鉄道会社の社長なのに、ぬれ煎餅を販売して、映画も作ったスゴい人DAY2

今日のスゴい人は、昨日に引き続き今話題のローカル鉄道会社の社長さん!鉄道収入よりも食品売り上げの方が高いという異色の経営状況にある千葉県の銚子電気鉄道株式会社を背負うまでの足跡をユーモアたっぷりに伺いました。

編集部注:諸事情により、一部の文字を〇●の伏字で表記しております。読みづらい点がございましたらご容赦ください。

 

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ぬれ煎餅が救った鉄道会社の経営

編:銚子電鉄さんが鉄道事業以外でなさっている事業を総称して「カケる企画」と呼ばれているんですよね。

竹:はい。銚子電鉄に何かをカケてお互い面白くなったらいいなと。今までいろいろあって、幸いに知名度はありましたから、そこで地元の企業さんとかとうまく組めたら地元にも少しは恩返しできるかなぁと思いまして

編:そんな思いもあってなさっているんですね。その中でもぬれ煎餅は一番古い企画でしょうか。

竹:そうそうあれは平成10年です。はなまるマーケットの第一回で取り上げられたのが大きかったです。その時のゲストが、山田邦子さんでした。山田さんの大好物のぬれ煎餅ということで紹介くださいました。その後、別の報道番組で、本社がある仲ノ町駅で、駅長が帽子も制服も脱いで、煎餅屋のおやじとして本気でぬれ煎餅を売ってるのが好意的に取り上げられました。

 

編:それは非常に話題になりますね。

竹:鉄道収入が1億ちょっとしかないのに、ぬれ煎餅の売り上げが2億になったんです。私が来る前から銚子電鉄はそんな感じでした。

 

編:そんな折に財務体質の改善という目的もありつつ、銚子電鉄にいらしたんですよね。

竹:そう。だからね、最初にやったのは、減資です。ちょっと専門的な話になりますが、これは会計上の言葉で、無償減資というのですが、当時銚子電鉄は繰越損失が非常に多かったので、資本金と資本準備金を取り崩して会計上の繰り越し損失を消したんです。つまり形式的に赤字を消したわけです。これが最初の仕事でした。パロディばかりやっているわけではないですよ(笑)

 

編:たしかに(笑)

竹:ま、それをやると何がよくなるかというと、別に良くなりません(笑)。決算書の見栄えが少し良くなるだけのことです。不祥事もあって民間金融機関からの融資は受けられないし…じゃあ何でそんなことをしたかと言うと、え~っと何だっけ…? あっそうだ、「外形標準課税」を回避するためでした。説明すると紙面が足りなくなるので詳細は割愛させていただきます(笑)。その一方で、資金調達に奔走して、それまで付き合いのなかった政府系金融機関から、都合で7000万くらいかりられました。

 

編:それは随分と助かったのではないでしょうか。

竹:いえいえ、一瞬で消えました。あっという間に無くなりました。当時、銚子電鉄は老朽化が進んでいて、電車も古いし、線路もかなり厳しい状態でした。もっとお金を掛けて直さないといけないけれど。そのお金がない。国からは安全に関する業務改善命令が出ていたくらいです。下手したら運行停止ということです。そこまで追い詰められていたので、7000万は銚子電鉄が生き延びるためにはあっという間に無くなりました。

 

編:本当に大変だったのですね。

竹:はい。いつも言っているのですが、鉄道なのに自転車操業です(笑)

 

編:その後は引き続きで厳しい状況が続いたわけですか。

竹:社員の給料が払えないと思うくらい切羽詰まっていましたから、私のポケットマネーでECサイトを立ち上げたんですよ。自分で。というか、子どもたちの力を借りましたので、家族で、ですね。外注するお金がないものですから。公式サイトからリンクを貼って、ぬれ煎餅も売りました。いかに銚子電鉄の大変な経営状況を説明して、だからもう助けてくださいと正直に言いました。公式応援ソングも作って、そのCDも売りました。恥も外聞もないですよ。それで売り上げが一日1万円くらいにはなったんです。でもそんなの焼け石に水ですけれど、一筋の道が見えた気はしましたね。

 

編:その後、ぬれ煎餅の大きなブームが起きて、売り上げに火が付いたんですよね。 

竹:当時の経理課長が考えた「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代稼がなくちゃいけないんです」という、もはやキャッチコピーではない、悲痛なお願い文を公式サイトにアップしたところ爆発的に売り上げが増えたんです。まさに奇跡です。これで倒産を免れたんだから。ネット注文が1週間で1万件以上入りましたので。

 

編:1週間で1万件⁉ すごいじゃないですか。 

竹:15千くらい入ったのかな。それも23週間そんな感じで注文が殺到しましてね。もう発送できないから注文打ち切ってくれって会社側が言ったのですが、私がまだまだだよ、もっと行くぞ、と。サイト管理していたのが私ですから(笑)

 

編:生産も追いつかないくらいだったんですね。

竹:バックオーダーが1万件を超えてしまったので、さすがに注文を打ち切りました。その時の最後に注文を受けたお客様に商品を発送したのがなんと半年後でした。待てど暮らせど届かないぬれ煎餅って何!?って話ですよね(笑)それで当時まことしやかに囁かれていたのが「ぬれぬれ詐欺」(笑)

 

編:「オレオレ詐欺じゃなくてぬれぬれ詐欺」()

さて、様々な話題で注目を浴び続けている銚子電鉄さんですが、以前猫カフェというお話もありましたよね。

竹:ありました。ありました。あれはね、東京の専門学校さんとの話でね、卒業イベントだったんです。一回の貸切で5万円をいただくだけのお話だったのですが、大変なことになりました。

 編:何が理由だったんですか?

 

竹;動物愛護の方々の大クレームにあいました。日本全国の愛猫家さんから連絡をいただきました。専門学校の方へたくさん連絡が入ったそうです。うちにも怒りのメールやら電話やらがいくつか来ました。学生さんがなさることですし、何かあったら大変です。だからすぐに中止を決定しました。

 

編:それも話題に?? 

竹:そう。それもYahooのトップニュースになりました。こんなに何かあるたびにトップニュースになる会社も珍しいかも知れません(笑) でもそうしたら今度はなんで中止するんだ!俺の気持ちをどうしてくれるんだ!みたいな連絡が来るようになって。もっとお前らをいたぶってやりたいという気持ちがひしひしと伝わってきました。

 

気にしないおばさんとの衝撃の出会い

編:そんな中で精神的に社長もちょっと辛いなと感じられる時はありましたか? 

竹:ないんですよ、それが。

 

編:えー。それはすごいですね。何か秘訣があるんですか? 

竹:秘訣というか、ちょっと強烈に覚えている原風景みたいなものがあります。

 

編:何ですか?それ、すごく興味あります。 

竹:大した話でもないのですが(笑)。昔、学生時代に、まだ税理士でもなく、何者でもなかった頃ですけれど、町を歩いていたら前から見知らぬおばさんが歩いてきたんです。その人はずーっと、「気にしない。気にしない」ってぶつぶつ言いながら通り過ぎていくわけです。

 

編:ちょっと怖いですね 

竹:うん、ちょっと変な感じの。でもきっと彼女なりに何かすごく悩みがあって「気にしない気にしない」って真剣に自分に言い聞かせているんだろうと思ったんです。まだ若かった私にはとても強烈なイメージとして覚えています。こういう生き方って悪くないんじゃないかって思ったんです。

 

編:自分自身に暗示をかける意味で? 

竹:そうそう。そこからね、今に至るまで、割といろんなことが起きましたけれども「気にしない気にしない」って私も言いながら、自分自身を客観視するような癖がつきました。あの時の「気にしないおばさん」には感謝です。

 

編:その一瞬の出来事が今にいたるまで続いているってすごいですね。 

竹:「気にしない」っていろんなところに当てはまります。つまりは動じないでいるということですから。恬淡(てんたん)としていること。恬淡として生きていくというかね。

 

編:座右の銘といったところでしょうか。

竹:そうですね。もう少しまじめにいうと、「疾風勁草」ということですね。草っていうのは何気なく生えているものでしょう。それで疾風というのは突如起きる風です。草っていうのは風が吹かなければ普通に立っていられますよね。でもそこに疾風がどーっと、強風がですね、吹いたら立っていられないわけですよ。弱い草はね。その時に真価がわかりますよね。強い草っていうのは疾風にも負けないで立っていられるわけです。強い風が吹いて初めて、ああ、この草は強いんだとわかる。まさに疾風に勁草を知る。いろんなことがありますけれどもそういった勁草でありたいなと思っています。

 

編:深いですね。本日はありがとうございました。

インタビュー:アレス  ライター:NOZOMI

 

【編集後記】

さて、そんな銚子電鉄が今度は映画を作りました。その名も「電車を止めるな!」やはりどこかで聞いたことがあるような名前ですが(笑)上映はすでにスタートしています。この映画は呼ばれれば、どこでも上映します。どこでも映画館になります。

上映会場をまだまだ募集しております。

 

 

◆プロフィール

竹本勝紀(たけもと かつのり)

1962年(昭和37年)、千葉県木更津市生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。

2005年 銚子電気鉄道顧問税理士

2009年 竹本税務会計事務所開設

2012年 代表取締役就任

 

◆電車を止めるな!公式サイト https://dentome.net/

  ☆上映館募集中 info@dentome.net

◆銚子電気鉄道株式会社  https://www.choshi-dentetsu.jp/

まずい棒 オンラインショップ http://chodenshop.com/shopbrand/ct16/

◆ぬれ煎餅 オンラインショップ http://chodenshop.com/shopbrand/002/O/

BOOK電車を止めるな 寺井広樹著(2019年)

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