映画『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』を成功に導いた脚本家のスゴい人!

古本屋での運命の出会い

映画の成功は読者と共に

脚本家を目指す人へ

本日登場するのは脚本家と小説家として活躍するスゴい人。
脚本家として初めて手がけた映画『連弾』は城戸賞を受賞。
小説家としてのデビュー作『旗本金融道(一) 銭が情けの新次郎』は歴史時代作家クラブ新人賞を受賞する。脚本と小説のWで新人賞を獲った。
マンガ『NARUTO-ナルト-』の劇場版を手がけると興行収入は初めて20億円を突破。
彼の作品を目の当たりにすると、その世界観へどんどんのめり込んでいくだろう。
かつては、ものを書く仕事にはあまり興味がなかったが、一冊の本との出会いが人生を大きく変えた。

さあ…
脚本家/小説家
経塚丸雄様の登場です!

目指すは弱い人の立場に立つ法律家…だった

中央大学法学部時代は、弁護士を本気で目指していました。
卒業後、体調を崩し病院に行くと結核だと診断されたのです。
それも抗生物質に強い結核菌でした。
「今は栄養状態もいいし、死ぬことはないから心配はない」と告げられたのですが、卒業して3年経過していた事もあり、仮に司法試験に合格して弁護士になったとしても、全国を飛び回るには体力もいるので、自分の身体では弁護士業は厳しいと思ってしまったのです。
病気をきっかけに弁護士を諦め、司法書士なら自宅でもできる仕事だからと司法書士試験の勉強を始めたのですが、体調のこともあり、司法試験ほど熱が入りませんでした。

古本屋での運命の出会い

父から「病気療養の間に、本を読んで知識を増やしておけ」と毎月書籍購入用の別枠小遣い(1万円)をもらっていました。
なるべく多くの本を読みたかったので、安い古本屋に通い、興味がある本をノンジャンルで購入していました。
そんなある日、自宅に帰ると全く入れた覚えのない『シナリオ構造論』という本が混じっていたのです。
当時、作家になろうとは考えた事もなく、しかもその本は古本としては安くなかったので、間違ってカゴに入れたことを悔やんだほどでした。
ところが、読んでみると非常に理論的に書かれており、創作というのは特殊な人が特殊な力で書いている世界だと思っていましたが、この通りにやれば自分でも書けるかもしれないと思い、脚本を書き始めました。

脚本家を目指して

試験勉強の傍ら新たな夢にチャレンジしているうちに、公募展に出すようになりました。
最初から一次審査にはほとんど落ちませんでした。
二次審査を通過し、雑誌に小さく名前が載った時はすごく嬉しかったです。
脚本を書き始めて2年くらいで最終選考に残るようになり、脚本家の道一本に絞りました。そこで、シナリオ専門学校の授業を聴講しに行ったのですが、生徒が理屈より自分の作品に対する思い入れという感情で講師と口論している姿をみて、ここに自分の居場所はないと思いました。授業料がすごく高かったのもあります。
基礎理論は日本のシナリオ本、実用的な知識はアメリカのシナリオ本で学び、実際に執筆することで力を付けて行きました。

映画の成功は読者と共に

『NARUTO-ナルト-』はすごいコンテンツにもかかわらず、劇場版だけはあまり結果が伴っていなかったのです。
でも連載が終わるから「何とかもう一花」とスタッフ一同、執念を燃やしていました。
これまでとテイストの違う人を抜擢しようということで、自分が呼ばれることに。
メンバーの作品に対する思い入れが強く、現場はいつもピリピリしていました。
最終回でしたので読者の立場になり、これまで解決されていない問題を上げて、最終的に主人公のナルトは誰と結婚するか!?にテーマを絞りました。
本編と離れすぎると、映画を観た読者は、これはナルトじゃない!と思ってしまうのです。
THE LASTという事もありこのテーマが一番読者の心に響いたのでしょう。
興行収入は20億円で大成功となりました。
後に映画のシナリオのノベライズを書かないかと声をかけられて、11万部の売り上げに成功。
もしかしたら、自分で小説を書いて自分で脚本を書いたら、一人でメディアミックス(小説からの映像化)ができるのではと思ったのです。
そこで、作家のマネジメントの会社に手紙を出して自分を売り込んだ結果、採用されて小説を書くことになりました。

小説家デビュー

小説は素人ということで、出版社は腕のある編集者さんをつけてくれました。
小説はこうやって書くのかと、初歩の初歩がわかってとても勉強になりました。
先生(編集者)には、今でも恩義を感じています。
内容はちょっと特殊なものを書きたいという思いがありました。
時代小説は、殺人があって謎解きをするようなオーソドックスな形が多く、自分みたいな素人がいきなりやるのはどうかと思い、内容をひねることにしたのです。
ただ、時代小説の語彙が決定的に少ないことに苦労しました。
古風な語彙を使うことによって登場人物の所作や描写に雰囲気が出るのです。
日々、語彙を増やさないといけないので、類語辞典は今も手放せません。

小説家としても認められる

小説をよく読まれる方から「これは所詮シナリオライターが書いた小説だね」という評価はされたくないというプレッシャーが、かなりありました。
そんな中、歴史時代作家クラブの新人賞をもらえた事は、同業者として認めてくれた事でもあるので、この受賞は本当の意味で嬉しかったです。
小説家としても認めて頂いたようなものです。
『シナリオ構造論』はボロボロになるぐらい読んだので、今は2冊目です。
創作地頭を作りたいのなら日本のシナリオ解説本。
地頭は出来上がって、実際に書くときのコツが欲しいとなったら、アメリカのシナリオ本をオススメします。

脚本家、小説家としてのこれから

これからも本を出し続けて、それが実際にドラマや映画になったらと思います。
当初は自分の小説は自分で脚本を書きたいと思っていましたが、最近は違います。
自分が書いた小説を「これはこういう脚本の方が良い」と別な感性を持った人に任せ、新たな一面も見たいと思っています。
また今年の10月には別の出版社さんから声をかけて頂き、新たなシリーズを書き始めます。
脚本の仕事をしながら小説を書くことで頭の筋肉は鍛えられてきました。
多角的な仕事に着手できることは、有り難いことです。
これからも前のめりでペンを走らせ続けていきます。

取材を終えて・・・

経塚さんは、常に5本ぐらいの仕事を同時進行している。
息抜きはどの様にされているか質問すると、煮詰まったら別の仕事に向かい、ペンを持つ事だという。
当たり前だが、全て違う仕事なので世界観も違えば、脚本と小説でアプローチも全く違う。
この作業を連日やり続けている経塚さんの頭脳はこれからも更に鍛えられ、生み出される作品が非常に楽しみである。
正直に言うと、自分はナルトを読んだことがない。
ただ、経塚さんの取材を通じ、作品を観てみたいと思った。
ちなみに映画と書き下ろし本どちらを先に見たほうが良いか聞いた所、書き下ろし本からがお勧めらしい。
その場で購入し、既に手元に届いたのでこれからナルトの世界に浸ってみようと思う。

プロフィール

経塚 丸雄(きょうづか・まるお)

中央大学法学部卒。
2001年、映画「連弾」にて第25回城戸賞に入選し、脚本家デビュー。
「鴨川ホルモー」「雲の学校」「THE LAST‐NARUTO THE MOVIE‐」などの作品を担当。
時代小説『旗本金融道』シリーズ(双葉文庫)で小説家デビュー。
2017年、『旗本金融道(一) 銭が情けの新次郎』で第6回歴史時代作家クラブ新人賞を受賞。

◆著書
THE LAST –NARUTO THE MOVIE- http://amzn.to/2w4R7dL
銭が情けの新次郎—旗本金融道(1) http://amzn.to/2wkBdeP
維新の羆撃ち http://amzn.to/2w5pYqX

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