深い情熱と探究心で世界のラーメン好きとラーメン業界に貢献するスゴい人!藤野弘行様▶DAY1

全国に約18,000店以上あるとされるラーメン店。昼どき、有名店には長蛇の列ができる、もはや国民食と言ってもいい存在だが、インバウンド需要も急速に高まっている。そんなラーメンブームに一役買っているのが、ラーメン愛が高じ、日本唯一のインバウンドラーメンコンサルタントとして活躍している藤野弘行氏だ。サラリーマンとの二足のわらじを履く多忙生活ながら、ラーメンに対する深い情熱と探究心で、人気番組「マツコの知らない世界」にも複数回出演するなど、多方面から注目されている同氏。その原動力を探った。

一杯の丼に世界がある

今日の見どころ

◆日本唯一の“インバウンドラーメンコンサルタント”という新しい職業の確立

◆ラーメンを通じた“国際交流”と“文化理解”の架け橋

◆ラーメン愛を貫く“情熱と探究心”の生き方

動画を観る

DAY2

日本唯一のインバウンドラーメンコンサルタント

―まずは現在の活動からお聞かせください。

はい、現在、私は通信事業会社のエンジニアとして働くのと並行して、飲食店や製麺所、インバウンド向けのプロジェクトに関するラーメンのコンサルタントや、ラーメンに関する執筆活動を行っています。元々インスタグラムにて、東京に訪れるインバウンド向けにラーメン店やラーメンツアーのコンシェルジュを行っていたのですが、正式にコンサルタントの仕事が来るようになったきっかけは、「マツコの知らない世界」(TBS系)に出演したことでした。番組には二度出演していて、1回目のテーマは「塩ラーメンの世界」(202435日放送)。2回目のテーマは「ラーメン最強麺の世界」(2025422日の放送)というテーマで番組作りに挑戦しました。これらの番組出演をきっかけにレストランダイニングから商品開発の相談や、製麺所から「麺の配合を変えてみたので食べてほしい」と連絡があったんです。そのほか、新店舗向けのPR活動や、お取り寄せ麺を自分で調理して食べて感想を書くといった商品のレビューなどの依頼も受けています。

取材時にて

インバウンドラーメンコンサルティングの実際

―活動が実に多彩ですね。コンサルは具体的にどのようになさっているのでしょうか。

藤野さんのインスタ

インバウンドラーメンコンサルタントとしては、現在、各社の旅行事業プロジェクトのサポートに入らせていただいています。海外からお越しになる方に、どういったラーメンの体験をパッケージとして届けられるのか、様々な切り口や、お越しになる方の属性などを踏まえ、その体験設計を行っています。例えば、海外から来られる方にはまず下記のような質問を行います。

 

【質問内容(例)】
・居住国都市:どこの国のどの都市からお越しになるのか
・来訪者属性:友人とくるのか、家族でお越しになるのか、小さなお子さんもいるのか
・好みや制限:苦手な食材やアレルギー、宗教上の食の制限の有無
・時間の猶予:滞在時間はどのくらいなのか、前後の予定など(行列は大丈夫か)

まず味に関しては、お越しになる方の好み、苦手な食材等を確認し、母国の食文化の味わいになるべく近いテイストに寄せる。またはその都市のラーメン屋さんのメニューを分析し、レコメンドする味を決めます。その後、来訪者の属性から、カウンター席、テーブル席のレコメンド、行列に並ぶことは可能か、長時間並ぶ場合、来訪する季節の気候は大丈夫か、並びの少ないおすすめの時間帯などを考慮に入れて、お店の候補をピックアップします。東京ですと、カウンター席のみの店が多く、お子様連れの方向けにテーブル席のある店を選ぶことが難しい。また日本人と違い、行列に並ぶ習慣があまりないため、「待ち時間の少ない名店」という理想を何とか実現できないか。この辺りの葛藤と検討がとても面白く、チャレンジングな部分です。インバウンドの方をお店にアテンドする時には、それとなく「なぜその店を選んだのか?」、その理由をストーリーとして伝えると、とても喜んでくれます。例えば、来訪者の自国のポピュラーな食材を活用した味わいや、自国にはない味で、次のステップとして是非食べて欲しいラーメンの提案、小さな子供でも食べやすい味、優しい接客のお店を選ぶなど、相手の状況や食文化なども含め、「誰かのためのラーメン」という部分を意識しながら、お店を食べ歩いています。

ラーメンコンサルタントとして大切にしていること

―情報のストックがカギになりそうですね。何か日常生活で心掛けられていることはありますか。

 

現在は、毎日インスタグラムに一時間ほどかけて投稿しています。情報を発信する上で、情報の正確さなどの裏取りも必要で、しっかり時間をかけています。情報を集めることもそうですが、その中にある「特別な体験や価値」に気づけるか、その感度が大切だと思っています。また仕事を終えた夜10時過ぎからは、小麦をこねて麺を打ったり、料理をしていることも多いです。コンサルタントを始めてからは、どうしても作り手側の料理に対するこだわりやチャレンジ部分も丁寧に伝えたいと思っており、自分でも料理を行い、より多くの失敗や素材の勉強など、経験を重ねることが大事だと思っています。またどうしてもラーメンを食べ歩くと、カロリーや塩分が多くなりますから、自らが健康体でいられるように日常の食事も気を付けています。毎日体重の増減を確認しながら、自宅では大根のステーキや玉葱のスープなど、野菜を中心にカロリーを抑えたものを食べるように心がけています。あとはカロリー消費のために、一日平均15000歩から2万歩ぐらいを目指して歩いており、特に一日に67杯など、集中して食べ歩く時は、一日に4万歩近く歩くこともあります。

 

インスタグラムによる英語での発信が転機に

―ラーメン愛好家は数多くいますが、藤野さんが発信する情報の濃さは特筆モノです。

コンサルタントや商品のレビューといった仕事が来るまでは、本当に純粋にただラーメンが好きで、食べ歩いていました。転機になったのはインスタグラムで、2017年頃から始めたんです。そのとき、どういったラーメンコンテンツにするかを悩んでいて、インスタグラムは世界に発信できるし、ちょうど仕事で英語の勉強をしていたこともあり、ラーメンの感想を英語で書いてみようかなと思って書き始めたんです。また、始めた当時、「ニューヨークでとんこつラーメンが大行列」というニュースが報じられて、間違いなくインバウンドでラーメンを食べに来る外国人が増えると思ったんですね。それからラーメンを食べたら、インスタグラムに日本語と英語で感想を書く。すると、海外の方から連絡がたくさん来るようになりました。ときには、海外のシェフから材料などの細かい質問が来ることも。そこで、材料も投稿に載せることにしました。材料は食べながらメモしていくんですが、わからないときはお店の店長にヒアリングもします。すると、今度は海外の方から、「今度、東京・大阪・京都に行くので、おすすめのラーメン店を教えてほしい」といったリクエストも来るようになったので、いくつかピックアップして教えてあげたりと、ホテルのツアーコンシェルジュのような感じですね。初めは全部無償でやっていました。あるときは、アテンドしてほしいというリクエストも来たので、ラーメンを一緒に食べて写真も撮ってあげたり。そのようなことを続けていたら、テレビ局から番組への出演依頼をいただいたんです。

 

国別コンシェルジュの大切さ 

―あるラーメン店での出来事が大きな変化点になったと聞きました。

藤野さんオリジナルのラーメンマッピング表

新宿のあるラーメン店に行った時に、ラーメンを一口だけ食べて残して帰ってしまう外国人を何度か見たんです。わざわざ食べに来たのに口に合わなかったんだなと思って。普通に考えれば、国や都市によっても食文化が違いますよね。そこで例えば、「おすすめのお店を教えてほしい」とのリクエストがあったら、その国の食文化を徹底して調べて、その人に合うラーメンをおすすめするようになりました。問い合わせは世界各国から来ます。韓国からの観光客なら、例えば辛い味やスパイスが合うだろうとか、タイなら魚介系がいいかもしれない、でも、欧米は違うとか。そういう国ごとに合わせるラーメンマッピング表を自分で作成しました。当時ラーメン業界でも、そのような国別のコンシェルジュをやっている人は少なかったみたいで、そこがすごく受けたのかなと思っています。外国の方が来日する際は、東京から京都・大阪まで観光して帰る方が多いのですが、ホテル代や新幹線代とは別に食費に相当な額を使っていたりします。そして、その中にラーメンを入れてほしいっていうオーダーが来ることも。または来日したらまずはラーメン店に行きたいと。日本で訪問する最初の飲食店がラーメン店だったりするんですよ。いうなれば、その時の印象が日本の顔になる。だから最近は美味しいのはもちろん、接客が素晴らしいお店も重要視しています。そんな風に日本を客観的に見られるようになったのも、ラーメンのおかげかもしれません。

1回のファミレスが嬉しかった小中学生時代

―ラーメンにハマるきっかけは何だったのでしょうか。

1994年4月に新横浜に「ラーメン博物館」ができたことですね。15歳、高校生の時です。そこで初めて食べたラーメンが博多とんこつの人気店「一風堂」で、同店の関東一号店だったんです。それが、最初の感動ポイントでした。クリーミーな本格豚骨に、歯応えのある極細麺、初めての替え玉の嬉しさなど、どれもが新しい体験で、子供ながら、本当に心から美味しいと思いました。当時は群馬県に住んでいたんですが、小中学生の頃は旅行に行く機会もあまりなくて、外食も、せいぜい近所のファミレスに月1回行くことが家族のご馳走でした。もっとも、当時のラーメン店は頑固親父がいて、床も油で滑る店もあり、家族で楽しみにして訪れる感じでもなかったんです。小学生の頃は、まだ重たかったフライパンで料理をするのが好きで、いろいろ作っては失敗しましたが、親は喜んでくれました。当時、毎週楽しみに見ていたテレビ番組が「美味しんぼ」と「料理の鉄人」で、どちらも作り手と食べ手にフォーカスがあたり、料理を通じてつながる関係性や勝敗など、食の持つ華やかさと厳しさ、その広がりの面白さに引き込まれた気がします。その頃の想いが、今も渇望として活きていると思います。

2日目へ続く

取材・ライター:長澤千晴

藤野弘行氏 プロフィール:

1978年生まれ。豊富な食経験と分析力を活かした日本唯一のインバウンドラーメンコンサルタント。レストラン商品開発のアドバイザー、ラーメン店舗のPR、ラーメンに関するインバウンドコンシェルジュ・アテンドとしても活躍。インスタグラムtanreisanにて全国の様々なラーメンを世界に向けて発信中。「マツコの知らない世界」(TBS系)に専門家として二度出演。東京のラーメンインフルエンサーを集めて勉強会を行う東京麺会の代表

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう