体操選手が何故格闘技へ?
結果を出せない時期を乗り越える
ミャンマー国民が認める日本人
ミャンマーの国技であり「地球上で最も過激な格闘技」とも呼ばれているラウェイ。
グローブは着用せず拳にバンテージを巻くだけ。
頭突き、ヒジ打ち、キック、更に組みつきや投げ技、故意でなければ金的攻撃も認められ、立ち技ならばなんでもあり。
ノックアウトされて気絶しても、目を覚ませば試合は再開される。
日本人選手も過去何度かミャンマーに渡り、試合をしているが、出場し続けている選手はいない。
今日は何度もラウェイの舞台で戦い続け、ミャンマー人のファンも多く、日本人にもかかわらず国の対抗戦でミャンマー国選手として活躍するスゴい人が登場する。
彼は、何故こんなにも過酷な格闘技を続けるのだろうか?
さあ…
リバーサルジム川口REDIPS
金子 大輝様の登場です!
体操一家
両親が共に体操の選手だったこともあり、兄弟揃って小さい頃から体操をしていた体操一家です。
僕は小学校3年生から始め、学校が終わり友達と遊びたい中、体操教室に通う日々。
週末も練習するか試合に出ていました。
お正月とクリスマス以外はずっと練習で体操漬けでした。
熱心に練習はしない方でしたので、親は困っていたと思います。
脚力には自信があり、床や平行棒は得意でした。
格闘技漫画「刃牙」との出会い
高校も体操で進学しました。
体操は生活の一部になっていて、大学も体操で進めると言われたのですが、どうしても格闘技に挑戦したくなってしまいました。
きっかけは高校2年生の時に読んだ「グラップラー刃牙」という格闘技漫画。
練習帰りにブックオフに立ち寄りムエタイ、空手、ボクシングなどの古い格闘技雑誌を読み漁り、格闘技オタクになっていきました。
体操を引退してすぐ、高校3年の12月から近所の格闘技ジムに通いました。
初日はブラジリアン柔術でした。
初めて絞め技を習って、楽しくて仕方がありませんでした。
柔術と総合のクラスを交互に受講していました。
始めて1ヶ月後に柔術の試合に誘われ、正直怖かったですが、逃げることはできないと思い、出場しました。
技を決めポイントは取れたのですが、相手は柔道のインターハイにも出場している選手で負けてしまいました。
悔しかったですがその選手は優勝し、その大会でポイントを取れたのは僕だけでしたので良しとしました。
次の柔術の大会では優勝できました。体操と違い、相手を通じて自分の成長を確認出来るのが面白かったです。
警察官を目指す
万全な状態で格闘技に臨みたかったので、体操時代に負傷していた肩の手術をしました。
そして、その1ヶ月後が警察官の試験。
親を安心させるため警察官を目指していたのですが、落ちてしまいました。
肩も治っておらず、格闘技だけで生活するには時間がかかるので、不安がつのりました。
だけど、肩が治ったら誰にも負けないと前向きに捉えてもいました。
しかし肩が治ってきた頃には、格闘技を続けるか就職するか、精神的に追い詰められていました。
就職して格闘技を続けるようかとも思いましたが、それでは中途半端になってしまう。
何処かで何かを変えたいと思っていました。
初めての海外戦は中国
2016年11月、中国でキックボクシングの試合があると聞き、総合の選手は何でも出来るはずだと思いチャレンジしました。
初めての海外。言葉もわからず、会場も大きくて、すごく緊張しました。
2回ダウンを奪い、KO出来る寸前まで行きましたが、目の上を切ってしまいあっけなくレフリーストップ。
肩の調子も良く手応えは感じることが出来ました。
次の試合は中国に行ったものの、大会自体が無くなってしまいました。
12月には誰も予定がつかずセコンドなし、たった一人で中国での試合に臨みました。
復帰戦で意気込んで行ったのですが、自分を見失ってしまい全く駄目でした。
強くなる方法がわからない
12月の試合では、負けたものの中国の人達は評価をしてくれました。
だけど自分の心は慢心していた部分もあり、強くなる方法が全くわからなくなり、何かを変えないと!と気持ちばかり焦っていました。
12月の試合前に2017年2月のミャンマーでのラウェイ戦は決まっていたのですが、大きく変えるのはラウェイ戦しかないと思いました。
ただ、実践練習は危険すぎて出来ない。ぶっつけ本番で臨むしかありませんでした。
相手はチャンピオンでした。
自分の得意とするボディー蹴りがヒット。試合前日に習った頭突きもヒットしましたが、チャンピオンはビクともしません。
2ラウンド目で体力を消耗し唇も切れ、気持ちより先に足が動かなくなりTKO負けでした。
負けましたが、チャンピオンに果敢に挑む姿をミャンマーの方に大きく評価してもらいました。
ミャンマーまでセコンドとして同行してくれた小林聡さんが、小林さんの団体「ZONE」でラウェイの試合を組むので出場しないかと声を掛けてくれました。
ミャンマー人2名対僕とタイ人ファイターという対戦でした。
僕は頭突きをしたら相手の頭に顎があたり、自滅ダウンしてしまいましたが、この試合がネットに流れ「自分達の文化を好きになってくれてありがとう」と、ミャンマーの人からFacebookに友達申請が1000人くらい来ました。
結果を出せない時期を乗り越える
その後、今の師匠と出逢いました。
師匠はプロボクサー時代に交通事故で道を絶たれてしまい、今はラーメン屋を経営していて、お店の昼休みや営業後深夜の12時過ぎに練習を見てもらい、技術的にも考え方も沢山学ばせてもらいました。
僕と師匠以外、誰もが厳しいと思っていた沖縄でのラウェイ戦に勝ち、これが手術後の初勝利となりました。本当に嬉しかったです。
次の試合はミャンマーの新年を祝う試合で、相手がチャンピオンでしたが勝つことが出来ました。ミャンマーのジムにも受け入れてもらえ、日本人初のプロラウェイファイターがミャンマーのプロのジムで練習していると、ミャンマー中に報道もされました。
外国選手は1、2回戦うだけですが、「金子はジムにまで所属しラウェイを愛している」と理解してくれたのでしょう。
ミャンマー国民が認める日本人
今年(2017年)3月の試合は、日本人で初めてミャンマーチームとして招待されました。
試合直前に怪我をしてしまったのですが、昔から直前に怪我をすることがあったので、今回もこの位のハンデが丁度良いと思い、平常心で臨めました。
日本では直前まで追い込み、ミャンマーに入ってからは一流選手と共に練習も出来て、良い経験になりました。
試合は5人対抗戦で引き分け、引き分け、KOと来て重圧がある中、4人目の自分はKOを奪い、5人目が引き分けという結果でした。
この3連勝を周りの人も喜んでくれています。
世界一危険な格闘技・ラウェイを通じて色々な扉が開きました。
本当に格闘技が好きで良かったと思います。
5月21日にZONEでラウェイの試合を組んでもらっています。
1年前のZONEで結果を残せなかったので、1年間の成長の証をここで見せたいと思っています。
日本ではなかなか見られない試合ですので是非、観に来て下さい。
11月にミャンマーで開催される世界的なマッチにも勝利して、年末のRIZINの舞台に立つことを目標としています。
取材を終えて・・・
ベビーフェイスな金子選手がTシャツ姿になると、体操と格闘技で鍛えた太い腕が出てきてそのギャップに驚いた。
質問ひとつひとつに真剣に答えてくださる姿からは、素直で正直な人柄がにじみ出ていた。
ラーメン屋さんの中での練習風景は、「あしたのジョー」のシーンの様にすごくシュールだが、師匠の的確なアドバイス通りに身体を使い、お互いの信頼関係の絆の強さが感じられた。
現在、ドキュメント映画の取材が入っているそうだ。
ミャンマー国に招待され勝利する姿など、良い映像が沢山撮られている。
金子選手が目標としているRIZINの舞台も楽しみだが、ドキュメント映画も個人的には楽しみである。
プロフィール
金子大輝(かねこ・だいき)
生年月日 1994年3月28日
身長 168cm
所属 リバーサルジム川口REDIPS/Thut Ti Lethwel club Gym
バックボーン 体操
~プロ戦績~
2013年7月 第12回 関東アマチュア修斗選手権 ライト級 準優勝
2014年12月 TNTアマチュアキックボクシングウェルター級(67kg)優勝
2014.03.21 TRIBELATE42 勝俣裕基 ○ 判定3-0
2014.04.27 GRACHAN13 郡司光 × 2R 1:58 TKO
2014.07.13 GRANDSLAM~Way of the cage~ 三原宏樹 ○ 1R4分29秒 KO
2014.10.4 VTJ6th 平川智也 × 3R 判定 0-3
2014.12.21 プロフェッショナル修斗公式戦 海下竜太 × 2R 判定0-2
2015.4.18 SHOOTO GIG TOKYO VOL.19 スーパー均くん × 2R 1分55秒 KO
2015.11.28 中日拳王決戦"大熊山杯" 毕鑫 △ ドロー
2016.01.23 中日拳王決戦"白沙渓黒茶杯"李雪威 × 3R 判定0-3
2016.02.14 MYANMAR-JAPAN LETHWEI CHALLENGE FIGHT"HEROSvsSAMURAIS" Tha Phay Nyo × 2R KO
2016.05.1 ZONE4~原点回帰~ 金子大輝vsNyanLinnAung ×2R TKO
2016.9.11 ZONE5~沖縄大会 アイアンホース田中 ○ 3R TKO
2016.12.29 Kayin New Year Lethwei Events ルワンチャイ ○ KO
2017.3.19 International Lethwei Fight 2 マーチン・タイ ○ 1R KO
◆アスリートエール 金子大輝 「オンライン後援会」
http://www.athleteyell.jp/kaneko_daiki/