千葉真一との出会い
オンリーワンになる
ギャバン誕生!!
1982年から1985年にかけて放送された特撮テレビドラマ、『宇宙刑事』3部作をご存知だろうか?
特にシリーズ第1作目『宇宙刑事ギャバン』は長く愛されており、番組放映から30年を経て新作劇場版が制作されるほどである。
そのギャバンで、主役の「一条寺烈」を演じたのが今回のスゴい人!
どのようにして記憶に残るヒーローは作り上げられたのか。
さあ…
俳優・演出家
LUCK JET
代表取締役社長 大葉 健二様の登場です!
元気いっぱいの野生児
一つの集落に20軒くらいしか家がないような、愛媛の田舎育ちです。
仲間と秘密基地を作ったり、ツタでターザンごっこをしたり、山を駆け回って遊んでいました。
お腹が空くと農家の方に野菜を分けてもらって、湧き水で洗って生で食べるんです。
芋を食べるとでんぷんで口の周りが真っ白になるんです(笑)
釣りが好きで、沖にでれば大物が釣れるんじゃないかと、3メートルくらいのボートを自作したこともあります。
きちんとV字底で、倒れにくくして。
できるかどうか分からなかったけど、とにかく作りたかった。
諦めなかった。
若さって諦めないことですよ(笑)
千葉真一との出会い
中学の頃は、仲間たちと自転車の曲乗りに夢中で挑戦していました。
ブレーキをかけずに止まったり、ウィリーしたり。
ある日、「『キイハンター』が始まるから」ってみんな帰っちゃう時があって、そんなに面白いものかと、自分も観てみました。
タイトルバックで千葉真一がパイプにぶら下がって車をよけて、着地して敵を蹴り上げる。
そのオープニングで惚れちゃったみたい。
17歳の時、「近代映画」に「千葉真一がスタントマンを養成するので、候補者を募集している」という記事が出ていました。
JAC(ジャパンアクションクラブ)の旗揚げです。
もう即決で「あ、行こう」と。
四国を出たことも無かったんですが、大久保のスポーツ会館までオーディションを受けに行きました。
JAC第一期生合格
オーディションには30人くらい来ていて、元国体選手など、錚々たるメンツばかり。
皆さん、体操のユニフォームや、革のシューズを身につけていて、実技も見事で。
僕は普通のシューズで、上下バラバラのジャージ。
体操なんて、学校の体育でしかやっていない。
「おれは終わったな」と思いました。
特技のアピールでは、剣道、空手など、皆さんアクションに関係しそうな事をしていた。
僕はバスケットボールをもって、ドリブルシュートを決めました。
部活でやっていたので、バスケには自信があったんです。
勝てるのは脚力しか無かったので「脚力をみてくれ!」という気持ちでした。
そうしたら、千葉はもう、不機嫌で(笑)
「アクションに何の関係があるんだ」と。
「得意なものをみせてくれって言ったじゃないですか」と答えて。アクション、関係ないけど(笑)
最後に「スタントマンとして一人前になるのは何年かかると思う?」と質問があり、皆さん3年、5年と答えていました。
僕は、10年頑張って、ダメだったら故郷に帰ろうと思っていたので、「10年です」と答えました。
その瞬間、千葉が顔を上げて「生意気なことを言いやがって」って笑ったんです。
「10年は我慢するんだな、こいつ」と思ってくれたらしい。
それがきいたのかな、一期生7人のメンバーに選ばれました。
オンリーワンになる
練習が終わって、風呂に入るって時に、みんな筋肉がすごいわけです。
丸太みたいな腕、腹筋も割れている。
僕は子どもみたいな体だったから、自信が持てなくて。
先輩方は「バク転は1回できても仕方ない。2回できて初めて撮影で1回できる。その2回ができないということは、1回もできないということ」なんて考え方なんです。
厳しい練習にも圧倒されっぱなしでした。
布団の中でもう田舎に帰ろうと考えることが、1年くらいはありました。
ところが、マット運動が得意でも、高いところから飛ぶというのは別の課題なんです。
屋上の手すりの前に跳び箱をおいて、8メートルの高さからバーンと落ちる練習があったんですが、先輩方も怖がっている。
本能的に手すりを掴んで、変な落ち方をしてしまったりね。
僕は山で飛び回って、田んぼに向かって5メートルくらいは飛んでいましたから、「おれはどこからでも飛べる」ことを自信にしていこうと。
そんなところを千葉は見ていてくれたんでしょうね。
「誰もできないことを1つ持ってりゃ良いんだ」と言ってくれました。
ヒーローデビュー!
次第に時代劇やヒーロー物でスタントとして呼ばれるようになりました。
ちょっと小柄だから、女性のスタントも多かった。
女優さんから手を握られて「よろしくお願いします!気をつけてね」なんて言われたりして。
まかせとけ!良いシーンにしてやるぜ!なんて心意気になりますよね。
『柳生一族の陰謀』では千葉のスタント担当だったのですが、途中で「ツヅレ」という役をいただきました。
セミレギュラーで頑張っていたんですが、ある日、千葉から呼び出しを受けまして。
「何かやっちゃったかなぁ」なんて思って行くと、『バトルフィーバーJ』主役の五人の一人に選ばれたとのことでした。
千葉を育てた、東映の吉川プロデューサーが指名してくれたんです。
「『柳生〜』もあるし、即答できません」と答えたら、「吉川さんが選んでくれたんだ。とにかく行け」と。
千葉から「葉」の字をいただき、大葉健二としてデビューしました。
ギャバン誕生!!
続く『電子戦隊デンジマン』でも戦隊メンバーを演じさせていただきました。
評価いただけたのか、東映が社運をかけて挑む新たなヒーロー物の主役として、ご指名を受けます。
それが『宇宙刑事ギャバン』。
『仮面ライダー』シリーズが終了したばかりで、新たなヒーローを生み出そう、という野心作でした。
視聴率が2桁以上取れなければ、スタッフはクビだと言われていたそうです。
「じゃあ、僕は命を懸けます!」ということで、激しいアクションもどんどん取り入れて。
お陰様で視聴率も良く、誰も辞めずに済みました。
最近、往年のヒーローが現役のヒーローとコラボしたり、新作が撮られている中で、ギャバンの新作もでき、2代目ギャバンへの継承も上手くいったと思います。
変身前の「一条寺烈」のフィギュアも作られました。
今までやってきたことへのご褒美なのかな、なんて思います。嬉しいよね。
次代へ繋ぐ
JACで仲間たちと育ち、千葉の思いを心に秘めてやってきました。
自分のイベント会社も何となく安定してきましたし、還暦も過ぎて、役者を続けていくことはあまり考えていません。
気になるのは、50歳近くでヒーローをやっている後輩たち。
いつまで現役でできるのか、引き継ぎや指導もしていかなければね、と話しています。
やっぱり千葉流アクションを愛しているし、若者たちに、伝えていきたいですね。
育てていきたい。
素晴らしい先輩たちに教わったことを、後進たちへ繋ぎたい。
正々堂々とやって、素晴らしい作品をつくっていこうよ、と。
また10年20年たったら、3代目ギャバン、育てるよ!
取材を終えて・・・
子どもの頃、『バトルフィーバーJ』も『電子戦隊デンジマン』も、もちろん『宇宙刑事ギャバン』も夢中になって観ていた。
そして今の子どもたちも、新しい『ギャバン』を観ている。
ファンにも2代目が誕生しているのだ。
「CGやワイヤーアクションばかりじゃ寂しい。アクションスタント全盛の頃を取り戻したいよね。」
大葉さんとお話ししていると、アクションにかける熱い心が伝わってくる。
その熱い思いが作品に乗り移り、2代目ギャバンへと継承されているのだろう。
是非、3代目、4代目と、紡いでいっていただきたい。
プロフィール
大葉健二(おおば・けんじ)
1971年、設立直後のジャパンアクションクラブ(JAC)第一期生に合格。
スタントマンとして数々の作品に出演後、『柳生一族の陰謀』の「ツヅレ」役でセミレギュラーに。
1979年『バトルフィーバーJ』、1980年『電子戦隊デンジマン』と、続けてスーパー戦隊シリーズのメンバーとして出演。変身後のアクションも自ら担当する。
1982年『宇宙刑事ギャバン』の「一条寺烈(ギャバン)」役で初の単独主演。
2003年には千葉真一とともに、クエンティン・タランティーノ作品、『キル・ビル Vol.1』に出演。
2012年『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』、2017年『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』では、初代ギャバンとして出演。
また、俳優・高野八誠のクラウドファンディング企画、中編特撮映画『HE-LOW』への出演が決定している。
郷里松山にて、株式会社「LUCK JET」を経営、イベントの企画制作なども行っている。
◆Twitter
https://twitter.com/ohbayougo
◆LUCK JET Official site
http://www.k5.dion.ne.jp/~seisindo/
◆一条寺烈フィギュア | プレミアムバンダイ
http://p-bandai.jp/item/item-1000115251/
◆『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』公式
http://www.space-squad.net/
◆「ヒーローがヒーロー映画を撮る」高野八誠が撮る中編特撮映画『HE-LOW』
https://camp-fire.jp/projects/view/30886