心の中にいる、子どもの心で作詞するスゴい人!▶新沢としひこ様 DAY1

幼稚園・保育園・小学校でよく歌われる「世界中のこどもたちが」「ともだちになるために」「にじ」 「さよならぼくたちのようちえん」などの名曲を生み出したシンガーソングライター。「心の中にいる子ども」と対話して曲を作るという新沢さん。その手法とは一体どういったものなのか?子ども時代にまで遡ってお聞きしました。

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心の中に大人とこどものちがい

編集部(以下、編):本日はお時間いただきありがとうございます。よろしくお願い致します。

新沢さん(以下、新):どうぞよろしくお願い致します。

 

編:いきなりなんですけど、まず、としひこさんの作詞に対するユニークなアプローチ、「心の中に子どもがいる」というコンセプトですけど、これってどういうことなんでしょうか?

新:子供の歌を作る時、大人の都合で書いてしまうと、それはもはや子供のための歌ではなくなっちゃうんだよね。大人の視点で歌を書くと「ほら!手をつなぐと仲良くなれるでしょ!仲良くしようね」とか「手を洗いなさい」みたいな、大人の視点の歌になっちゃうんですね。それじゃあ子供は楽しく歌えないんだよね。そうじゃなくて、僕は常に、「子供はどう思うだろう?」や「自分が子供だった時はどうだったか?」と自問自答しながら作詞するの。みんな子供の経験があるわけですから、その純粋な感覚を歌にすることが大切なんです。

 

編:なるほど。それが「心の中の子供」なんですね。作詞の過程で、どのようにして子供の感覚を取り入れているのですか?

新:子供の感覚を取り入れるためには、まず自分自身が子供の気持ちに戻ることから始めます。例えば、友達との初めての出会いとか、一緒に遊んだ記憶とか、ドキドキした瞬間とか、子供の頃の純粋な体験ってあるでしょ。その時の感情や体験を歌に反映させることで、子供たち自身の体験と重なるよう努めています。大人の私が作品をまとめることになりますが、その過程では、子供の自分と大人の自分が協力して作品を作り上げているんです。

 

編: 新沢さんの心の中にいる「子供の自分」と「大人の自分」が協力して作品を仕上げるんですか?

新: そう。子供の歌を作るということは、実は全員大人が行っている作業でしょ。でも大事なのは子供が表に出て活躍できるよう、大人は監督やコーチのような立場でいることです。

子供も詩を書くことできるんですけど、語彙が少ないから、「そよかぜ、そよそよ、たのしいな。」「くもがソフトクリームみたいだな」とかになっちゃう。で、今度は大人が強すぎると、歌は説教臭くなっちゃったり、子供はそうは思ってないよって歌になっちゃう。だからそのバランスを取って、自分の中の子供の声を大切にしながら、大人の経験と知識を使って、子供たちが本当に楽しめる歌を作り上げるんです。子供の純粋な感覚を大人がそのまま筆記するという感じですね。

 

編:その感覚を掴んだきっかけってあるんですか?

新:私、保育園の先生もしてたんですよ。例えば川に遠足に行ったりとかすると、メインで大勢でわーっと遊んでいるチームよりも、外れちゃってずっと石ころを積んでる子がいるんですよ。その静かな男の子とただ一緒に黙って石を積んでたんです。そうすると、徐々に彼が何をしたいのか「あ、こっちにみずたまりつくりたいのか」とかわかってくるわけ。で、言葉を交わさないのに協力関係ができ上がるんですよね。で、あるとき、ふたりがやりたいことがぴったり一致して、目が合ってニコッと笑い合えたんですよ。その瞬間、その子と何か繋がった感じがするし、その子の心がちょっとわかった気がする。そういう実際に子供との保育の時間を過ごせたのはとっても良かったですね。

 

大人とこどものちがい

編:  大人と子供って何が違うんでしょうか?

新:今、僕は子供たち相手にステージで歌ったりするけど、例えば、身体を伸ばしたり縮めたりする体操があって、身体を小さくするときは「アリンコになるよ!」って言うと、子どもたちは、アリに成りきっちゃう。笑みんな『アリっ!』って感じ。笑大人に「アリンコになるよ!」って言っても、「はいはい。ちいさくなればいいのね。」みたいな。笑 根本的に違うの。動きが全然違う。

 

編: 確かに!大人は、ありんこに成り切るって考え方しませんもんね。笑

新:それが悪いってわけじゃなくて、それは大人として当然だし、色々学んできたことが人生の経験がなんだからいいんですよ。でも僕の仕事っていうのは、その大人と子供を繋ぐような仕事だと思っています。大人は理屈で考えるから間違えるけど、子供が感じてること、子供の直感、それはもう全部正しいって感じています。大人は頭が進んでしまって、理屈をつけがちですが、最終的な正解は、子供の感覚的な方にあるんじゃないかなと思ってます。

<周りとは溶け込めず自分の世界を持っていた幼稚園時代>

編:新沢さんは実際どのような子供でしたか?

新:僕、たくさん記憶があるんですけど、まず、幼稚園初日で、みんな仲良く遊んでいたんです。で、それを見て僕は「あ、なんかみんな楽しく遊んでるから、僕だけ初日じゃないんだ。みんなは友達がいるけど、僕かは後から入ったかんだ。」って勝手に思い込んで、僕は柱から一歩も歩けず、その時間を終えたんですよ。後日全員初日だったって聞いてびっくりしたの覚えています。そんな初日でした。子供ながらに色々考えてしまう性格で、集団で遊ぶことが苦手だったからでしょうね。かなり大人びていた優等生タイプでもありました。

 

編:とんだ勘違いでしたね笑

新:あとは、幼稚園の頃からすごく本を読む子だったんですよ。本棚の端から端まで全部読まないと気が済まない。でも先生としては、本を読んでる子は暗くて、友達がいないと思っているから、気を使って僕に声かけてくれて、「本読んでないで、あっち行って一緒にあそぼう!」とか誘ってくれるんですけど、僕にとっては絵本の世界がとても楽しくて、とても脳内でめちゃくちゃ活動的だったんです。外から見ると暗そうに見えたのかもしれないけど、次どうなるんだろう!?ワクワクドキドキ、心は生き生きしてた。それがすごく大事で、今もその感覚を大切にしています。心はいつも自由に冒険しているんですよね。

 

編:想像の世界では活動的だったんですね笑

新:そ。あと、レコード鑑賞の時間も好きでしたね。みんなホールに椅子を並べて全員座るわけ。すると先生がね。「今日のレコードは『森の水車』というレコードです。森の中に水車小屋っていうのがあってね。川が流れると水車が回るの。そのところを音楽にしています。」って言って、曲を流すんだけど、僕は「あ!すごい!水が流れてる!水車回ってる!小鳥が鳴いてる!すごい素敵~!」って思ってるんだけど、僕以外の子は全員退屈してるわけ。僕だけ「何!?クシコスポスト!?郵便屋さんが!馬車に乗って、吹雪の中、手紙を運んでる!大変ー!」とか。笑 「あ!剣でチャンバラやってるすごい!ハチャトゥリアン!?何その変な名前!」とか大興奮なんだけど、周りの子たちは退屈すぎて、おもらししちゃったりとかしてた。(笑)

 

編:すごい想像力たくましい子だったんですね。笑

新:あと、早生まれだったんで、小さいから、結構いじめられかけました笑。強い子が近づいてきて、その時なぜか「あ、なんかいじめられそう!」って思って、僕、泣いちゃったんですね。そしたらその子、「まだいじめてないじゃないかー!」って言ったんです笑

 

編:そんな防御の仕方あるんですね笑。かなり 感受性が高い子どもだったのかもしれないですね。

子供なのに子供の仕事がしたい

新:あと幼稚園の頃から「子供なのに子供の仕事がしたい」という変わった思いを持っていました。音楽の時間に曲を聞いたり、絵本を眺めたりして、創作物を生み出す大人がいることを知って、なんて素敵な仕事なんだろう!と思っていました。小学生の時には子供が喜ぶ歌を作りたいと本気で思い始めて、卒業文集で将来の夢は童話作家になることって書いてるんです。

 

編:なんか大人びていますね。子どもなのに子どもの仕事がしたいっていうのは。

新:そう。でもね、今自分の子供時代を思い返してみると、子供って意外と大人っぽいよって思ってるの。意外なところに嫉妬心とかさ、なんか猜疑心とか。子供って大人よりももっと複雑なことを感じているし、それは言葉が不器用なだけで、たくさん感じてるよって。みんな忘れてるだけだよって。

子供ってあどけなくて天使みたい。っていうのは嘘で、もっともっと深いでしょとか。もっと人間でしょって思ってるんです。

 

編:新沢さんは、小さい時の記憶がたくさんあって、しかも鮮明だから、そう確信できるんですね。

新:そう。そう。自分が色々感じたっていう記憶があるからね。幼稚園の記憶は僕の宝物で、無くしたくないなって思っています。

(DAY2へ続く)

 

新沢としひこ氏 プロフィール:
シンガーソングライター。東京都出身

アスク・ミュージック
https://ask7.jp/
公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/ShinzawaToshihiko
Facebook
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X(旧Twitter)
https://twitter.com/jaja_shinzawa

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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