
くず餅というお菓子を知っていますか?色は乳白色で、ぷるんとした独特の食感がある。実は、このくず餅、1個作るのに約450日かかる。そして、賞味期限はたった2日。江戸時代、十一代将軍徳川家斉の頃に先祖が創業したくず餅屋を平成の現在、人生のすべてを賭けて引き継ぐ男。日本人の味を守り続ける老舗和菓子屋。さあ・・・船橋屋渡辺雅司様の登場です!「くず餅ひと筋真っ直ぐに」祖父も親父も養子。私が長男で生まれました。しかし、家業を継げとは一言も言われませんでした。自分の生きる道を決められた家で生まれた子供は、ある意味普通ではない。だから出来るだけ家業から離した環境で育てようと親は考えたのでしょう。私は老舗を守り続けている家庭にありがちな生活とは一切無縁でした。そんな私の就職先はヒト・モノ・カネカネは血液だからお金の流れを知る事は、経済を知る事に繋がるだろうと銀行へ。まさにバブル時代。カネで身を滅ぼす人達を沢山見てきました。カネで一喜一憂する人も多く見て嫌気がさし、日本の原点でもあるモノ作りを知りたく29歳で自ら跡継ぎを決意。当時の職人さんは昼からマージャン夕方からお酒。取引業者は競争が無い為、高い値段で卸す。めちゃくちゃでした。銀行時代の取引先から相見積をとり、変動費を落とし捻出した利益で新しい店舗に投資。一方で職人さん一人一人にこういう会社にしたいと理念を伝え続けました。もちろん辞めていく人も沢山います。新卒の採用もはじめ、理念にあう人しか採用しない。逆に理念に反する人は自然と去っていきました。和菓子業界では初めてISOに取り組みました。何が標準化だと周りからは猛反対を喰らいましたが、私はそんな事の為にISOに取り組んだのではなく、組織の求心力を作る為だったんです。それはお互いに支援し合うことで、通常の数倍もの力がつくって事をわかってもらいたかったのです。くず餅は450日かけて作り、もつのは2日。保存料を入れたりして賞味期限を延ばすことは出来ます。だけど我々は江戸の粋を貫くのです。日本人として武士道の中にある潔さ、そしてはかなさを追求します。社員との間には一切の隠し事は無く、誠実な組織を創り上げてます。