
格闘技界のプリンス。ついそんな言葉が浮かんでしまう。180cmを超える身長に、端正なマスク。ハードな練習の直後に声をかけても、爽やかな笑顔で応えてくれる。そんな彼は白鳥大珠選手だ。小1で極真空手を始め全日本を獲り空手少年として注目を浴び、その後キックボクシングではRISE WORLD SERIES 2019 -61kgトーナメント王者、第5代RISEライト級王者、RIZIN KICK ワンナイトトーナメント優勝と、数々の輝かしい成績を持つ。一見すると順風満帆な道を歩んできたように見えるが、そこには人知れず大きな挫折も。白鳥大珠様29歳、ここまでの格闘技人生を伺った。
人生一回
6歳から始まる格闘技人生、極真空手の世界へ飛び込む
生まれ育ったのは東京都西多摩郡瑞穂町という場所です。東京とはいえ自然も多くのどかな田舎町です。
僕が格闘技を始めたきっかけは、6歳、小学校一年生の時。父親に連れられて極真空手の道場へ見学に行きました。父親が格闘技好きだったのもあって、僕に何か武道か格闘技をさせたかったんだと思います。でも、決して無理やりっていう感じでもなく、僕自身稽古に通うのは楽しかったですね。道場を2つ見学して最終的に僕が選んだのは隣町の道場。そこには極真空手界でも知られる有名な先生がいて、結果的にその出会いが僕の格闘技人生を大きく変えることになりました。同い年くらいの子も多かったです。最初は週2回くらいの練習だったけれど、試合に出るようになると自然と練習量も増えて、週5日が当たり前になっていきました。

当時の先生と
小学校3年生の時、それまで高学年の子と戦って1回戦とか2回戦であっさり負けていたのですが初めて優勝することができました。その時の感動は今でも覚えています。その後、全日本で優勝するなど実績も重なり、また結果を残せるようになったことで、さらに僕の格闘技熱は上がっていきました。
魔裟斗さんに憧れ、キックボクシングへ
小学校も高学年になると、格闘技の世界にのめり込む一方で、テレビで観ていたK-1に自然と惹かれていきました。K-1の選手に憧れました。ちょうどK-1が盛り上がっていましたから。特に魔裟斗さん。試合以外のドキュメンタリーやトレーニング映像も何度も繰り返し観ていました。スタイル、華やかさ、存在感——すべてがカッコよくみえたんです。その頃から、キックボクシングや総合格闘技をやりたくなってきました。あの華やかな舞台で闘ってみたいって。
とてももどかしいんですけど、キックボクシングがすごくやりたい、でもできない。その時は極真空手の大会にも出ていたし、「世界の果てまでイッテQ!」というテレビ番組に出演して、空手少年として注目されてしまったんです。「実はキックボクシングがやりたいです」なんて簡単に言えなくなってしまって。

試合の一コマ(右側の黒帯がご本人)
それでもなんとか、中2の頃、周りに理解してもらってキックボクシングのジムに入ることができました。最初は全然違う世界で驚きましたね。空手は顔を殴りませんが、キックボクシングではもちろん顔面も狙います。その分の怖さもありましたが、それよりすごく楽しかったのを覚えています。キックボクシングは、自分でどうしてもやりたくて始めましたから、練習に行くのも楽しかったです。怖さ以上に面白さの方が勝っていました。友達と遊びたい気持ちもありましたが、それもそこそこに放課後は毎日のようにジムに通っていました。週6日は行っていましたね。一番練習していた時期じゃないかと思えるほど。
キックボクシングを始めて2ヶ月で、いきなりアマチュアの大会で決勝までいきました。極真空手の経験はめちゃくちゃ役立ちましたね。自信にもなっていたと思います。TOKYO DOME CITY HALLの大舞台で、結果的に負けてしまいましたが、すごく興奮しましたね。練習は痛かったり怖かったりすることもありましたが、試合となるとアドレナリンが出るのか恐怖感はあまりなかったんです。
高3でキックのチャンピオンに輝くが、ボクシングへ転向!?
その後、高校へ進学してから15歳でプロデビューしました。18歳、高校3年生の時には初のタイトル戦に挑み、日本スーパーフェザー級チャンピオンになりました。すると僕の中でますますK-1への想いは強くなります。ありがたいことに出場しないかと声を掛けたりもしていただいていました。
でも、出られないんです。ジムの事情で・・・。
僕が所属していたジムは、ムエタイのジムで、チャンピオンになったのもムエタイの大会でした。そのジム所属のままではキックボクシングであるK-1の出場は認められません。キックボクシングは空手とムエタイを融合させた完全に日本発祥のスポーツです。ですからムエタイとキックボクシングというのは似ているけれど実は厳然とした違いがあるんです。その当時は親にも間に入ってもらって何度も話し合いを続けましたが、ダメでした。完全に大人の事情ってやつです。
そこでボクシングに舞台を移すことにしたんです。実はそこまでボクシングがしたいわけじゃなかった。でも所属していたムエタイのジムを辞めたら、契約の関係で他のキックボクシングのジムに入ることができなかったんです。でもボクシングなら、他の種目なので試合に出場ができたんです。周囲の後押しもあり、一度やってみることにしました。
ボクシングへの転向は、父親や周辺の応援してくれる人たちにとっては嬉しいことだったようです。日本では長年盛り上がっている格闘技の代表格ですからね。すでにキックボクシングで実績があった僕は、半年でプロテストに合格、その後デビュー戦ではいきなりの大舞台を用意してくれて、大勢のお客さんの前でKO勝ちをおさめることができました。ボクシングに専念する中でも、どこかでずっと「キックに戻りたい」という思いは消えませんでしたね。
もちろんその時は本気でチャンピオン目指してボクシングをやってましたよ。でも一方で心の中には葛藤もあったんです。いつも配信動画や番組では、キックボクシングばかりみてしまう。ボクシングは世界戦などトップクラスの試合や選手でないとなかなか注目されませんが、キックボクシングは、AbemaTVなどのネット配信もやっていて、露出の機会も多かった。やっぱりキックがいいなあ、といつもどこかで思いながらボクシングのリングに上がっていました。
転機は突然訪れました。大学4年の時、日本ユース(24歳以下)のタイトルマッチがあり、ここで勝てないようならボクサーとして今後の将来の道は厳しいのではないかと考えたんです。挑戦して今後を占うひとつの区切りにしようと思いました。結果は敗退。そこから悩みに悩みました。このまま格闘技を続けるべきか、それとも就職か。大学4年の10月、周りは就職先が決まったりしている中、自分はこれまでひたすら練習、練習の毎日でバイトすらまともにやったことありません。先生にも進路の相談をして、本気で就職を考えました。
白鳥大珠様プロフィール (取材時 2025年3月13日時点)
1996年2月2日、身長183cm、体重63cm TEAM TEPPEN所属
戦歴/43戦30勝11敗1分1NC(12KO)
-RISE WORLD SERIES 2019 -61kgトーナメント王者
-第5代RISEライト級王者
-RIZIN KICK ワンナイトトーナメント優勝
-元WPMF日本スーパーフェザー級王者
試合情報
2025年3月29日(土)、東京・両国国技館にて『RISE ELDORADO 2025』が開幕。
第5代RISEスーパーライト級(-65kg)王座決定戦3分5R無制限延長R
同級2位白鳥大珠選手(TEAM TEPPEN)が、同級3位・麻火佑太郎選手(PHOENIX)とベルトをかけて対戦します。
PPV情報 PPVチケット ¥3,200
※アプリからのご購入は別途手数料がかかります。
購入はこちらから https://abema.tv/live-event/fb8a192a-8093-4058-bedd-14589693a5d3?open_browser=true
会場観覧チケット購入はこちらから https://rise-rc.com/event/rise_eldorado_2025/