日本で初めて「サウンドクリエーター」というポジションを確立したスゴい人!

希望勤務地は「SONYスタジオ」

電気が綺麗

他(他人)にないものを武器にする

奥行き、陰陽、音の流れ、気の流れ、洗練された聴覚を得るなど、細部にこだわりを持つ、都心のクールなスタジオ。
そのクールさをご本人も持ち合わせている音の職人が、本日登場するスゴい人である。
彼は電気グルーヴを始め数々のトップアーティストの音を作り上げてきた。
現在はAKB48関連の、乃木坂46、欅坂46、も含めた、約9割の楽曲を手がけている。
アシスタント時代の最初の2年間だけは苦しかったけれど、と話す本日のスゴい人。
彼の音に対するこだわりはどのように育ってきたのだろうか?

さあ…
ZeeQ Co.,LTD.
代表取締役社長 松本 靖雄様の登場です!

楽器に恵まれた幼少時代

父が楽器好きで、幼少期から色々な楽器を触りました。
4歳からエレクトーンを始め、14歳からドラム、それ以外にもクラシックギター、トランペット、アルトサックスなどに触れました。
小さな頃から音楽や楽器は生活の一部として存在していましたね。
ドラムは楽器自体が非常に魅力的でカッコ良かったので、自分でやりたいと思って始めたんです。
今考えると、その頃の経験が現在とても有意義なものとして活きています。
楽器は出てくる音もそうですが、全てがクリエイティブな感じがするんですよね。
それぞれの特性が突き詰められた1つの芸術品としても非常に魅力的で、洗練された感じがビジュアル的にも美しい。
レコーディングエンジニアは色々な楽器の録音をします。
様々な楽器を経験することで、その楽器がどこから一番響いてくるかがわかるので、当時の恵まれた環境に感謝しています。

音楽の道に進むきっかけ

幼少期から将来は建築家になりたいと思っていました。
父の夢が建築家でしたが叶わず、自分が父の思いを叶えようと思ったのです。
しかし、中学でバンドを始めて音楽が面白くなり、高校でもずっとバンドをやり、ある時からプロデューサーになりたいという夢へ変わっていきました。
プロデューサーをやるために楽器はそこそこ触った、次に何が足りないかと考えた時、技術的な部分、機械的な知識が足りないのでそれを究めよう!と思ったのが高校3年生でした。
大学受験も考えました。
でも調べた結果、大学卒でその仕事に就いた人はほぼいませんでした。
当時聞いていた音楽のほとんどがSONY信濃町スタジオと書いてあり、とても興味を持ちました。
とにかくSONYに行きたい!と調査を重ねてSONYに実績がある専門学校に進みました。

希望勤務地は「SONYスタジオ」

専門学校に入るなり、生徒全員が調書を書かされました。
その中に希望勤務地という欄があり、生徒のほとんどは東京…大阪…などと地名を書いていました。
しかし私が書いた希望勤務地は「SONYスタジオ」。
相当インパクトがあったようで、SONYのアルバイト募集が来た時に担任の先生が真っ先に思い出してくれて、SONYで電話番のアルバイトをすることになりました。
夜はリハーサルスタジオのお手伝い。
その後だんだんスタジオの仕事に入っていきました。
その当時は今と違って仕事をしていれば卒業できたので、2年目からはずっとSONYの現場で実績を積んで卒業に至りました。

エンジニアという仕事

今までプレイヤーとして経験したものではない醍醐味、プレイヤーからの迫力や最高の演奏をいかに記録として残してあげるべきかを考えるようになりました。
楽器を操るプレイヤーは自分を主張する立場であり、確実に主役です。
一方で、録音をする側の私は、それをいかにうまく受け止められるか、という裏方です。その裏方的な謙虚な考え方は、今でも非常に役に立っています。
アルバイトをしたのちに契約社員になり、その後フリーになるわけですが、契約社員の時はかなりハードでした。
近年、残業やオーバーワークが問題になっていますが、当時はその比ではない程の残業がありました。
でも最高値を目指す者としては真っ向から受け止め、いかに自分を追い込むか、極限状態に自分を追い込んだ時に何が出てくるかを苦しい中でも追求していました。

サウンド=デッサン

アーティストが生み出す楽曲は千差万別です。
自由に勢いで作る人、イメージを組み立てて作る人、そのどのような楽曲も最大限の魅力を引き出してあげることに私は徹します。
その中で心がけていることは、目に浮かぶような音を作ることです。
まず最初に曲を聴いた印象を頭に景色で思い浮かべるようにしています。
最終的にその景色の色づけを音で表現していく。
音は非常に評価されにくいんです。
プロモーションビデオは、誰が監督をしたとか、振付師は誰がやったとか、非常に評価されやすいんです、目に見えるものなので。
私の音を聴いた方が、映画を見ていたようだと何度か言ってくださったことがあるのですが、まさにそこが目指しているところであります。

電気が綺麗な時間に仕事をする

私は30年間一度も仕事に穴を開けたことがありません。
気をつけているのは食事、体調管理、基本的に早く起きること。
代わりのいない仕事なので健康管理は特に気をつけています。
ここ20年、私は午前7時くらいから始めてお昼くらいには終わり、午後はフリーというスタイルで仕事をしています。
朝にシフトチェンジしたのは、朝は空気が澄んでいるせいか、確実に脳が冴えている感覚があります。
それから、電気が綺麗だという印象。
夜電気が蓄積されて、まだみんなが電気をあまり使っていない朝、綺麗な状態で電気を使い始められるという風に考えています。
それ以外でも、都心にあまり人がいないお正月に仕事をやったことがあって、その時の音が非常に良かったという印象もあります。
人がまだ活動していない時間帯にやるっていうのは意味があるな、というのが朝に仕事をするという理由の一つです。
技術面だけでなく、全てにおいて1つ1つこだわって行くことによって積み上げた感覚もいい音に通じると思っています。

人にないものを武器にする

自分のスタジオを持っていない時には貸しスタジオを転々として作業をしていました。
しかし、現場で完璧に仕上げたつもりでも、持ち帰って別のスタジオで作業すると基準や軸がずれてしまいます。
それを解消するべく早々に自分のスタジオを作りました。
空間、気の流れ、電気の取り口にまでこだわり、常に良い状態で音を作る。
一般的に平均8時間かけてやる作業を、私は基準や軸が出来上がっているところからスタートするので大体半分くらいの時間で仕上げることができます。
貸しスタジオではできない強みを私は持っています。
他(他人)にないものを自分の武器にするということは全てに通じることだと思います。

新しいスタイルで未来へ

外国では主流ですが、今、コーライティングというスタイルでも音楽を製作しています。
本来、楽曲制作というのは作詞家、作曲家、アレンジャーなどが別々に携わっていく形が多いんですが、
コーライティングでは、作詞家、作曲家、アレンジャーなどがそれぞれの得意分野を活かし、共同で楽曲作りをすることで化学反応を起こし、
よりクオリティーの高い作品を生み出します。
もともと私はプロデュース・エンジニアを目指していたので、それに一歩近づくために、今そういうことをしている最中です。

取材を終えて

松本さんは自らが楽器を弾き、デジタルだけでなくアナログの音も沢山取り扱ってきた。
編集ソフトが発達することは素晴らしい事だが、人間の耳はアナログであるため、きっとアナログの良さもデジタルの良さも含めどれだけ幅広い音と触れてきたかの経験が織りなす世界があるのだと思った。
今でも毎年200曲以上手掛けているという。
それだけ多くの音に触れ、経験も積み重ね続け、どこのコンセントからどの距離で電気を引き込むかなど細部にまで拘っているクリエーターは他にいるのだろうか。
常に追求し続けるプロの姿は、容姿にも自然と滲み出るカッコよさがあった。

プロフィール

松本 靖雄(まつもと・やすお)
ZeeQ Co.,LTD. 代表取締役社長

年間200曲以上もの楽曲をSOUND PRODUCER、Co-PRODUCER、MIX ENGINEER、RECORDING ENGINEER、MASTERING ENGINEER等、音に関する様々なポジションで参加。常に、サウンド面のあらゆる可能性と深遠かつ広大なサウンドスペースへの探究をし続けている。
そして日本で初めて、 SOUND CREATORというポジション(ジャンル)を確立する。

◆CAREER
90年代 ファイルレコード、メジャーフォースレーベルの多数の作品に参加し、日本のHip Hopの創世記を支える。
93年 電気グルーヴへの参加を機にテクノ、ハウスを中心に、坂本龍一、テイトウワとも仕事をする。また、その頃からDub、REMIX、レゲエにも踏み込んでさらにジャンルを広げる。更にはバンドへもその真価を発揮し、96年頃からはヒットチャートを賑わす多くの作品に参加する。その後、JAZZ、FUSIONをも手掛ける。
現在は、AKB48関連全て、乃木坂46、欅坂46など。

作品の詳細はHPをご確認下さい。
◆ホームページ http://www.zeeq.jp/

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