扇職人で唯一、全ての工程を1人で仕上げられるスゴい人!

浅草、雷門の仲見世にある創業120年の老舗扇店“文扇堂”
扇子というのは通常各工程で担当を分けて、分業で作るものだが、本日登場する文扇堂の4代目は、全ての工程を1人で仕上げられる日本で唯一の職人である。
そのため扇職人でありながら個展を開くことも出来るので、オーストリア、ハンガリー、イタリアで個展を開催した経験も持つ。
彼の作る扇は絶大な信頼を得て、歌舞伎界や舞踊界、落語界に多くの贔屓客を持つ。
彼の作る扇子は、他の扇子と何が違うのだろうか?
どんな拘りが、その違いを生み出すのか?
さあ・・・荒井文扇堂 代表取締役社長 荒井修様の登場です!

「遊び心」

代々浅草っ子の扇子屋の家系に生まれ、戦後3年目に生まれたので、浅草の街の復興と共に私も育ってきました。
両親も祖父母も踊りや歌舞伎、舞台、寄席などが好きでしたので、幼い頃から沢山の踊りや舞台を目にしてきました。
親父が寄席にいけない時は、木戸銭をもらい1人で人形町の末広に行ったりして、とにかく芝居や寄席が大好きでしたね。
商人の家に生まれたのですが、家業を継ぐ気は全くなく、学生運動まっただ中の時代に大学に行きました。
将来何をするか模索している時、奈良原一高さんの写真に衝撃を受け、カメラマンになりたいと思い、弟子入りを志願しました。
しかし「僕は弟子をとったこともないし、弟子になったこともない」と言われ、この考え方に更に衝撃を受けました。
本人の才覚やセンスが重要なんだと気づかされ、その帰りに、うちの扇子作りをする扇職人の親方の所に行き、弟子入りを志願したのです。
家業は職人さんが作った扇を売るという仕事でしたが、私は、売るだけではなく自分を表現できる作品作りをしたくなったのです。
修行は大変でしたかって?
落語や講談で職人修業の大変さを知っていましたので、それから見たらちっとも苦しくなくただ楽しかったです。
5年程で仕立て工程を身に付けた時、「もう教えることはない」と言われ、そこでの修業を終えましたが、まだ柄付けはしたことがありませんでした。
柄付けの師匠はいなかったので、独学で失敗を重ねながら技術を身につけていきました。
私が一番勉強になったのは、五代目 坂東玉三郎さんです。
素晴らしい見事な感性をお持ちの方ですから。
ある時、お客様から「夜這い」というお題を頂きました。
私は下を白で塗って雲を、上は濃い紺で塗って夜空を表現しました。
紺の部分にキラキラとひかる天の川と、それを横切る流れ星も。
下ネタは雲で隠すという“雲隠し”という言葉があり、天の川を飛び越える流れ星を“夜這い星”というのです。
単に夜這いの絵を描いても面白く無いので、自分なりの洒落を効かせたのです。
お客様は「こう来たか!参った!」と言ってくださいましたね。
お客様に喜んでいただけるデザインを生み出すためには、これまで触れてきた沢山のデザインを自分の中で新しい形にして表現する事が何よりも大切です。
それは、柔軟な発想と遊びココロのバランスから生まれるものだと思っています。

◆文扇堂
東京都台東区浅草1-30-1(仲見世店)
東京都台東区浅草1-20-2(雷門店)
TEL:03-3841-0088
http://www.asakusa.gr.jp/shop/bunsendo.html
※一部携帯では見られない可能性があります。

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