海外にいたからこそ客観的に見えた日本の教育
入塾テストをしない!がポリシー
家族と関わり子どもを伸ばす
塾に入ると所狭しと机が並び、様々な学年の子どもたちが勉強し、時に先生の叱る声が轟く。
一瞬張り詰めた空気になるが、どこかあたたかい雰囲気を持つ、進学塾 VAMOS。
本日登場するスゴい人は、先着順・入塾テスト無しなのに、8割の生徒が難関校に合格する進学塾の代表。
幼少期の10年をマドリッドで過ごしたこともあり、サッカーにも精通。
塾を経営する傍らサッカーの仕事にも携わっている。
生徒の志望校に沿った指導法はいかにして生まれたのだろうか?
さあ…
進学塾VAMOS 代表
富永 雄輔様の登場です!
マドリッドで過ごした幼少期
父の仕事の関係で生まれてから10年、スペインのマドリッドで育ちました。
当時はインターネットもなく、スペインは日本からは遠い存在でした。
マドリッドなのでサッカーも盛んでした。
私の家からサッカー場も近く、生活の中にサッカーがありました。
試合で勝ったらみんなが花火を打ち上げ、負けたらビール瓶を投げている。
サッカーは見る・やる全ての文化が生活の一部、という経験をしてきました。
学生だった頃は、あまりスペインの帰国子女ということがプラスに捉えられませんでしたが、スペイン語や英語を学べたことやサッカーを身近に感じられたことは非常にいい経験ができたと思っています。
海外にいたからこそ客観的に見えた日本の教育
中学に入り日本に帰国しました。
海外で育ったことで、日本人でありながら日本人という感覚が薄かった私は、日本人は礼儀正しく、殆どの国民が読み書き出来ている日本の教育は素晴らしいと思ったのです。
でも、日本人の自己卑下する文化は気になっていました。
日本人は東大生をすごくリスペクトしますよね。
私の考えとしては、東大合格はあくまでもテクニックと受験勉強ができた賜物で、特別なことでは無いんです。
それをもっとわかってもらえたら、多くの人が楽になるんじゃないのかと、自分が受験勉強中に非常に強く感じていました。
多くの日本人は普通に生活しているけれど、ヒントを見出せなかったり、人間関係の中で困っているという人がたくさんいるのではないかと思いました。
「そういう人たちに対する道標になるようなものをやりたい」と思い始めたのが今に至る経緯です。
学習塾に着手
吉祥寺という場所を選んだのは、私の中で当時の都内3大教育有名地域の一つだろうと勝手に思っていたからです。
ここで成功したら他でもするんじゃないかと、逆転の発想であえて激戦区に乗り込みました。
私も中高で教育熱心な進学塾に通っていたので、塾については精通していました。
海外で過ごした経験から日本の良さを感じていたので、日本らしい、部活動や寺子屋のような教育環境で学ぶことの良さを多くの人にわかってほしいと思っていました。
私たちは全く宣伝しなかったのですが、兄弟で通ってくれる生徒も多数いて、経営は安定していきました。
生徒は幼稚園の年中から高校・浪人生までですが、卒業して講師としてまた戻ってくる生徒も沢山います。
もうまるで家族のようですが16年一貫教育、教育の総合商社みたいなイメージですね。
ロールモデルを作るスタイル
今の日本は核家族になっていて、他人と接する機会が減っています。
昔は兄弟も多く、隣近所にも友達兄弟がいたりして「あんなお兄ちゃんみたいになりたい」というロールモデルが沢山ありました。
ロールモデルがいると子どもたちは自分で目標を決められます。
大人がどうこう言っても、正直子どもはやりませんから!
特に最近は、部活動でも上下関係がハッキリとせず子ども同士の人間的な結びつきが非常に薄くなってきています。
私が塾を通じて実現したいのは、上級生と下級生がお互いを見合う関係を作りたいんです。
それは、下の学年に見られることで上の学年である自覚を、上の学年を見ることでロールモデルを探せるスタイルです。
家族と関わり子どもを伸ばす
一人の子どもを伸ばすと考えた時に、その子がどういう家で、どういう兄弟構成で、どういうバックグラウンドのご両親か知らないと伸ばせません。
求めている本質を知る必要があるのです。
将来的に子どもにどうなって欲しいかを、両親と積極的に面談しています。
きっとここまで家族の中に入り込んでいる塾は無いと思います。
そして1つご両親とルールを決めています。
それは街で私を見かけても絶対に話しかけないで欲しいと(笑)
街で話しかけられるとキリが無くなるので、面談は塾でやる事にしています。
家族と共に子どもをみているので、ここだ!という伸びる瞬間を見逃しません。
子どもの性格や状況をみて徹底的に叱ります。
2時間だけの子もいれば、3日間叱る場合もあります。
冷静に叱る行為を仕事としてするのです。
そうすると伸びしろが一気に増し、急激に子どもは伸びるのです。
常にプレッシャーの中で
年々、塾に対する期待値は上がると共にプレッシャーも高くなっています。
期待に応えなきゃいけないという意味でいうとプレッシャーは日々あります。
来年の入試を考えると今も辛いです。
もっというと、再来年のことを考えるともっと辛いし、でもこの仕事をやっていく上では、枕を高くして寝ることはないんだろうな、といつも思っています。
バランスを保とうと思ってサッカーの仕事を始めたら、今度は週末選手の出来によってイライラしたり、移籍がうまくいかないとイライラする。
結局、ストレスは増える一方なので、私個人としてはストレスを減らすのではなく、ストレスを受け入れる耐性を身につけるようにしました。
今後のビジョン
塾というよりは「教育の総合商社」の様に、生まれてから子どもたちが就職するまでを統括してみられるサービスを作りたいと思っています。
原点の「困っている子どもたちや家庭を助けたい」というのは全くブレていないので、幼児教育なのか、幼児の体操教室なのか、お父様お母様のフォローなのか、保育園なのかわからないけれど、子どもたちを支える仕組みを作りたいです。
もしかしたら究極の目標のどこかに、学校というのはあるのかもしれないです。
私は、子どもだろうが大人だろうが包み隠さず話して、嘘偽りなく、現実で戦える子どもたちを作りたいのです。
小さい頃から高校生までを一貫して育てられる仕組みがあったら面白いと思っています。
取材を終えて・・・
富永さんの想いと実際に形にされている事を知ると、今まで想像してきた塾とは大きくかけ離れていた。
社会とは何かを教えてくれる、安心できるもう一つの家族の様に思えた。
今の日本の環境ではなかなか教育できない所に敢えて着手されている。
人との関わりが薄い環境で社会に出てしまうと、自分のポジションを上手く取れず孤立してしまう人がいるが、子どもの頃から幅広い人間関係の中で育つことで自分の得意、不得意も客観的に捉える事が出来るようになる。
入塾される時に月謝が高いと言われるそうだが、卒業される時は全員が安かったと言われるそうだ。
きっと学習能力以上にご両親は子どもが人としての成長を遂げていると実感しているからであろう。
プロフィール
進学塾VAMOS代表。
幼少期の10年間、スペインのマドリッドで過ごす。
京都大学を卒業後、東京・吉祥寺、四谷に幼稚園生から高校生まで通塾する進学塾「VAMOS(バモス)」を設立。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年約8割の熟成を難関校に合格させている。
なかでも、中学受験部は、学年・レベル別で分けた少人数の「寺子屋」スタイルを採用。生徒の志望校に沿った指導法で確実に結果を出すことで注目されている。受験コンサルティングとしての活動も積極的に行っており、年間300人以上の家庭をヒアリング。その経験をもとに、子どもの個性にあった難関校突破法や東大生を育てる家庭に共通する習慣についても研究を続けている。
◆進学塾VAMOS http://www.vamos-kichijoji.com
著書
◆新刊『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社) http://amzn.to/2hB6xDq