室内あそびが好きな少年が太極拳に
世界大会を機に、太極拳が人生の軸になる
自分に集中してつかみ取った金メダル
本日登場するスゴい人は、武術太極拳の世界で活躍するスゴい人!
今年(2017年)9月から10月に行われた世界武術選手権大会男子太極剣の部では1位の金メダルを獲得。
また、男子太極拳の部で第3位の銅メダルも獲得した。
彼は小学校1年生から武術太極拳を始め、2015年には世界武術選手権大会2種目で銀メダル、2016年には武術套路ワールドカップで金メダルを獲得するなど、これまでにも数々の大会で実績をのこしてきた。
彼はどのようにして世界一を手にしたのだろうか。
さあ…
武術太極拳選手
荒谷 友碩様の登場です!
室内あそびが好きな少年が太極拳に
小さい頃はあまり活発な方ではなく、幼稚園の頃はおままごとが好きでよく遊んでいた覚えがあります。
太極拳は兄が先に始めていて、小学1年生の時、兄の練習に母とついて行って見ていて、最初はそんなにやる気はなかったんですが、見ているうちに真似するようになるんですよね。
両親に「やれば?」と言われて、しばらくは「まだいい」と言っていたのですが、最終的に自分もやりたいと言って始めました。
見ていてかっこいいので、自分もかっこよくなりたいという気持ちがあったのかもしれません。
始めてみると、難しい、きついと思うこともありましたが、楽しく、一つ一つ技ができていくのが面白かったですね。
長拳から太極拳に転向し、初めての大会は9位でした。
8位から上が入賞なので入賞まであと一歩だったのが悔しい一方で、初めての挑戦で入賞が見えたことに手ごたえも感じていました。
6年生の時に初めて、全国大会で1位をとりました。
その時から、なぜかはわからないですけど、一生太極拳をやる気でいましたね。
初めての強化合宿で「ヤバイ」と感じた
中学1年生の冬に初めてジュニアの強化合宿に参加させてもらえて、周りが上手い人ばかりの中で練習し、「ヤバイ」と思った記憶があります。
できないことが多く、まだまだ上がいることを知り、初めて広い視野で自分の今のレベルを認識しました。
それからどんどん練習を真剣に、一生懸命にやるようになっていって。
中学3年生の時に日本代表の選考会に選ばれたんですが、代表に落ちてライバルが選ばれて、悔しい思いをしましたね。
選考会の前の全国大会で1位ではなかったので選ばれる可能性は低かったのですが、やっぱり悔しくて、そこからまた頑張って翌年は代表に選ばれました。
世界大会を機に、太極拳が人生の軸になる
高校1年生、初めての国際大会はジュニアの世界大会で、太極拳と太極剣に出場し、3位と4位でした。
初めての国際大会だったので、銅メダル一つ獲れただけでも上出来だとは思いましたが、やはりもっといい色のメダルが欲しいという思いもあり、悔しさと嬉しさの両方を味わいました。
海外の選手もいっぱいいて、みんな中国語を話していたり、同じチームの中国語を話せる子が他の国の子たちと交流しているのを見ていいなと思ったのもあって、中国語を勉強したいと思い始めました。
世界大会に行くまでは、薬剤師になりたいと思ったり、太極拳以外で仕事に就くことも考えましたが、大会に行ってまた世界がガラっと変わり、それからは太極拳を軸に進んできました。
まず中国語を勉強したいなと思って、大学は中国語を専攻しました。
中国人の憧れの選手と一緒に練習する時も教えてもらえるし、自分で質問もできるし、やっておいた方が良いと感じましたね。
大学では1年生から代表になり、先輩たちは太極拳を教えながら30歳くらいまで続けていたので、自分もその後を追っていくと思っていました。
だから、大学生の頃には他の道を考えたりはしなくなりましたね。
大会直前に訪れたスランプ
比較的順調にきたのですが、きつかったのは一昨年(2015年)の大会前。
7月の全国大会の直前、6月くらいにスランプに陥ってしまって。
日本チームにライバルがいるんですが、その子がどんどん成長してきて、自分が進歩していないと思って焦ってしまったんです。
一緒に練習していた周りの仲間が「大丈夫だよ」と言ってくれたり、先生にも助けられて、自信を少し取り戻しました。
自分に集中してつかみ取った金メダル
今年は勿論ライバルもどんどん上がっていたんですが、負けずに頑張って、とにかく自分のベストができればいいと思って大会に取り組みました。
その結果、大会の時にあまり余計なことを考えなくなりましたね。
周りの選手を見ると上手い人もいて焦ると思うのですが、自分のことに集中すればいいというのが芯にあるので、周りに影響されなくなりました。
今やっている種目はミスがあると順位がガクっと下がってしまうので、ミスをなくすのが第一です。
緊張するとミスしやすくなるのですが、今年は落ち着いてできました。
太極拳が競技化されて、他国の選手は太極拳らしい演技よりも少し派手な演技になるのですが、日本人選手は僕だけでなく他の選手も太極拳らしさを大切にしてやっているので、動きの全体的な雰囲気にそれが表れて他の国よりもよく評価されているのかなと思います。
金メダルをとった時は、やはり嬉しい気持ちが一番大きく、特に今回は期待もされていたので達成感と、自分の演武をできた嬉しさもありました。
先生、チームメンバー、家族、教えているチームの人たちもみんな喜んでくれました。
でも嬉しいだけではなくて、まだ自分の演武に納得できていないので、これで1位になっていいのかな、1位という肩書に見合うのかなという想いもありました。
まだまだ、もっと上に行かないといけないなと思いましたね。
続ける秘訣は「好きであること」
目標を達成するためには、続けることが何よりも大切です。
僕はがむしゃらに、ただ上手くなるようにと思って練習してきたのですが、向上心を持って続けることが大切ですね。
やっぱり、好きだから続けてこられました。
これから目標に挑戦する人には、向上心を持って日々一歩ずつ、頑張っていってほしいです。
教えている子どもたちにもよく大会後に、練習が多いように思うけれど、振り返ってみると結構あっという間だから、毎日一つ一つの練習を大切にして、向上心を持ってやっていきなさいと伝えています。
太極拳の探求に終わりはない
太極拳は奥が深くて底が見えない、どんどん課題が見つかっていくのが、難しさでもあり面白さでもあると思います。
究めても究めても、究めきれないのでゴールが無いんです。
競技としては無理かもしれないですが、太極拳という武術は一生続けられます。
今までは世界チャンピオンというのは一つの目標としてやってきましたが、それ以外に自分の演武で誰もが拍手をする、感動するような人になって行きたいと思っています。
来年アジア競技大会という4年に1度のアジアのオリンピックがあるので、そこに出ること、そしてメダルを取ることが今の目標です。
取材を終えて
特に印象的だったのは、「なぜ長い間続けてこられたと思われますか?」とお聞きした時に、「やっぱり、好きだからです」と即座に、はっきりとお答えくださったことです。
お話ししていてとても穏やかな印象だったのですが、この時のお答えの力強さから、荒谷さんの武術太極拳に対する想いの強さ、そしてその想いがあるからこそ世界の舞台で活躍されているのだと感じました。
今後さらなる活躍をされること、期待しています。
12月には日中の老師・選手が出演する武術太極拳の日本三都市ツアーもあり、荒谷さんと東京公演には日刊スゴい人にご出演いただいた市来崎大祐さんが出演されるということなので、必見です!
プロフィール
荒谷 友碩(あらや・ともひろ)
千葉県出身。
2017年3月に麗澤大学外国語学部外国語学科中国語専攻を卒業。同武術太極拳部コーチ。
小学校1年生から兄の影響で武術太極拳を始める。
在学中は武術太極拳部に所属し、2015年には世界武術選手大会2種目で銀メダル、2016年には武術套路ワールドカップで金メダルを獲得するなど活躍の幅を広げた。
◆日中国交正常化45周年記念 日本三都市ツアー 武術太極拳
東京公演 12月1日(金)19:00~20:45 練馬区文化センター・大ホール
名古屋公演 12月6日(水)18:00~19:45 青少年文化センター・アートピア
関西公演 12月9日(土)13:00~14:45/18:00~19:45 川西文化会館・大ホール
〈チケット〉
SS席(指定)7000円(税込)、S席(自由)5000円(税込)、A席(自由)4000円(税込)
※関西公演はSS/S席のみ
詳細・ご予約はこちら↓
https://taijifangwushu45.wixsite.com/wushu45
◆【日中友好公演舞台】
演劇 × 武術太極拳表演
武術太極拳メダリストによる本格的殺陣を用いたオリジナルストーリー
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