日本の伝統文化である「日本酒・本格焼酎・泡盛」を世界へ広めるスゴい人!DAY2

「國酒」(こくしゅ)ってご存じですか?日本の伝統文化でもある酒造において作られる日本酒・本格焼酎・泡盛を総称する言葉です。誰もが日本の酒を世界に広める活動を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。本日ご紹介するのはその「國酒」を世界に広める活動をサポートしている「日本酒造組合中央会」の理事である宇都宮仁(うつのみや ひとし)氏。国税庁職員からの今のお立場での活動まで、今回取材させていただきました。

他の日を読む⇒DAY1                                                   YouTube              

新しい酒は新しい革袋がつくる!

・和食ブームとともに知名度がアップ

・インバウンド需要のこれから

・お酒の学校「SakeShochu Academy」

和食ブームに乗って世界へ

また日本酒の普及に大きく影響してきたのはやはり和食が世界的にブームとなったことは非常に大きいですね。2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産登録されたこともあって、日本食レストランが世界中に増えました。それと相関するような形で日本酒の輸出も大きく飛躍することになりました。しかしながら現在、世界的なコロナ禍のさなかにあってレストランは多くの国でシャットダウンしている状況です。こうなると今後の輸出の見通しというのはかなり厳しい状態がしばらく続くのではないかと予想しています。特に欧米においては消費が日本食レストランに頼っているため見通しがなかなか立たないだろうと思っております。まだまだ日本酒というものが現地の生活の中に欠かせないものとして深く浸透するところまではできていなかったという反省もあります。それから日本酒の流通チャネルが限られておりますから今流行りのECとか通販ルートにはほとんど乗れていなかったという現実がありますので、それらの反省事項をこれから我々が改善に取り組んでいかなければならないと考えています。今まで、日本食レストランや寿司バーの展開に合わせて自動的に輸出量が増えるというような、店舗数が倍になれば輸出も倍になるということに頼る状況からは変わっていかなければならないと思います。

 

日本酒についての知識を世界に広めていく

具体的に我々が今注力しているのはですね、知識の伝播です。例えばソムリエの方ですとか、焼酎の場合ですとバーにいるバーテンダーとか、ミクソロジーカクテルのミクソロジストとかになりますけれども、実際にエンドユーザーであるお客様と対面で接している専門家の方に日本酒や焼酎の良さをきちんと知ってもらうことが重要だと考えています。

現在、食中酒としてはワインが主流のディナーの中で、たとえはシーフードのマリネでしたらこの吟醸酒も合うので美味しいですよ、というね。コースで4本ワインがあるならそのうち1本は日本酒にしてもらうような、そんな提案ができるようになれば理想だなと。

焼酎に関しても、焼酎には本当に多様な特性があります。例えば12~14度くらいにした焼酎をお湯割りや水割りで楽しむという文化が日本にはありますが、ヨーロッパやアメリカなどの海外ではこういった蒸留酒を割って薄めて飲むというような習慣がない、どちらかと言えば食後にストレートで飲むというイメージなんですね。日本みたいに寿司をつまみながら蒸留酒を飲むという習慣は無いわけです。そういう習慣というか、ルーティンとして存在しない世界の中でこの焼酎を広めていくという挑戦としていわゆるトップバーと言われる著名な店に焼酎が置かれるようになるために、焼酎の特性を理解していただくとともに、焼酎自体の魅力を高めていくことも必要だろうと思います。ですから度数が40度といった高い度数のものやボトルの形状も日本のものとは少し変えて、世界の各地で受け入れられるような製品を各メーカーさんが努力し始めています。海外の見本市に出展し、海外プロモーションをすることで学びや経験値を経て、やっと入り口についたところです。中央会の役割としては組合員の事業発展のきっかけとなるような全体的なサポートをする役割です。大型の見本市では1社ずつ出てもなかなかアピールは難しいですから、海外で取引をしてみたいという企業2030社が集まって、國酒のコーナーというか、ブースを作って、そこにいけば日本酒や焼酎に出会えるという全体的なアピールをしています。

 

インバウンド需要のこれから

今は大変に厳しい状況にあるインバウンド需要ではありますが、昨年まで日本酒もインバウンド需要で大変に売り上げを伸ばしました。これは日本国政府の施策としてツーリズムにおいてももっと國酒をアピールしたほうが良いのではないかというのがありまして、国内の空港会社の協力を得て国際空港内で國酒キャンペーンとして、空港の免税店エリアで試飲・販売を行っています。

中央会としての役割はその中の調整役です。空港のお土産の特徴としては値段が高いものが売れるんです。日本を発つ方々が最後のお土産を購入されるというのがあるのでしょうか。ですから酒蔵にとっても非常に良いビジネス機会となっていたので、一日も早く状況が改善するように願っております。

日本酒の輸出先でいうとアメリカが輸出金額的に1位ですが、中国が2位でして、3位の香港と合わせると実質的にはアメリカを抜いて1位だと言ってよいと思います。特にアジア圏は食べ物が日本と近く、嗜好も似ているので日本酒も受け入れられやすい環境にあると思います。吟醸酒に対するニーズが比較的高いと感じています。インバウンドの方もアジア中心ですから期待しています。

今年は止まってはおりますが、中央会として、海外のソムリエや著名なフードライターの方を日本へお招きして日本酒への理解を深めていただくツアーなども行ってきました。実際に酒蔵をご訪問いただいて、お酒が造られている環境やその工程、長い歴史の中で培われてきた伝統文化としての背景など、表面的ではない日本酒への理解を深めていただく趣旨で開催しておりました。WEBやバーチャル環境など、やり方に工夫を凝らしながらも歩みを止めることなく活動を続けられたと考えております。その際の課題は時差になります。アメリカに合わせると日本の夜中に真っ暗な酒蔵ツアーするのか、みたいなものすごくアナログな課題が今度は上がってきますけれども(笑)

海外での正しい知識の普及へ

そしてもう一つ、日本酒造組合中央会が主催して専門家向けの「SakeShochu Academy」 という正しい知識の普及を目的としたセミナーも開催しておりました。こちらは受講料を支払っていただき参加していただくというもので、見学も含めて5日間の日程です。受講された方は皆様とてもご満足いただいておりました。通算では51名の方が卒業されております。出身国は様々でフランス、スイス、スウェーデン、オランダ、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国、台湾など世界各国からご参加いただきました。卒業生の中からは、現地にある中央会のサポートデスク、現地リエゾンと呼んでいますけれども、そちらで働いてくださる方も出ています。こうした多面的な業界サポートの活動が少しずつ実を結んでいると感じています。

酒蔵でのセミナー研修

今このコロナ禍においては一時的には数字が落ち込むような厳しい状況はあるかもしれませんが、この先の将来を見据えて長期的な視野を持ちながらその歩みを止めることなく発展させていかなければならないと思っています。

将来の理想としては世界各地のスーパーのワイン売り場に何本かの日本酒が並んでいる、日本人がフランスやイタリアのワインを家庭で日常的に楽しむように、海外の各家庭で日本酒や焼酎が料理に合わせて選ばれるような未来を目指したいですね。まだまだ長い道のりではあると思いますが。

インタビュー:NORIKO 映像構成:株式会社グランツ 翻訳:Tim Wendland

 

 

 

編集後記

今回は日本酒造組合中央会さんが主催した「本格焼酎&泡盛」のためのイベントにて取材させていただきました。コロナへの細心の注意を払いながら開催されたこのイベントにおい

宇都宮理事は、日本酒造組合中央会や本格焼酎と泡盛の現状についてのご説明をされました。今回の取材中に、プライベートでお酒を飲んでもついつい味の批評をしてしまうので、同僚たちと一緒にお酒を飲んでいるときに窘められることもあります。と、照れながら教えてくださったのが印象的でした。

 

Profile 宇都宮 仁(うつのみや ひとし)

日本酒造組合中央会 理事

愛媛県出身。京都府立大学大学院農学研究科修士課程修了

1983年 国税庁入庁

国税局、独立行政法人酒類総合研究所、国税庁で勤務。

2018年 退職2019年 日本酒造組合中央会理事

著書(共著) 「最先端の日本酒ペアリング」 旭屋出版(2019)

 

◆日本酒造組合中央会および「國酒」にまつわる主な出来事(世界・海外とのつながり)

1993年 FOODEX 初出展

1998年 「日本の酒情報館(SAKE PLAZA)」オープン(西新橋)

2000年 九州・沖縄サミットにて「國酒」提供

2006年 海外イベント事業開始

2008年 北海道洞爺湖サミットにて「國酒」提供

2009年 「國酒」として日本酒・焼酎・泡盛を宣言

焼酎の海外イベント事業初開催

2013年 「和食」がユネスコ無形文化遺産登録

2014年 日本酒造組合中央会 海外サポートデスク設置(NY・ロンドン)

2015年 ミラノ万博に「國酒」を出展

駐日外交官酒蔵ツアー開始(国税庁共催)

2016年 伊勢志摩サミットにて「國酒」を提供

2017年 海外専門家向けSake&Shochu Academy開始

サポートデスク設置(香港)

通訳案内士向け研修会開始

2018年 ProWine2018 (デュッセルドルフ)初出展

サポートデスク設置(パリ・台湾)

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう