この会社は怪しいかもしれない!?
全く理解できなかった業務にハマる
働き方の加減乗除の4ステージ
本日登場するスゴい人は、楽天株式会社の正社員でありながら、勤怠自由&自分の会社を持ち新しい働き方にチャレンジしているスゴい人。
インターネットやAIの普及によりどんどん働き方が変わってきている。
これまで大手企業に所属しながら、勤怠フリーで資本関係が全く無い自分の会社を創り、働いている人はいなかったのではないだろうか。
何故、彼はこんな働き方を実現できたのだろうか?
さあ…
仲山考材株式会社 代表取締役
楽天株式会社 楽天大学学長
仲山 進也様の登場です!
大企業の歯車的な仕事にモヤモヤする
大学時代、司法試験に落ちて、1年留年して就職活動を行い、大手電機メーカーに入社しました。
同期の1人と会う度に「最近どう?」と聞くと、「うん全然(楽しくない)」というお決まりの挨拶が返ってきて、「もっと思いっきり働きたいよね」などとくすぶりトークを日々繰り返していました。
その同期が「インターネットのベンチャーに転職します」という短いメールを残していなくなりました。
それから1年も経たない入社3年目の4月に突然、彼から電話がきました。
「どう、そろそろ?」と転職の誘いを受けたのですが、ネットに疎い僕には彼が話している業務内容がさっぱりわかりません。
逆に「どう最近?」と質問すると、「うん。楽しい」と。
お決まりの挨拶不成立でモヤッとするわけです。
会って3時間話を聞いても「ネットのデパートって何?」という状態で、やはり何の会社だか全く理解できません。
楽天市場とかいうのだそうです。
石の上にも3年という諺がある通り、今の仕事は、まだ全体を理解しきれていないから面白いと思えないのかもしれない。
だから3年は勤めようと思っていました。
すると、「うちの会社は今15人だけど、年末までに60人にすると社長が言っている。3年勤めて来年4月だったら100人くらいか。20番目と100番目って違うんだろうな」とぼそっと言うんです。
諺の重みよりも、20番目と100番目の入社の違いの方がリアルに感じ、社長に会えるのか聞くとその場で電話してくれて、3日後に会うことになりました。
この会社は怪しいかもしれない!?
3日後、三木谷さんという人と会いました。
10分ぐらい雑談をして「じゃあ宜しく!」と手を出され、思わず手を握り返していました。楽天市場の出店案内資料一式を手渡され、帰りの新幹線で読んでいてやっと何をしている会社なのか理解できて、「面白そう」と思いました。
しかし、6月になって自宅に届いた採用通知には、自分が訪問した株式会社MDMではなく楽天株式会社という知らない社名が書かれていました。
怪しい、これは何かのトラブルに巻き込まれたのではないか!?今の会社の退職手続きを止めてもらったほうがいいか…と不安になったのですが、たまたま6月1日に社名変更をしていただけでした。
全く理解できなかった業務にハマる
楽天に入社したのは1999年6月21日。
全社ミーティングで話されている内容は、日本語なのに殆どわかりませんでした。
初めての土曜日、やりたい事もあるので休日出勤しようと11時頃会社に行くと、ほぼ全員が出社していて「遅刻した!」と思いました。
でも、みんな自主的に出社している空気感が部活のように感じられ「これは楽しい!!」と感じました。
大企業と違い、仕事の全体像を掴めるのも楽しく、更に出店者さんから「この前のアイデア、やってみたら手応えあったよ。ありがとう!」などと言われるのが嬉しすぎて、完全に仕事にハマっていきました。
新しいことは社外で実験的に始める
2000年に「楽天大学」という出店者向けの教育機関の立ち上げをやりました。
まだ「ネットはうさんくさい」と思われがちな時代だったので、いかにお客さんとコミュニケーションを取って信用を築けるか、といったことを出店者さんたちと議論するのが楽しかったです。
ある時期からバブルの様な時代が来て、流行りの商品をセールして広告すればどんどん売り上げが伸びていくようになり、僕の出番はなくなって暇になりました。
そんな時、三木谷さんがヴィッセル神戸のオーナーになったので、サッカー好きであることをアピールしてみたら、「神戸行って手伝ってきて」と言われました。
当時ヴィッセルの物販はネットショップがなかったので、自分で楽天市場に出店申込書を送って、お店をオープンしました。
実際に自分で店舗運営をやってみると、それまで見えなかった膨大な店長業務が見えてきて、「実際にやってみないとわからないことがあるな」と学びました。
その後、商売が軌道に乗った出店者さんたちは、組織の人数が増え、人や組織の問題に悩み始めるケースが多くなりました。
相手は中小企業の経営者です。会社の組織づくりの話をするなかで、自分だけがサラリーマンであることに違和感を覚えるようになりました。
店長業をやって初めて見える景色があったので、経営者もやってみたいと思いました。
そういった思いを会社に伝えたところ、「兼業フリー・勤怠フリーの正社員でどうか」という提案を頂いたのです。
今の仕事のスタイルは、新しいことを立ち上げるときは個人として小さく始めて、軌道に乗って楽天内でやろうということになれば楽天としてやる、という形になっていて、とてもやりやすいです。
働き方の加減乗除の4ステージ
最初は足し算で、選り好みせず出来ることを増やして苦手なことにもチャレンジするステージ。
そのうち自分の強みが浮き上がってくるので、強みを軸にして、それ以外の業務を減らす引き算のステージがやってきます。
次が掛け算のステージ。
自分の強みを必要とするチームから声がかかるようになり、他人の強みと掛け合わせながらプロジェクトベースで仕事をします。
プロジェクトが増えすぎると、どれも中途半端になりがちです。
そうすると次は割り算のステージ。
仮に自分の強みが、数字にして5の作業をすることだとします。
そうしたら、9や11のプロジェクトは全て断り、5の倍数のプロジェクトだけに絞ります。
すると、5の作業をしている限りは、10や25のプロジェクトは同時に進んでいることになる、という考え方です。
どうしたら新しい働き方を生めるのか?
楽天に転職して数年後、大学時代の友人から「おまえが楽天に行くって聞いたとき、あいつは終わったなと思った」と言われました。
転職後も、プレイングマネージャーというのがうまくできなさすぎて、マネージャー業を自主降格した事もあります。
レールから外れないように仕事をしている人が多いように思いますが、僕はレールを外れてみたら、世の中には道路というものがあって自動車という乗り物があり、レールがないところにも自由に行けることを知りました。
今は正解のない、混沌とした時代です。
これまでは「正解がわかる」ことが優秀さでしたが、今は「あえて分けずにカオスを楽しむ」ことでイノベーションが生まれます。
なので、くっきりと区切られた部署と部署の垣根を曖昧にしたり、出店者さん同士の垣根を曖昧にしたりして、混ぜ合わせる事で化学反応が起きないかと探るのが今の仕事です。遊ぶように仕事をするほうがうまくいきやすいので、楽しいです。
取材を終えて・・・
仲山さんと同世代であり、自分も初めてベンチャー企業に勤めた時に、同じように仕事の楽しみを見つけることができたので、働き方の加減乗除の話は非常に腑に落ちた。
このような素敵な思考と表現力を兼ね備えている仲山さんは、かなり魅力的である。
楽天というこれだけ大きな会社にとっては、例外を生む方がリスクだと思うが、お客様目線を大切にし続けた社員を大切にする事が次なるステージを作り上げている事は確かだ。
競合他社が出てきたネットショップの世界において、楽天は原点回帰をしながら更にイノベーションを起こしていくのだろうと感じた。
プロフィール
仲山進也(なかやま・しんや)
著書
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