今週のスゴい人、は、
『FAINAL FANTASY』シリーズをはじめ、多数の名曲を生み出してきたスゴい人!株式会社DOG EAR RECORDS 植松伸夫様です。
令和リニューアル記念4日連続インタビュー
DAY3
現役大学生インターンとの特別対談
作曲家を目指した経緯について
今日は、植松信夫さんと、学生インターン生の対談をお届けします。
学生インターン(以下「学生」):本日は貴重なお時間をありがとうございます。
植松氏:よろしくお願いします。
学生:音楽を聴くことに興味をもち始めたのはいつですか?
植松氏:小学校4、5年生くらいの時ですね。家にレコードがあったんです。黒い円盤に針を落としたら音楽が流れるっていうのが面白くて、それで聞いているうちにだんだん音楽が好きになっていきました。
学生:機械の方にまず興味を持ったということですか?
植松氏:そうですね。いまだにレコード使うことあるけど、よくあんな細いところに音はめ込んだなぁって感心しちゃうんだよね。(笑)
学生:確かに不思議です(笑)音楽を仕事にしたいと思い始めたのはいつですか?
植松氏:中学校に入って、楽器をいじるようになってからですね。それまではこれと言ってやりたいことも無かったので、公務員とか学校の先生になるかなぁっていう感じだったね。
学生:なぜ学校の先生ですか?
植松氏:今の学校の先生は忙しいかもしれないけど、当時の教師って春、夏、冬にしっかり休みがあったんだよ。公務員だからお金の心配もないし、こりゃあいいなぁって思ってね。(笑)
学生:なるほど。(笑)
植松氏:公務員とかしながら好きなことやる将来でもいいかなって思ってたんだよ。けど音楽に感動を覚えてからは、レコード屋の店員でいいから、音楽業界のすそ野でいいから、音楽に1日中接していられる仕事をしたいなって思うようになりましたね。
学生:音楽に関わっていきたいということで、就活をされなかったとお聞きしたのですが、当時から音楽で成功できる自信や確信みたいなものがあったんですか?
植松氏:いや、成功できる確信なんてなかったね。けど、僕が音楽から与えてもらった感動があまりに大きすぎて、「これは一生をささげる価値があるな」とは思っていたね。
学生:まだ僕はそこまで好きだと思えるものに出会えてないです。
植松氏:でしょ~!こんな好きなものに出会えて、僕はほんとラッキーだったと思うよ。だって、イギリスやアメリカのミュージシャンの音楽を聴いて、日本人が涙を流すことがあるんだよ? 言葉も文化も宗教観も全然違うのに、同じ音楽を聴いて涙を流せるのはすごいことだと思わない? こういう音楽への感動が、僕の活動の原動力になっているんだよね。
学生:やはり音楽に対する感動が、創作活動の原点になっているんですね。
植松氏:うーん、そもそも作曲って、創作活動とはちょっと違う気がするんだよね。それまでなかったものを0から作ってるというよりは、今まで聞いてきた音楽への感動を、自分の言葉で次の世代に伝えなおしているっていう感じなんだよね。
学生:ご自身のこともクリエイターとは思っていないのですか?
植松氏:全然思ってないよ。僕はモーツァルトとかビートルズとかジャズとか民族音楽とか、いろんな音楽への感動をみんなに伝えたいだけなんだよ。もちろん自分の言葉で、だけどね。
好きなものを見つけるためには
学生:これといって好きなものがないという学生が多くいるのですが、なにかアドバイスをお願いします。
植松氏:結局、自分が興味持ったものを自分で掘り下げていくしかないよね。これを好きな俺ってどうみられるんだろうとか、世の中では何が流行ってるとか、周りの目は気にせずにね。
学生:ちょっと面白そうだと思ったと感じたらやってみるのが大事ということですかね。
植松氏:それはそうだよ。行動しないと変わらないからね。僕らの年になってもそうなんだけど、結局今週やったことなんて、先週やったことと変わらないんだよ。何時に起きて、このくらい仕事して、このくらい呑んで、何時に寝るっていうね。人ってほっとくと習慣になっていることしかやらないから、変わりたいなら意識的になにか習慣を変えるとか、習慣に食い込むような強い意志を持つということが大事になってくるね。
今までで一番の失敗は?
学生:今までしてきたことの中で、一番失敗したと思うことは何ですか?
植松氏:去年体調崩したり、こないだ還暦迎えたり、令和になったり、色々考えさせられる節目なんだけど、その時に思った1番やっちまったなぁっていうのは、今まで好きなように生きてきたつもりだったのに、気づけば自分自身の判断基準に他人が入り込んでいたっていうことかな。例えば「FFの作曲家として見られているから安心」とか、「もっとコンサートの回数を増やしていろんな人に見てもらわなきゃならない」とかね。
学生:作曲に関しても周りの目に影響されたなって感じますか?
植松氏:
感じるね。いつしかゲーム音楽っていうのはオーケストラみたいな音楽を作らないといけないって思いこんでるとかね。そんなわけないのに。それがこれまでウケてきたからって自分で自分の枠を狭めてしまっていたけど、やっぱそれがしんどかったんだね。人にウケなきゃダメだ、稼がなきゃダメだって何年かやっているうちに、結局そういう無理がたたって体調崩したしね。でもそういうのを経験して、人の目なんて気にしてちゃダメだ、自分はもっと自由でいいんだっていうことに気づけたのはよかったね。
学生:今後はご自身のやりたいことをやっていくんですか?
植松氏:基本的にはそうだね。まあ社会で生きていく以上多少は我慢も必要だけど、我慢の割合を変えていこうかなとは思っているよ。
もし学生に戻れたら?
学生:もし学生時代に戻れるとしたら、何をしたいですか?
植松氏:いやー遊びたいね。(笑) ずーっと音楽しかやってこなかったから、合コンも、合コンに行ってるやつらが好きだったテニスもしたことないからね。しかもバイト嫌いだったからさ、お金もなかったんだよ。
学生:なるほど(笑)
植松氏:バイトするくらいだったら作曲していようとか、友達とバンド練習しようとか。そういうタイプだったからね。ずっと音楽漬けで遊びはしなかったですね。でも結局、何も後悔はないですよ。もし学生時代に戻っても、また音楽やれたら幸せですね。
学生:中学生の時、詩人にもなりたかったという記事を以前拝見したのですが、もし学生に戻れるとしたらそっちの道に進みたいという思いは無いですか?
植松氏:それは無いね。確かに小中学校くらいの時は詩を作ってたけど、未だに思ったこととかをノートの端々にメモとったりしてるからね。詩として完成させてないだけで、やってることは変わらないんだよね。
学生:世に出すってことは考えていないんですか?
植松氏:去年までは世に出すことも考えてたんだけどね。去年体壊してから、別に人に認められる必要もないし、何で人に認められなきゃいけないんだっけって思うようになって、今はそんな強く詩を完成させたいとは思わないね。
学生:やはり昨年が転機の年だったんですね。
植松氏:本当にそうだね。
最後に
学生:最後に、今の学生は何に時間とお金を費やすべきだと思いますか?
植松氏:やりたいことやってればいいんだよ、やりたくないことをやるから不満が出てくるんだからさ。子供がスマホばっかりイジっていることに大人はいろいろ言うけどさ、おれは別にいいと思うけどなぁ。ま、親の金でやるのはよくないか。(笑)
学生:そうですね。(笑)
植松氏:スマホだってなんだって、ずーっとやっていくうちに自分の進むべき道とかなにか発見するかもしれないしね。とにかく、徹底的に自分がやりたいことをやり、方向性をちゃんと見据えることが、自分の好きなものを見つける近道だからね。これが面白いよ、こんなの流行ってるよっていう情報が多くて、なかなか方向性が定まらなくてモヤモヤしてるかもしれないけど、そこから一歩掻い潜らないと。この小説面白いなとか、この絵画はどういう思いで描かれたんだろうとか、自分なりに掘り下げていかないとそのもやもやからは出られないよ。
学生:自分のやりたいことを見つけるには、他人の目を気にすることなく、興味を持ったことを自分で掘り下げていくのが大事、ということですね。本日はありがとうございました。
インタビュー:アレス ライター:Wahsy 学生:阿部颯樹(上智大学4年)
<4日目へ続く>
◆プロフィール:
植松 伸夫(うえまつ のぶお) 作曲家
有限会社スマイルプリーズ代表
株式会社ドッグイヤー・レコーズ代表取締役会長
「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめ、数多くのゲーム音楽を手がける。
「ファイナルファンタジー VIII」のテーマ曲「Eyes On Me」は1999年度 第14回日本ゴールドディスク大賞でゲーム音楽としては初の快挙となる「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。海外での評判も高く、「Time」誌の"Time 100: The Next Wave - Music"や「Newsweek」誌"世界が尊敬する日本人100人"の一人に選出される。
近年では日本国内をはじめ世界各国でオーケストラコンサートや自身のバンド"EARTHBOUND PAPAS"によるライブイベントを開催。
◆植松伸夫公式ファンクラブ「中位のおっさん」
◆株式会社DOG EAR RECORDS