日本のトレイルランニング界の第一人者のスゴい人!

挫折の連続

無気力で自暴自棄な日々を変えたトレイルランニング

50歳で再び世界最高峰のUTMBへ!

本日登場するスゴい人は、日本のトレイルランニング界の第一人者として活躍するスゴい人!
28歳でトレイルランニングを始め、40歳の時には仕事を辞めてプロへ転向。
世界最高峰のUTMBで3位、全米最高峰の「ウエスタンステイツ100マイルズ」で準優勝など、世界を舞台に数々の輝かしい記録を残してきた。
49歳の現在も活躍を続け、国内でのトレイルランニングの普及にも力を注いでいる。
そして2019年、再び世界最高峰へ挑戦することが先日発表された。
彼のこれまで、そしてこれからの挑戦への想いを聞かせていただこう。

さあ…
プロトレイルランナー
鏑木 毅様の登場です!

いじめられっ子から抜け出すきっかけを自力でつかむ

いじめられっ子から抜け出すきっかけを自力でつかむ
子どもの頃は非常に内気な性格で、毅なのに「ヨワシ」と呼ばれ、小学校低学年までいじめられていました。
3年生の冬、朝礼で全校生徒で縄跳びをやることになったんです。
長く跳び続けることを競うものだったので、速く走ることはできないけれど向いていると思い、いじめられて日頃悔しい思いをしていたので、その状況から逃れられるようなアピールをしたいという想いで練習しました。
その結果、最後まで跳んで、そのまま倒れて、保健室に運び込まれました。
それはすごく大きな出来事で、やればできるということを人生で初めて掴んで、そこから変わったように思います。
少しずついじめられることがなくなり、人前で話せるようになり、勉強にも前向きになれました。

挫折の連続

中学校で陸上部に入り、高校でも続けていたのですが、高校1年生の秋に坐骨神経痛になり、レースに出られなくなってしまいました。
2度目の挫折ですね。
花咲かずに終わってしまった無念さ、悔しさはずっとあり、大学では夢を叶えたいと思い、箱根駅伝をめざして早稲田大学を受験しました。
2年浪人して入り、レベルアップして、もう少しで箱根のメンバーに入れそうなところで、坐骨神経痛が再発。
慢性化してしまって治らず、3年生で箱根を諦めて退部しました。
挫折の連続でした。

無気力で自暴自棄な日々を変えたトレイルランニング

就職は、流されるように地元群馬県の県庁へ。
箱根駅伝に代わる夢を持てず、無気力でダメな社会人でした。
週3日くらい飲み歩き、走りもせず、体重も増えてしまって、自分でも良くないと思いながらも、自暴自棄でどうしようもない日々でした。
転機は27歳のある朝。
新聞でトレイルランニングの記事を目にして、直感的にこれは面白いと感じました。
大自然が相手で、自分が求めていた自由さ、壮大さ、ロマンのようなものを感じたのです。
偶然出会えたのではなく、自分が求めて悩んで苦しんでいたから、見えない何かが差し伸べてくれたと思います。
1年かけて体重を落とし、トレーニングをして、28歳で初挑戦した大会で初優勝。
それから人生が変わりました。
優勝したことよりも、箱根に代わる新しい夢や希望、ビジョンが見つかり、新たに情熱をかけられるものに出会えた喜びが大きかったです。
それからは毎週のように山を駆け巡ることに熱中しました。
ワクワクする思いがあると仕事にも前向きになれて、すべてが良い循環に変わっていったのです。
出会えたことの幸福を感じました。

負のエネルギーをプラスに転換する

それから日本で1番になり、アジアで1番になり、世界で3位に。
失敗もしましたが、大切なことは10代、20代で味わった挫折が、トレイルランニングの世界で自分の心のエネルギーになったこと。
思い通りにならなかった思いを忘れずに、エネルギーとして内に貯め続けたものがトレイルランニングで爆発したのです。
忘れるのもいいけれど、何か事を起こす時には、ネガティブエネルギーをプラスに換える力がないとダメだと僕は思います。
だから今は嫌なことを言われても「ありがとう、やる気に火をつけたね」と思えるようになりました。
挫折がなければ、世界3位にまでなれなかったと自分では思っています。

一念発起し、仕事を辞めてプロに

役所の仕事は数年で異動があり、自分にしかできないと思っていた仕事でも他の人に引き継げてしまいます。
人生一回きりだから自分にしかできない仕事についてみたいと感じていて、40歳の時、トレイルランニングを通じてもっと世界を見てみたい、もっと広めることは今の自分にしかできないことだと、一念発起して仕事を辞めました。
趣味だったことが仕事になり、時に辛く感じることもあるけれど、その時は遊びだと思い、楽しもうと意識を変えました。
プロになって初めて気づいたのは、好きなことは形が変わっても好きだということ。
そう気づいてからは、ストレスを感じずに取り組めました。
原動力は楽しさです。
勝つ喜びもあるけれど、山を走っている時が一番楽しく、自分らしくいられると感じます。
時には世界で活躍するためにとんでもない練習もするのですが、自分では山にいる時間を楽しいと思うようにしているし、実際に楽しいので、苦行にはなりません。
だから、すごく楽しみながらやってきたと思います。
仕事だと思うと味気なく、時につらくなってしまうので、僕の中ではどんなつらい練習でも遊びだと思うことを大切にしています。

目標に向かう道はまっすぐではない

目標は高みに行くことで、誰しもがまっすぐ上って行きたいと思っているけれど、実際には紆余曲折あり、上ったり下りたりジグザグに進みます。
人生には必ず上り下りがあるけれど、ゴール地点を常に見つめていれば、上っていける。
下がった時は終わりではなく、もう一度また上ってゴール地点に行けるというイメージを持ち続けながらやる事が大切です。
失敗した時に希望を失わず、目標を見続けられるか。
僕も最初から気づいていたわけではなく、当時の自分は下がったときに落ち込んでいました。
振り返ってみて、そう思えるようになったので、若い人達に伝えたいです。

50歳で再び世界最高峰のUTMBへ!

世界最高峰のUTMBで3位、全米最高峰のウエスタンステイツ100マイルズで2位になり、グランレイド・レユニオンは自分が越えないといけないハードルだと感じ、チャレンジしました。
しかし2013年はリタイア、2014年は心臓トラブルでリタイアという結果でした。
2014年は45歳で、年齢とともに体力が落ちてくる中で、以前の自分のように走れないストレスが溜まりにたまったのが心臓トラブルとして表れました。
もう一度本来の、出会った時のわくわくする気持ちでチャレンジしないといけないと思い、45歳からは自分の第2ステージに入ったと思います。
自分の心に嘘をつかず、自然体で、どんな結果でも精いっぱいの力を出して最高に燃え尽きようと。
リタイアしましたが、大きな意味のある大会でした。
今年、2017年のレユニオンは、脚が折れても命に問題が無ければ完走するという決意で挑戦し、完走しました。
結果は44位でしたが、輝かしい時間でした。感謝しかありません。
長年のもやもやとした思いを断ち切り、50歳に向けてのチャレンジのスタートを切ることができました。
2019年9月、50歳で再びUTMBに挑戦します。
年を経て体の変化を感じる日々ですが、前向きな気持ちで創造的にチャレンジしていきたいです。
2年後、自分がどんな形でUTMBを終えることができるか。
相当な壁にぶつかると思うけれど、ネガティブに考えるのは好きではないので、わくわくする気持ちでやっていきたいと思います。

取材を終えて

2019年にUTMBに挑戦する「NEVERプロジェクト」の発表をお聞きして、お会いしました。
これまでの実績やレースでの体験をお聞きしていると、私の中で超人のようなイメージが出来上がっていたのですが、10代20代に挫折の連続があったと聞き驚きました。
「役所勤め時代、日曜日の夕方が憂鬱で、翌日仕事だと思うと胃が痛くなっていた。でもトレイルランニングと出会ってからはそれもなくなった」というお話を聞いて、好きなことや情熱を注げるものの存在の大きさを感じました。
挑戦し続けるという強い思いがお話の中から伝わってきて、お話を聞けば聞くほど、魅力的な方でした。
2019年のUTMBへの挑戦は、映像も交えて随時ホームページで公開されていくそうなので、ぜひ見て、応援しましょう!

プロフィール

鏑木 毅(かぶらき・つよし)
プロトレイルランナー

2009年世界最高峰のウルトラトレイルレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(現UTMB、3カ国周回、走距離166km)」にて世界3位。
また、同年、全米最高峰のトレイルレース「ウエスタンステイツ100マイルズ」で準優勝など、世界レベルのトレイルランニングレースで常に上位入賞を果たしている。
2011年11月に観光庁スポーツ観光マイスターに任命される。
現在は競技者の傍ら、講演会、講習会、レースディレクターなど国内でのトレイルランニングの普及にも力を注ぐ。
アジア初の本格的100マイルトレイルレースであり、UTMBの世界初の姉妹レースであるウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)の大会実行委員長を務める。また自らがプロデュースしたトレイルレース「神流マウンテンラン&ウォーク」は2012年に過疎地域自立活性化優良事例として総務大臣賞を受賞、疲弊した山村地域の振興、地域に埋もれた古道の再生など地域を盛り上げるモデルケースとなっている。

◆オフィシャルホームページ https://www.trailrunningworld.jp/

◆NEVER特設サイト http://never.trailrunningworld.jp
NEVERエピソード1 MOVIE公開中!

◆著書Amazonページ http://amzn.to/2BpSXI0

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