石ノ森章太郎最後の弟子!平成仮面ライダーのデザインも務めた漫画家のスゴい人!

漫画家への夢、手塚治虫の死

天才との10年

ヒーローは国境を越えて

数々の作品を残した萬画家、石ノ森章太郎。
この世を去った後も、数々の平成版『仮面ライダー』や、『サイボーグ009』の完結編、『人造人間キカイダー』の初アニメ化など、新しいコンテンツが生まれ続けている。
本日登場するのは、石ノ森章太郎亡き後も作品に関わり、世界観を守り続けている漫画家。

さあ…
株式会社石森プロ オリジナルスーパーバイザー
漫画家 早瀬 マサト様の登場です!

石ノ森章太郎作品との邂逅

一言で言うと、引っ込み思案で人見知りな子どもでしたね。
漫画を読んだり、絵を描くのが好きで。
アニメや特撮番組が楽しみなんですが、続きはまた来週だし、放送時に外出でもしたら観られない。
当時はビデオなんてありませんでしたから、まさに一期一会で。
それを救ってくれたのが、石ノ森章太郎の原作漫画。
何度でも繰り返し読めますし。
テレビ版と漫画版には結構違いがあって、漫画の方が大人っぽい。
『仮面ライダー』も『サイボーグ009』も、ヒーローは悪の組織に改造され、その組織に立ち向かっていく。
ある意味同胞を倒しに行く物語なので、敵を倒すことで哀しみが増していく。
ライダーって、仮面に涙の跡のようなデザインがあったり、造形がちょっと哀しげなんです。
「敵を倒した!万歳!」という勧善懲悪ではない、敵の最期を見つめるような…そこが素晴らしい。
『人造人間キカイダー』は、原作漫画の悲観的なラストシーンに胸を打たれました。
テレビは子どもに向けて、楽しませてくれた。
漫画は子どもに背伸びさせて、大人にしてくれた。
小学校高学年になって特撮は卒業したんですが、漫画は卒業しなくてもいいな、と思って(笑)
漫画を読んですっかり心を奪われてしまったんです。

漫画家への夢、手塚治虫の死

小学生の時の夢は漫画家でしたが、段々現実を知っていくじゃないですか。
叶わぬ夢と思っていたら、大学の頃、同人仲間がデビューしたんです。
それが『100万$キッド』『MMR マガジンミステリー調査班』の石垣ゆうき。
それから仲間内で「全くの夢ではないかも」というムードが昂まって、次から次へとみんなデビューしていって。
そんな時、石ノ森先生の『仮面ライダーBlack』が連載開始されて、誌面でアシスタントを募集していたんです。
元々大ファンだし、是非応募したかったのですが、二つ悩みがありました。
一つは、漫画の持ち込みをしていた担当編集さんに「忙しい先生のアシスタントになったら、自分の作品を描く時間が無くなる」と言われて。
もう一つは、大ファンなのに、もし先生が苦手なタイプの方だったら、作品ごと嫌いになってしまうのでは、という懸念でした。
丁度悩んでいた時、手塚治虫先生が亡くなった。
その時、やはり石ノ森先生にお会いしたい、と気持ちが定まりました。
テレビでご葬儀を観たら、手塚先生のお棺を石ノ森先生や藤子不二雄先生が担いでいらっしゃる。
誤解を恐れずに言うと、石ノ森先生が亡くなる時には僕が先生の棺を担ぎたいと。
人生を教えていただいた先生ですので、最期をお見送りできるような関係になりたいと思いました。

天才との10年

志願者は列を成して待っている状態、アシスタントは常に満員で、席が空かなければ何年も待たなければならない。
新しい企画を立ち上げるので、従来とは違うチームを作りたい、ということで初めて公募されたんです。
僕は運良く、それに選ばれた。
それが『マンガ日本の歴史』という、毎月単行本を一冊描きおろすという、とんでもない企画。
当初は憧れの先生の原稿にどう手をつけたらいいのかわからず、本当に苦労しました。
先生は月に300ページは描かれていました。
ペン入れが終わると、アシスタント部屋に原稿を投げる。
ドア越しに原稿がきた、とわかると、すぐピックアップしなければいけない。
玉稿を床に落とすとは何事だ!ということではなく、次々と原稿が上がってくるので、インクが乾く前に重なってしまうと使い物にならなくなる。
作品数でギネスに載っていますから、世界一速いということ。
その天才を間近でみているとどうなると思いますか?
こんな風にはなれないと、自信を無くすんです(笑)
先生を嫌いになったら…というのは杞憂でした。
10年間アシスタントでしたが、怒ったところを見たことがない。
声を荒げることもなく、大らかな方で、非常に自由にやらせていただきました。

漫画家は死なず

ご病気で入院されても描いておられた。
切なかったのは、握力が無くなってインク瓶の蓋を開けっ放しにしておられたんですね。
それを病室で倒されて、ベッドのシーツを真っ黒にしてしまったと聞いて、そこまでして描くのか、と…。
アシスタントは病室からの原稿を待ち、ずっとスタジオで仕事をしていました。
復活を信じていたので、亡くなるとは思ってもみなかった。
ご葬儀ではお棺を持たせていただきました。
亡くなられて最初に考えたのは、先生を死なせてはならないということ。
作品がある限り漫画家は生きていくわけですから。

師との対話

石ノ森章太郎原作作品を世に出していこうと、『燃えろ!!ロボコン』『平成ライダー』シリーズなどの企画に力を尽くしてきました。
先生のライフワークに『サイボーグ009神々との闘い編』という作品があるんです。
数回連載されているんですが、諸事情で中断していて、志半ばにお亡くなりになった。
これを石森プロとして何とかしなければと、私も携わるんですが、描く実力があるとは思えなかったし、正直重荷でした。
キャラデザインにせよ漫画続編にせよ、私の立ち位置は「先生ならこうするだろうな」というラインを引くこと。
まだずっと、アシスタントのつもりです。
常に頭の中に先生がいらして「ここはそうだ、そこは違う」と仰っている。
対話しながら、共同作業をして乗り越えてきました。
決して一人ではないんです。

ヒーローは国境を越えて

『幻魔大戦』は人気作だったのですが、不本意に終わっている。
これも何とかしたいと、七月鏡一さんとリメイクが始まりました。
原作の平井和正さんから、自分の作品に関しては七月さんとやってくれ、とご紹介を受けていたんです。
『仮面ライダーV3』の漫画を描きたい気持ちもあります。
1号2号に改造されたのがV3なんですが、先生が漫画を描かれていない。
物語を完結させるため、先生ならこうするであろう、というのを描いてみたい。
一方、『ウルトラセブン』50周年の記念画集に寄稿したり、先生の作品に関連しないことにも積極的に関わっていこうと思っております。
海外展開としては『ガルーダの戦士ビマ』をインドネシアで立ち上げた。
それにヒーロー番組はあちこちに輸出されていて、ハワイではキカイダーが、インドネシアでは仮面ライダーBLACKが人気です。
世界中に様々な作品を広げていければ、と思います。
ヒーローは国境を越えますよ!

取材を終えて

出版不況の続く中、現在の漫画をとりまく環境は様変わりしている。
単行本が売れない時代と言われ、休刊する雑誌が増える中、web媒体での発表も増え、デジタル作画が主流になりつつある。
「この時代に私が先生のタッチで描くことには、現在の漫画ファン以外の掘り起こしにもなるはず」と語る氏の作品を、かつての漫画少年たちにも是非一度読んでいただきたい。

プロフィール

早瀬マサト(はやせ・まさと)
漫画家

1965年生まれ。愛知県名古屋市出身。
大学卒業後、作画アシスタントとして石森プロに入社。
石ノ森の没後は、石ノ森関連作品の続編・メディア展開の監修やデザイン、コミカライズ及び小説作品の執筆などを行っている。
「平成ライダー」シリーズ『仮面ライダーアギト』(2001)から『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010)まで、キャラクターデザインを務めた。
現在「HobbyJAPAN」誌で『HERO SAGA』、「サンデーうぇぶり」(web)で『幻魔大戦 Rebirth』を連載中。
近刊は、『幻魔大戦 Rebirth』6巻(小学館)。

◆公式Twitter
https://twitter.com/hayasemasato

◆『幻魔大戦 Rebirth』(サンデーうぇぶり)
https://www.sunday-webry.com/series/748

◆amazon『幻魔大戦 Rebirth 1-6巻セット』
http://amzn.to/2gVnlFy

◆amazon 著者ページ
http://amzn.to/2yXWLTm

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