉を空中からパッと出したり、手をパッと開いたら時計が出てきたりする人。出発の2、3日前に、同行者のところに「アガスティアの葉」の場所を知ってるって人から連絡が来たんですよ。
編集部:どういったものなんですか?
植松氏:アガスティアの葉ってのは、紀元前3000年くらいに聖者アガスティアさんが「将来この土地を訪れるであろう全ての人のために、私は予言を書き記す」って、何の葉っぱだっけ、椰子だったかな。それに古代タミル語で、何百万人分だか何千万人分だか分かんないけど、予言書を書いて。その保管場所が分かるっていうんで、じゃあ教えてもらって行きましょうと。それも何かRPGみたいな話でね、住所を教えてくれりゃ良いのに、「マドラスの駅から車で何分どっちの方向に行ったら、今度はそっちの方向に何分」みたいな、そういう良い加減な教え方(笑) まぁやる事もないし行ってみたら、住宅街の真ん中で降ろされたんですよ。ここな訳無いじゃないですかと、皆んなでポカーンとしてたら、これが不思議な話で、自転車を押した少年がやってくる訳ですよ。「何やってるの?」って聞いてくるんで、実は日本から来てアガスティアの葉を探してるんだ、って話したら、「おいらそこで働いてるのさっ。ついておいで」って。
編集部:マジですか!?
植松氏:マジでマジで。それで行って、インド人たちが列を成しているんですけど。日本から来たっていうんで向こうの方が先に通してくれて。で、右手の親指の指紋を取られて、名前を書いてって渡すと、「ここにお前の全てがあるから、お前の葉っぱを探してくる」って(笑) 椰子の葉っぱの束を持ってくる訳ですね。で、読んでいくんです。「お前の父の名はジョニーだ」そんな訳ねーだろ、違うって言ったら、「じゃあこれはお前の葉っぱじゃない」と(笑)
編集部:そんな感じなんですか(笑)
植松氏:
「お前はお巡りさんだ」違う、ってそんな感じでどんどん弾いていくと「父の名前は〇〇で、母の名前は〇〇で、〇〇という女性を妻にしている」って。合ってるんです。「ええっ、どういう事ですか!?」と。合ってますと言うと、「じゃあこれがお前の葉っぱかも知れないから読んでく」と。「子供を喜ばせる音楽を作っている」、まぁ間違ってもないんで「はい」と。生年月日も言われて、合ってると。「これがお前の葉っぱだから、これからお前に起こる事を読むぞ」と。「80幾つで3人に看取られながら亡くなっていく」みたいな事も。
編集部:そんな事まで知っちゃったら怖いと言うか…
植松氏:でも僕、不思議なもんで、そんな経験したら絶対忘れそうも無いじゃないですか。言われた事全然覚えてないんですよね。でも1つだけねぇ、あの当時ってまだスーパーファミコンなんで、仕事として作った曲はインストゥルメンタルばっかりだったんですけど、「○○年に歌が大ヒットする」って言われて。歌は作らないし、まぁいいや、なんて思ってたんですけど。確かに言われた年に『FF8』の「Eyes On Me」でレコード大賞取ってるんですよね。だから、ああ、これの事なのかなぁって。そんな事もありました。
編集部:すごい話ですね。そういうのって死生観を変えるというか、逆算してしまったりしませんか?
植松氏:いや、それは無いですね。そういう不思議な事が大好きで、あっちこっちお邪魔してお話聞かせてもらったりするんですが、面白いんですけど、真に受けてないんですよ。エンターテイメントの1つくらいにしか考えていない。真に受ける人はアレに興味を持っちゃダメですよ。マズいですよ、占いとか霊能者とかね。話半分で、えっマジか〜、とか喜んでいる人じゃないと怖いですよね。ああいう世界は。
編集部:確かに、ハマってしまってそれしか見えなくなってしまいそうですもんね。
植松氏:
そうですね、不思議だなぁ、何が見えてるんだろうな、という位でね。で、僕、その葉っぱに自分の名前とかお袋の名前とか書かれているって信じられなかったんで、半年くらいしてからかな、もう一回行ったんですよ。僕のNobuoって名前と、お袋のNobukoって名前、本当に書かれているのであれば、古代タミル語とはいえ、Nobuは同じ表記だろうと。それを確認するためだけに行って、どこに名前が書いてあるか聞いて。指された部分の最初の文字は、確かに同じ文字なんですよ。向こうの人も文字を確認しに来たとは思ってないでしょうから、嘘ではないと思うんですよね。
インタビュー:アレス ライター:Wahsy
<3日目に続く>
◆プロフィール:
植松 伸夫(うえまつ のぶお) 作曲家
有限会社スマイルプリーズ代表
株式会社ドッグイヤー・レコーズ代表取締役会長
「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめ、数多くのゲーム音楽を手がける。
「ファイナルファンタジー VIII」のテーマ曲「Eyes On Me」は1999年度 第14回日本ゴールドディスク大賞でゲーム音楽としては初の快挙となる「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。海外での評判も高く、「Time」誌の"Time 100: The Next Wave - Music"や「Newsweek」誌"世界が尊敬する日本人100人"の一人に選出される。
近年では日本国内をはじめ世界各国でオーケストラコンサートや自身のバンド"EARTHBOUND PAPAS"によるライブイベントを開催。
◆植松伸夫公式ファンクラブ「中位のおっさん」
◆株式会社DOG EAR RECORDS