『ONE PIECE』『サクラ大戦』などのヒットソングを手がけたアニソン&ゲーム音楽界のスゴい人!

今週ご紹介するのは、『ONE PIECE』の歴代オープニング曲や『サクラ大戦』シリーズの全楽曲をはじめ『ジョジョの奇妙な冒険』、『かいけつゾロリ』、『天外魔境』、『笑ゥせぇるすまん』、『エスパー魔美』など、アニメ・ゲーム音楽史に残る名曲の数々を手がけてきた巨匠、田中公平様。今年で活動40周年の田中氏に作曲家になった経緯から、長きに渡り売れ続ける秘訣、今後の構想まで、知られざるスゴいエピソードを 4 日間お伝えします。

令和リニューアル記念4日連続インタビュー

DAY1

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【日本を代表するアニソン&ゲーム音楽作家の原点】

編集部(以下編):本日はよろしくお願いいたします。

田中さん(以下田):よろしくお願いいたします。

 

編:2017年の10月に取材させていただいて以来、2 回目のインタビューになります。今年で音楽作家活動40周年、おめでとうございます。

田:ありがとうございます。

 

編:今回は田中さんがこうして長年、第一線で活躍してこられた秘訣や、作曲家としての在り方、今後の展望などを伺いたいと思います。まずは改めて、田中さんの生い立ちから詳しくお聞きしてよろしいでしょうか。

田:道頓堀からすぐの所にある病院の一人息子でした。うちは代々医者の家系で、親戚も政治家、経営者、校長、学者なんて、堅い方向ばっかり多いんですよ。そんなもん、普通に考えたら先は決まっちゃってるじゃない? それがなぜこうなったか、という(笑)。

 

編:音楽をはじめたきっかけは何だったんですか?

田:あまり覚えてないんだけど、小2の時、突然ピアノを買ってもらったらしい。それからピアノを習い始めて…作曲もその頃からしていました。もう「こういう風」になるんではないか、って心の底では思ってたんじゃないかな。音楽に関わりたいと思っていました。

そこからはもうクラシックの「乱聴き」ですよ。外で遊びまくって、家に帰ったらベートーヴェンやワーグナーなんかをダーッと聴きまくるという。伯父から借りたベートーヴェン交響曲全集は、レコードの溝が無くなるほど聴きました。

 

編:周りからはどう見られていたんでしょうか。

田:きっと嫌なヤツだったと思うよ。勉強できて、スポーツもできて、ピアノも弾いて、医者の息子で。そんな奴、イヤだよね(笑)。

 

編:確かに(笑)。モテモテだったでしょう。

田:奥手でした(笑)。

 

編:音楽にのめり込んでいって、家族はどんな反応でしたか? 

田:成績は良かったので特に言われることは無かったですね。中学に上がると、勉強しないと一番になれなくなって。さすがに「医者になるんだよな」っていうプレッシャーが家にはあるから、ちょっと勉強して(笑)。

高校は大阪聖光学院に入りました。周りは医者とか公務員の子が多くて、東大目指しているようなのばっかりでした。

 

編:進学校に進まれたんですね。 

田:高校時代はそんなに勉強しなかったですね。部活はグリークラブ。ピアノも続けていました。特にスポーツもしないのに、相変わらず運動会になったらいきなりトップになるもんだから、体育会系のヤツらは面白くなかったみたい。

 

編:「俺たちは毎日走り込んでるのに!」みたいな(笑)。その後、東京藝術大学に進まれるわけですが、ご家族にはどう説明されたんですか? 

田:高校3年の夏、父に「作曲家になりたいんだ」と伝えたんです。父は驚天動地ですよ。「音楽は趣味だろう? 医者の大学に行け」「いや、ちょっと。作曲家になるから…」なんて話して。

そこでウチの父は偉いのよね。

「僕も新聞記者になりたかったけど、父から言われて医者になった。君の気持ちはよく分かるから、一度挑戦してみたら?」と、こうですよ。

 

編:寛大なお父様ですね。

田:それで「一番良い学校どこや? 東京藝術大学? じゃあそこに入って、なおかつ日本一の作曲家になるなら許したる」と。

 

編:ハードル上げてきた(笑)。 

田:「2浪までは許したる」と言ってくれたんですが、高3の夏ですよ? これから受験の準備をしても、普通は入られへんよ。10浪した人もいるし。

 

編:田中さんは見事、1浪で合格されました。

田:これがまたウチの父の偉いところで。藝大のことを調べたらしい。医者仲間のネットワークを駆使して藝大の先生を見つけてくれて。紹介してもらったのが池内友次郎※1先生。当時の藝大音楽学部長でドンみたいな人ですよ(笑)。

※1:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E5%86%85%E5%8F%8B%E6%AC%A1%E9%83%8E

 

編:さすがの人脈ですね!

田:それから毎週、日曜の朝一番に新幹線で東京に行って、池内先生をはじめ4人くらい先生をまわって、最終で帰ってくるという生活。それでも1年目は簡単に落ちるんです。

今や日本を代表する現代音楽家、西村朗2と一緒に通ってたんですが、私は2次、彼は4次で落ちた。

2年目に浪人として上京して、1年間二人で頑張って、揃って合格しました。

2https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E6%9D%91%E6%9C%97

 

編:やはり恵まれていたと感じますか?

田:それ、やっぱり費用がすごいよね。レッスン料は1日トータルで25千円ぐらいだったかな。往復の交通費もあるし。それが毎週かかるわけですよ。今思うと、あの時の親の助けがなければ大学に受かってないし、一人では絶対にここまで来ることはなかった。それは今でも感謝してますね。

 

編:前回の取材では、卒業する時にはビリから2番目だったとおっしゃっていましたが、どんな学生時代でしたか? 

田:正直、藝大では4年間、遊び倒しましたよ。朝から晩まで呑んでて、授業なんて誰も出ない。

 

編:どなたもですか!?  

田:だって先生も一緒に呑んでるんだから(笑)。そもそも先生がボイコットして午前中から飲んでいる(笑)。もう時効だから言っちゃうけど、佐藤眞3先生から、色々と面白い話を聞きました。

3https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E7%9C%9E

 

編:課外授業が中心というわけですね(笑)。

田:技術じゃないんですよ、教えられる事というのは。そんなもん、本を読んだら大体書いてあるよ。作曲したりピアノを弾いたり、自主的でない人はそもそもムリ。

そんなことより、世の中は大体こうなっているよ、とか、そういう話のほうが大切じゃないですか。

先生とは「おう、田中!女の上から降りて呑みに来い!」「乗ってへんわ!」みたいなやり取りや、電話で将棋を指したりした思い出があります。酔っ払ってるから「そんな所に角が行くかボケー!」なんて(笑)。

時折「この作曲家は、どうしてこの音でいきたくなったか」「こう考えてじゃないかな、きっと」みたいな話を織り交ぜてね。

 

編:多くのことを学ばれた。 

田:そうです。毎日のように呑んでいるだけでも、大切なことを教わっていました。

 インタビュー:アレス 編成:Wahsy ライター:西秀進

 

(明日へ続く)

 

◆オフィシャルブログ:田中公平のブログ My Quest for Beauty

https://ameblo.jp/kenokun/

◆株式会社イマジン 田中公平

http://www.imagine-music.co.jp/artist/tanaka/

◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式サイト

http://avex.jp/tsubasa-project/

◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式Twitter

https://twitter.com/tsubasa_PR

◆『アニメNEXT_100』公式サイト

http://anime100.jp/index.html 

Amazon:田中公平作品

http://amzn.to/2kKph56

 

Profile

田中公平(たなか・こうへい)

作曲家・歌手

 

1954年大阪生まれ。

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業.

ビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)勤務後、米国ボストンのバークリー音楽学院に留学。帰国後、本格的に作・編曲活動を始める。

アニメ『ワンピース』、『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』の主題歌や、ゲーム『サクラ大戦』の主題歌をはじめ、アニメやゲームの音楽を多数手掛ける。

近年は作曲活動のほか歌手、演奏者として国内外でライブも行っている。

2002年 新世紀東京国際アニメフェア21にて、『ワンピース』でアニメーション・オブ・ザ・イヤー音楽賞を受賞。

2003年 『サクラ大戦』で第17回日本ゴールドディスク大賞アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。

2017  『アニメ100周年アニバーサリーソング「翼を持つ者 〜Not an angel Just a dreamer〜」』。ささきいさお、水木一郎、堀江美都子、串田アキラなど、レーベルを超え集結した豪華アニソン・声優アーティスト23組が参加する、アニソン版『We Are The World』を目標に制作された本作は、「アニメNEXT_100」の公式ソングにも決定した。

 

 

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