錯覚。
人が見た物を、実際とは異なる形と誤って認識すること。
日本では、鶴岡八幡宮の参道が長く遠くにのびている錯覚が起きるように作ってある。
また、東京ディズニーランドのシンデレラ城は高いところのレンガほど小さく描かれていることによって実際より高いと錯覚させるなど、建築を中心に随所に見られるものである。
錯覚については従来は認知科学や心理学の分野で研究されてきたが、本日のスゴい人は、数理工学という側面から錯覚を研究している。
2010年、2013年にはベスト錯覚コンテスト世界大会で優勝を獲得。
その理論と、錯覚に対する考え方とは?
さあ・・・明治大学 研究・知財戦略機構
特任教授 杉原厚吉様の登場です!
「錯覚を減らすことで社会問題を解決したい」
元々は人間ではなく、ロボットの目の開発をしていました。
人間の目が物の立体感を瞬時に把握できるように、コンピュータも空間や物体認識を正確に行えるようにする開発でした。
ところがある日、「不可能立体」と呼ばれる騙し絵、つまりあり得ない立体に見える絵をコンピュータに認識させたら、正しい立体として認識したのでした。
それは、プログラムの間違いではありませんでした。
この事で、見るポイントによって錯覚が起こるという検証ができました。
それからは、私の専門の数理工学の分野特有の方程式を用いて、錯覚が起こる正確な位置・角度を導くことに努めました。
錯覚作品をつくる過程としてまず、ひとつの立体がありましたら、その立体に対して、どの位置・角度からの見え方が錯覚が起こるかを、ある程度想像します。
その後、コンピュータ上で立体を作り立体を動かしながら検証するのです。
この検証に、数理工学の考え方が非常に役に立つのです。
方程式を用いた検証は、大変正確な結果をもたらしてくれます。
もはや、騙し絵立体は数学なしでは作れないとも言えます。
私は、錯覚の起きる場所や角度を正確に計るという部分の研究が世の中の社会問題を解決すると考えております。
人々を楽しませることのできる錯覚ですが、身の回りの環境においては出来るだけ起こらない方が良いことも多くあります。
たとえば道路があって、本当は近いのに遠くに見えるという錯覚が起こってしまうと、事故の原因となってしまいます。
この錯覚が起こる位置の検証研究の結果、錯覚の起こりにくい生活環境を整えて安全性が高まっていくことを願っております。
また錯覚研究は、目の医療の分野においても将来的には大いに役立つと予想されます。
感覚ではなく、数値をもって正確に症状が分かるということの大切さは、言わずもがなです。
このように、社会問題を解決したい、世の中を安全にしたいという考えの一方で、ほとんどの錯覚研究者がそうですが、エンターテインメント要素がつまった面白い錯覚作品を作り出したいというワクワク感も持ち合わせています。
錯覚を正確にコントロールするということ、それ自体が楽しくて仕方がありません。
◆米国錯覚コンテスト受賞作品
『反重力四方向すべり台』
https://www.youtube.com/watch?v=hAXm0dIuyug
◆立体錯視作品の紹介ページ
http://home.mims.meiji.ac.jp/~sugihara/hobby/hobby.html
◆錯覚美術館のページ
http://compillusion.mims.meiji.ac.jp/museum.html
※上記サイトは、一部携帯では見られない可能性があります。