大学への失望。自然との出合い。
今までのすべてがつながり、YAMAPの構想が生まれる
脳で考えるより、心のときめきを掴む
本日登場するスゴい人は、アプリは75万ダウンロード、月間ページビューは約1億の、日本最大の登山・アウトドアコミュニティ「YAMAP」を生み出したスゴい人!
スマホが電波の届かない山でも使えるGPS機器になる他、事前の情報収集や写真やコメントの共有も可能。
「GOOD DESIGN AWORD 2014」 BEST100、ものづくりデザイン賞受賞、「B DASH CAMP2015春ピッチアリーナ」優勝など、数々の賞を受賞している。
どのようにしてYAMAPが生み出されたのだろうか?
さあ…
株式会社ヤマップ
代表取締役 春山 慶彦様の登場です!
浪人期間が人生観を広げた
小さい頃から体を動かすのが好きで、マラソン、ラグビー、水泳、野球、バスケットボールなどをやっていました。
学生時代は部活動に熱中し、高校卒業後、現役で大学に進学したらアメフトをやりたいと思っていたのですが、大学受験に失敗して浪人しました。
浪人中は予備校の寮に入り、寝る時間以外はひたすら勉強する生活。
一生懸命勉強しているけれど、この努力が自分の為だけにしかならないのかと思った時、途方もなく虚しくなったんです。
世界を見ずにわかったつもりになるのはバカだと思い、机に向かう学びのスタイルはこれで最後にしようと決めました。
大学に行ったらバイトでも旅でも良いから、実社会のつながりから学びたいと。
何者でもない時期を経験したことで、世界の見方の幅が広がったので、僕は浪人して良かったと思います。
大学への失望。自然との出合い。
大学入学後、1ヶ月目で面白くないと感じて愕然としました。
社会との接点から学ぼうと、フィリピンで幼稚園の運動場や家を作るボランティアサークルに参加。
同じ村に何回も行き、旅ではなくボランティアだったので、すごく親密な人間関係を築けたのはいい経験でした。
大学時代、もう一つ打ち込んだのが山登りです。
自転車で旅していた時に、屋久島でウミガメの産卵を見ようと、永田のいなか浜の旅館で「お風呂だけ入らせてもらえませんか」と言うと、ご飯も食べて行っていいよと言われて。
その人とご飯を食べながら話していたら、「魚の獲り方やさばき方、植物の見分け方を教えてやるから1ヶ月間働いていかないか」と言われ、こんな機会は二度とないと思い、働きました。
ある時魚を獲りにいなか浜の海に潜るとすごくきれいで、別の宇宙のようだったんです。
「自分が知らないだけでこんな世界が身近にあったんだ」と驚愕し、自然の素晴らしさを知らなかった自分を恥じました。
歩いて自然の中に入る方が自然の良さが見えると思い、山に入るように。
屋久島での経験が無かったら、こんなに自然に興味を持っていないと思います。
そこから星野道夫さんの自然をテーマにした写真や文章に出合い、惹かれました。
彼の作品や文章、彼が面白いと言うものをかき集めて読んで、どれも面白く、「自分のやりたかったものはこれだ」と気づいたんです。
以来、写真を職業にして生きていきたいと思い、その気持ちは今も変わっていません。
『風の旅人』出版部での学び
大学卒業後はアラスカで、イヌイットの人たちと一緒にクジラ漁やアザラシ猟をさせてもらいました。
マイナス40度の自然環境の厳しい場所が、他の生物への興味や生きていることの不思議さを教えてくれた気がします。
また、アラスカで撮った写真を、当時もっとも素晴らしいと思っていたグラフィック雑誌『風の旅人』に掲載してもらいたいと思い、段ボール箱いっぱいの資料を編集長宛に送りました。
すると編集長の佐伯さんから返事をいただき、帰国後に出版部を訪ね、ご縁があって『風の旅人』の出版部に入りました。
2年3か月ほどでしたが、佐伯さんの下で働いているうちに、写真家の仕事はシャッターを押すだけではないと思うようになりました。
とても濃密な経験をさせてもらいました。
地域によるスタートラインの差がない社会を作る
29歳の時、スペインの巡礼路を歩きたかったのと、自分でどんな仕事もできると思えるくらい鍛えられたこともあり、独立するために会社を辞めました。
僕は地方出身者なので、東京で働いて東京が面白いとわかった分、なじみのある京都や福岡に帰った時に町が寂しく見えることがあったんです。
生まれた町や住んでいる場所でスタートラインが遅れている社会は理不尽だと感じ、自分たちの世代でそうじゃない世界を作ろうと考えました。
住みたい場所に住み、一生懸命仕事をすればちゃんと生活できる世界は作れると思い、起業場所に地元・福岡を選びました。
2010年に創業し、2011年3月に東日本大震災が発生。
あの悲しい経験あったからできたと言えるものを自分で作り出し、仕事に変換して社会に還元できないかと考えていました。
今までのすべてがつながり、YAMAPの構想が生まれる
2011年5月、大分県の九重連山を登っている時にGoogle Mapsを開いたら、真っ白い画面の上に自分の位置を示す青い点だけが表示されていました。
「電波が届かないから見られないよな」と思い、もう一時間歩いて再びGoogle Mapsを開くと、現在地を示す青い点だけが移動していたんです。
その時、電撃が走りました。
位置情報はGPS衛星から拾っているので、電波が届かなくても生きいてるんだ…。
だったら地図データを端末にダウンロードできるようにすれば、スマートフォンが山でも使えるようになると閃きました。
かつてイヌイットの人たちとアザラシ猟に出たとき、彼らはGPSを使っていて、GPSに命を救われた経験もありました。
その頃からGPSを内蔵するスマートフォンは、命を救う道具になりうると思っていました。
山でスマホが使える仕組みが実現できれば、今以上に安心・安全に山を楽しめるし、豊かな自然が自分たちの身近にあることを発信できる。
20代で経験し、考えていたことのすべてがつながった瞬間でした。
登山・アウトドアは風土との結びつきを深めるアクティビティでもあるので、楽しいだけでなく社会的意義もある。
スマートフォンを使って、登山・アウトドアを舞台にビジネスをやるのは非常に面白いと思ったんです。
YAMAP誕生!日本最大のコミュニティへ…
リリースするまでには1年10か月くらいかかりました。
自分が手掛けたものが世に出るというのは、何にも代えがたい喜びですよね。
リリースできたときは、喜びが全身を貫きました。
何にも代えられない至福の経験です。
地方でベンチャーをやる最大のデメリットは、情報格差です。
僕らはお金も信頼もない状態で、誰も知らないサービスを作っているので、どうやってサービスを知らせたらいいんだろうと考え、広告宣伝の一環としていくつものコンテストに挑戦しました。
運良くいくつかの賞を頂き、賞をきっかけに企業との関係性ができたり、メンバーが増えたりしたので、挑戦して良かったです。
今、YAMAPは登山・アウトドアのコミュニティプラットフォームとしては日本最大ですが、アプリウェブビジネスは一強多弱の厳しい世界。
圧倒的No.1にならないと生きていけないので、今後は安定した収益を上げつつ、規模をもっと大きくするのが課題です。
頭であれこれ考えて悩むより、心のときめきに素直になる
都市化が進んでいることもあって、多くの人が意味にとらわれすぎていると感じます。
自分が心ときめくことをやっていれば、それが仕事になると思うし、意味も後からついてくると思うんです。
楽しいとか、ワクワクするとか、生きている喜びに素直になることが、意味も存在意義もやりがいも連れてきてくれるのではないでしょうか。僕はそう思っています。
小さくていい、日々のときめきをちゃんとつかむことができていると、生きていることそのものへの感謝が自ずとわいてきます。
その感謝がその人の感受性を高める。
意味ではなく、生きている経験、心ときめく経験に素直に、これからも仕事をしていきたいと思っています。
取材を終えて
YAMAPさんの本社は福岡ですが、今回は東京にいらした際に取材のお時間をいただき、お話を伺いました。
春山社長のお話は学生時代の旅のお話やアラスカ時代のご経験、『風の旅人』出版部でのご経験など、興味深いものばかりでした。
また、文字数の都合で本編には書けませんでしたが、春山社長の「朝の習慣」のお話はとても勉強になりました。
朝起きて、豆を挽いてコーヒーを淹れ、やるべきことや思いついたことを書きだし、毎朝同じ本を読み、ヨガやラジオ体操をする。
そうすることで、「自分から1日を掴みに行く」感覚があるのだそうです。
やる気持ちさえあれば誰でもまねできることなのですが、お会いして数週間、まだできずにいます…。
「人生がうまく行かない時は、朝の過ごし方がまずい時」とのことですので、現状を変えたい方、一緒にチャレンジしてみましょう。
プロフィール
春山 慶彦(はるやま・よしひこ)
株式会社ヤマップ 代表取締役
2013年にITやスマートフォンを活用して、日本の自然・風土の豊かさを再発見する“仕組み”をつくりたいと株式会社セフリ(現在の株式会社ヤマップ)を設立。同年、社会問題になっている山での遭難・道迷いの事故を解決するために開発した地図アプリ「YAMAP(ヤマップ)」をリリース。携帯の電波が繋がらない山の中でも、スマートフォンにて現在位置が確認できるほか、インターネットがつながる環境に戻ったら、ルートや活動時間・距離などの記録情報のほか写真や感想をYAMAP上に公開し他のユーザと共有することができる。
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