日本の伝統文化である「日本酒・本格焼酎・泡盛」を世界へ広めるスゴい人!DAY1

「國酒」(こくしゅ)ってご存じですか?日本の伝統文化でもある酒造において作られる日本酒・本格焼酎・泡盛を総称する言葉です。誰もが日本の酒を世界に広める活動を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。本日ご紹介するのはその「國酒」を世界に広める活動をサポートしている「日本酒造組合中央会」の理事である宇都宮仁(うつのみや ひとし)氏。国税庁職員からの今のお立場での活動まで、今回取材させていただきました。

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新しい酒は新しい革袋がつくる!

・日本酒造組合中央会とは??

・大学の研究が国税庁で生きる

・日本酒の魅力の発信と発見

日本酒造組合中央会とは??

 日本酒造組合中央会というのは国の法律に基づく団体でして、各県単位の組合が会員として47都道府県に存在していて、その先に各蔵元さんなどの組合員の方が約1700社参加しております。私は理事として平成31年1月度から任に就いております。

 根拠として「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」があるのですが、設立は1953年の戦後まもなくですから、目的の一つは文字通り、「酒税の保全」なんです。会員がきちんと税金を納めるのを促進することになっています。ちょっとわかりにくいし、なんだか税金を徴収するための組織みたいに聞こえるのですが(笑)

実際の事業としては組合員さんが持続的に発展していくような、醸造技術の共有や需要振興、酒類業界におけるルール例えばラベル表示方法を検討するとかの活動を行っています。また最近では海外市場における日本酒・焼酎の人気や地名後も高まっておりますからそのプロモーションなどもやっています。 

海外見本市での様子

愛媛から京都へ、そして国税庁入庁

私は愛媛県出身で、大学は京都府立大学へ進みました。

子供時代は、当時は田舎ではまだ珍しい共働きの家庭で育ちました。保育園では一人で遅くまで保育士さんと二人で過ごす日々で、また6歳下の妹が保育園に通っていた当時は忙しい両親に変わって妹のお迎えなどもしておりましたので中学一年くらいまでは友達と放課後に遊んだりする機会があまりなかった子供時代でしたね。父親が乳業関係のメーカーの工場長で牛乳やアイスクリーム作ったりしていたので食品関係へは自然に興味を持ったかもしれません。国家公務員試験に合格した後に農林水産省にいこうかと思っていたら国税庁の中にも酒をやっている部署があるらしいというのを聞いて、面白そうだと思い国税庁に決めました。

国税庁での業務

大学時代は農学部で農芸化学を専攻しまして、その時の研究課題はキノコでした。お酒とは関係が無かったのですがこの時に学んだ分析や合成の知識がその後、私の業務において非常に有用となるのですが、当時の私は全くそんなことはつゆ知らず、ただキノコの成分についての研究に没頭しておりました。後に国税庁に入庁してから、お酒の分析や酒造メーカーに様々な指導をする鑑定官室という部署へ配属となり、各地方において技術改善の指導や級別の審査などの担当をしておりました。実際に蔵元さんなどにもたくさん伺いました。この部署の存在自体はあまり広く世間に知られてはいない部署で国税の職員数としても60人くらいしかおりません。このような仕事が存在していることを知っているのは酒関係の業界の人くらいでしょうか。その後東広島市にある独立行政法人酒類総合研究所でお酒の成分、味や香りの研究をして日本酒の香味の評価標準を作るのですが、ここでは大学時代のキノコの成分研究の経験がとても役立ちました。

日本古来の伝統文化としての酒造業

酒造りというのは単なる製造業ではなく、長い歴史を持つ伝統文化でもあるわけです。1990年代の清酒業界のミッションとしましては大きく2つありまして、一つは級別制度の廃止への対応、もう一つは杜氏の減少に伴う酒造業界の将来への布石です。杜氏の高齢化が進んでおり、10年後には出稼ぎの杜氏さんがいなくなるということは明らかでした。その頃は杜氏が持っている経験や知識は会社のものではなく、杜氏のものなんです。杜氏がいなくなった時に酒造りというのは終わりを迎えるわけです。日本酒造組合中央会では杜氏に代わる技術者育成のための通信研修制度を発足させましたし、国税庁としても新たなモデルを提案し、製造講習を始めるなどそれをサポートしました。ある酒蔵の売上規模で年間雇用できる人数というのは大体決まってきますから、その中で年間雇用をした人員でどのように酒造りが可能なのかなどを検討しました。その当時にスタートした様々な施策は30年を経て今、従業員や経営者自身が若手の杜氏、女性杜氏として活躍する例が増えています。

「國酒」としての日本酒、本格焼酎・泡盛の世界への発信

日本酒造組合中央会の現在の活動の大きな柱の一つに、日本酒と本格焼酎・泡盛を全世界に普及促進すること。というのがあります。一過性のブームではなく、日本という国の文化の重要な要素として広く世界で認知させていくことです。中央会として、海外事業を始めたのは2006年。2012年からは国全体として國酒の輸出振興への取組みが始まりました。海外普及に取り掛かった最初の頃はよくわからないことが多くて手探りだったと聞いています。日本酒の輸出は10年連続で過去最高を記録し、輸出額は3倍になりました。この流れの一つの大きな要因としては円安になったという面もあります。2010年前後は1ドルが80円くらいまで円高でしたが、その後1ドルが110円台になって、日本からの輸出価格は大きく下がりました。日本酒の価格が海外で手に届きやすい値段になりました。それと前後するように海外のソムリエの方や、ワイン業界の方々が、ちょっと日本酒が面白いんじゃないかと気が付き始めたっていうのがありましてね。海外で日本酒のコンテストが始まりました。コンテストをやると言っても、そういう方たちも海外で日常的に日本酒を飲んでいるわけはないですから。まずは日本酒についての知識を深めもらうことが大切だと、一緒に審査をして日本酒の専門家とワインの専門家が集まって意見交換をしたんです。日本人から見ればこの酒の良さはここだ。とか、海外のワイン専門家から見ればこういう評価が可能だよね。というようなお互いの知識を交換し、目線を合わせていくような動きです。2007年から本格的にこのようなことが始まりました。注釈:2009年:日本酒・焼酎・泡盛の「國酒」宣言

新しい日本酒の魅力の発信と発見

コメから作る日本酒はワインと同じように食中酒として使えることや、ワインには無い日本酒独特の特性というか、良さというのがあるなと次第に認識されていったわけです。我々も日本酒の良さというものを日本の中にいるとなかなか気が付きにくいような点を改めて外から見ることで教えられ、発見するようなこともあったわけです。またもう一つ特筆すべきこととしては、日本酒の飲み方のバリエーションがきちんと知られるようになってきたというのがあります。以前は海外ではHOT SAKE という飲み方が先に認知されていて。とにかく熱くして飲むものだなんていう、まるで罰ゲームでもするような、飲めたものではないくらいの熱さで飲むというイメージもあったんです(笑)。ところが冷たくしてグラスで飲む吟醸酒などを紹介していくにつれて日本酒の味わいが少しずつ認知され日本酒に対するイメージが変わってきたわけです。そこで海外プロモーション事業というのがきちんと計画されるようになりました。2009年からは焼酎の海外イベントも行っています。

(明日へ続く)

インタビュー:NORIKO 撮影:株式会社グランツ 翻訳:Tim Wendland

 

Profile 宇都宮 仁(うつのみや ひとし)

日本酒造組合中央会 理事

愛媛県出身。京都府立大学大学院農学研究科修士課程修了

1983年 国税庁入庁

国税局、独立行政法人酒類総合研究所、国税庁で勤務。

2018年 退職2019年 日本酒造組合中央会理事

著書(共著) 「最先端の日本酒ペアリング」 旭屋出版(2019)

 

◆日本酒造組合中央会および「國酒」にまつわる主な出来事(世界・海外とのつながり)

1993年 FOODEX 初出展

1998年 「日本の酒情報館(SAKE PLAZA)」オープン(西新橋)

2000年 九州・沖縄サミットにて「國酒」提供

2006年 海外イベント事業開始

2008年 北海道洞爺湖サミットにて「國酒」提供

2009年 「國酒」として日本酒・焼酎・泡盛を宣言

焼酎の海外イベント事業初開催

2013年 「和食」がユネスコ無形文化遺産登録

2014年 日本酒造組合中央会 海外サポートデスク設置(NY・ロンドン)

2015年 ミラノ万博に「國酒」を出展

駐日外交官酒蔵ツアー開始(国税庁共催)

2016年 伊勢志摩サミットにて「國酒」を提供

2017年 海外専門家向けSake&Shochu Academy開始

サポートデスク設置(香港)

通訳案内士向け研修会開始

2018年 ProWine2018 (デュッセルドルフ)初出展

サポートデスク設置(パリ・台湾)

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