丁稚奉公から社長の座?
意気揚々と帰国後の転落人生
預金残高15,002円、倒産危機
鯖専門の飲食店SABARをご存知だろうか?
このSABARは飲食業界の常識を覆すチャレンジを続け、成功している。
まず、提供する食事は全て鯖料理である。
そして、最初の1年間で3店舗オープンしたが、その資金調達の方法はなんとクラウドファンディングを活用された!(クラウドファンディング7割、3割は金融機関)
2017年11月現在、日本では14店舗、シンガポールに1店舗。
2021年迄に83(38の反対、逆サバ)店舗一気に展開するという。
この飲食業界の常識を覆す発想力と実行力はどこからやってくるのだろうか?
さあ…
株式会社鯖や(SABAYA CO,.LTD)
代表取締役 右田 孝宣様の登場です!
母の言葉が歯止めをかけた
自分とそっくりな双子の弟がいるんですが、二人で悪さばかりしてどうしようもないクソガキでした。
高校時代も遊んでばかりいたら1年で留年。
プライドが高い自分は鼻っ柱を折られ、ショックで部屋に閉じこもっていると、母がやってきて言うのです。
「のぶちゃん、行きたくなかったら学校に行かなくてもいいよ。でも、あなた達はずっと比べられて生きてきているんだから。のりちゃん(弟)が高校を卒業したら絶対に将来比べられるよ。その時、のぶちゃんは後悔すると思う。だからちゃんと考えてみて」と。
その光景はイメージできたので、高校は卒業すると決めました。
同級生が上の学年の教室に戻る姿がつらく、休憩時間は教室から出なくなりました。
同級生だった仲間の卒業式は、ずっといなくなって欲しいと思っていたのに寂しい気持ちもあり、涙が止まらず複雑な気持ちでした。
魚?19歳まで食べたこと無いし大っ嫌い
友だちが働いていたスーパーの鮮魚売場で人が足りないから来てくれと声がかかりました。
自分は大の魚嫌いで食べたこともないから務まらないと断ったものの、「顔を立ててくれ」と友達が言うから行くことに。
ある日、割烹料理屋に配達に行くと、大将が「賄いを食べていけ!」と言うんです。
魚は苦手と断っても「いいから食え」と言われ、カレイの煮付けを食べました。
それが衝撃的に美味しかったんです!!
実は母の料理は魚の臭みを最大限に引き出していたため、魚が苦手になっていたのです(笑)
丁稚奉公から社長の座?
スーパーで働いて4年経った頃、商社という業種を知り、日本と海外を行き来している姿に憧れました。
調べてみるとワーキングホリデーがあるのを知り、半年後にはオーストラリアにいました。
まず3ヶ月かけてオーストラリアを1周しました。
英語でコミュニケーションをとれるようになり街を歩いていると、回転寿司のお店に求人の張り紙が。
そのまま飛び込み、働かせて頂きました。
仕事はセントラルキッチンで切られた切り身をシャリにのせるだけの作業。
同僚にプロのラグビー選手がいたのですが、契約金だけでは生活できないからアルバイトをしていたのです。
夢を追いかけている姿を見て「俺はこんな事をするために来たのかな?」と思うようになったんです。
シドニーのフランチャイザーの社長がお店に来た時に「日本で魚を捌いていたので工場で雇ってくれないか」と直談判し、気に入られて本部に行く事になりました。
社長のビジネスセンスは抜群で、ここから僕の人生は好転しました。
鞄持ちをしながら物件調査、交渉、商品開発、養殖場運営。
2年くらい学び、26歳の時にメルボルン支店の社長の話をいただき、年収一千万円とパーマネントビザも保証されたのですが、日本でやり残した事があると思い辞めさせてもらいました。
意気揚々と帰国後の転落人生
完全に有頂天で帰国です(笑)
「君みたいに海外で結果を出している人は必ず成功する」と誘われ、17人に1台38万円のFAXを売り、友だちが電話に出なくなりました。
貯金も使い果たし、3年間も日本で待っていた彼女(現在の妻)からお昼ごはん代をもらう羽目に。
自分でクズだと思いましたね。
メルボルンの誘いを断らなければ、とも思いました。
そんな時に子どもができ、頑張ろうと転職したのが外資保険の営業マン。
だけど成績はビリから2番目。
次はNTTのマイライン契約の飛び込み営業。
月収3万5千円しかないのに、2人目の子どもができてしまったんです。
文句一つ言わない妻
妻は文句一つ言わないんです。
そんな妻に申し訳ない。
水産の技術と知識があるので、家の近くに出た空き物件で居酒屋を始めました。
開業資金は妻に借りました(笑)
妻も貴方が本気なら私も手伝うと、看護師を辞めて二人でスタートしたら、それが当たったんです。
魚料理がメインのお店だったのですが「鯖寿司」がすごく人気でした。
どうせやるなら楽しく!がモットー
妻が「あんたが作る料理で美味しいのは鯖だけや。鯖一本でやってみたら」と言うのです。あまりにもさば寿司を褒めてくれるので、自分もその気になって。
「鯖をモチーフにした“サバイク”で配達したら面白いかも」と妻がスケッチブックに絵を描くんです。
どうせやるなら楽しくやろう!面白くなかったら辞めよう!もしメディアに取り上げてくれたら事業としてやってみよう!とプレスリリースを送ると、ローカル新聞が取り上げてくれて、次に情報番組でも取り上げてくれたのです。
それならと「鯖や」を立ち上げ、居酒屋の中で鯖寿司のデリバリー事業をスタートしました。
預金残高15,002円、倒産危機
工場を持ったのですが、鯖寿司しか製造しない工場は損益分岐点が非常に高く、2013年2月に倒産の危機が来ました。
預金残高15,002円。
給料の支払いは500万円以上あるため、なんとかお金をかき集めました。
弟(副社長)から「お前がいると人が辞めるから、人事から手を引いて鯖だけみていてくれ」と言われ、人事から手を引き営業に専念しました。
すると3月にJR西日本の駅弁がスタート。4月に伊丹空港の空弁がスタート。5月にイズミヤさんの契約が決まり、売上が急激に伸びました。
クラウドファンディングとの出会い
倒産の危機の最中に仲間が「そろそろSABARをしたら」と言うんです。
飲食店は拡大しないと決めていたのですが、その発想に衝撃を受けました。
金融機関に行っても鯖1本ではムリだと全く相手にされません。
そんな時にクラウドファンドのミュージックセキュリティーズさんが大阪支店を出すので、豊中市から豊中を代表する4社を紹介され、それに我々が入っていた流れでクラウドファンディングと出逢いました。
これはPRウケもすると直感でわかりました。
最初に1年間で3店舗3500万円を集めると決め、結果半年で調達できました。
その後、鯖が刺さる業態を調査する為、あらゆる業態で9店舗作りました。
刺さったのは居酒屋でしたので、その他の店舗は閉めました。
酷い所は3000万円近くかけて3ヶ月で潰しました(笑)
勝ちパターンが分かったので、FCもスタートしました。
3月8日は鯖の日!
この日は「お疲れ鯖」とねぎらいの言葉をかけ、鯖を食べる日と制定。
大手企業さんも協力しやすいように「社団法人鯖の日協会」も立ち上げました。
我々は300以上の鯖のレシピを持っているので、色々な外食とコラボして鯖の普及活動をしていきます。
パイオニアになる為には、ライバルを倒すのではなく自分達の手でライバルを作る事が必要だと思っています。
マーケットが広がれば、マーケットリーダーになれるんです。
上場に向けて鯖の養殖事業もスタートしました。
鯖を通じて飲食業のSPA(製造小売)企業を目指していきます。
取材を終えて
右田さんはホント、アイデアマン!
PR会社を入れずここまでPRをされて来たとは驚き!
現事業はオーストラリアで経験したモノをそのまま日本で形にされているという。
数々の飲食店と鯖を絡めた料理でコラボし更には関東でも定着した「恵方巻き」文化の様に3月8日を鯖の日として制定し「おつかれ鯖」運動を普及しようとしている。
この活動は既に複数の大手企業からの応援約束も頂いている。
SABARは飲食店であるが右田社長の思考はこれまでの飲食店オーナーとは違う。
鯖の養殖にも着手し原材料を作り、商品を開発し、新たな商流も作り、更には鯖に関するグッズも面白おかしく手掛けている。
2021年迄に展開する83店舗は単なる飲食店ではなくお客様にプレゼンする新たな場になるという。
さらにこれからは投資型クラウドファンディングにもチャレンジするという。
でも何より右田社長を支え笑いのセンスも持ち合わせている奥様がスゴい!
プロフィール
右田 孝宣(みぎた・たかのぶ)
株式会社鯖や(SABAYA CO,.LTD) 代表取締役
◆鯖寿司(鯖すし)を食べるなら、とろさばを使用した【とろ鯖棒寿司】
http://www.torosaba.com/
◆SABR HP
http://sabar38.com/
◆SABR Facebook
https://www.facebook.com/sabar38/