エコのリングをつなぎ、真の循環型社会を本気で創っているスゴい人!

兵庫県姫路市に本社を置くリユース企業の株式会社エコリングは、「なんでも買い取り」を旗印に急速に店舗数を拡大している業界内でも注目される存在だ。20254月に創業者の桑田一成氏から社長を引き継いだ川端宏氏。創業当初より事業に携わり、異国の地で海外展開をけん引してきた同氏が、カリスマ経営者の後継を担うに至ったのはなぜか。同氏の素顔に迫った。

人生は心の置きどころしだい

DAY2
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何にでも首を突っ込む「いっちょ噛み」だった少年時代

子どもの頃から学生時代にかけて、僕は何にでも首を突っ込みたがる、いわゆる「いっちょ噛み」でした。釣り、キックボクシング、空手、水上スキーなど、一つにのめり込むまではいかないんですけど、とにかく、いろんなことをやってみる性格です。そのジャンルが好きな人と話を合わせられるぐらいに、その良さがわかるくらいまでは突き詰めます。中でも車やバイクは好きが高じて、その関係の会社に入社したほどです。

弊社、エコリングに入社したのは2006年です。当時はヤフーオークション(以下、ヤフオク)が活発で僕もサラリーマンの傍ら、いろいろ出品していました。出品したものが売れて、欲しい人に繋がっていくというのが醍醐味で、ハマっていたんです。そんな話を弊社に先に入社していた同級生にしたところ、「ウチの会社を受けてみたら」と誘ってくれました。もともと古物という分野には興味がありましたし、2627歳の頃で、自分の今後のキャリアを模索している時期だったこともあり、採用面接を受けることにしたんです。

今では社員数550名を超える企業に成長している弊社ですが、当時は20数人程度。面接で、創業者である桑田一成代表(当時)から、「〇〇くんの友達でしょう? じゃあ、一緒に頑張ろう」というようなフレンドリーな感じで接していただき、迷いなく入社を決めました。当時の弊社は、まだ本社が2フロアのみの買取専門店で、鑑定士たちが買取し、ヤフオクに順に出品する流れとなっていました。

買取部門から販売部門への異動が大きな転機に

そのうち、店舗の店長に昇格、じきに複数店舗のマネジメントを任されるようになりました。桑田代表は、社員みんな社長になればいいじゃないかっていう思いを持っている人でした。ですから僕ら社員もその思いを共有していて、本社がある姫路を中心に関西で働いていたメンバーが積極的に東京や名古屋、広島など各エリアに店舗を拡大していきました。僕も首都圏の店舗を開拓していきました。

その後、本社へ異動することになり、買取から一転、販売の仕事に携わることになりました。そこで関わることになったのが、Ecoring Thailand社(以下、タイ社)というグループ会社です。国内では、さまざまな品物を買い取るのですが、国内ではあまり売れない商品をコンテナに詰めて、タイ社に送る。タイ社はそれを購入して、自社の店舗で販売するという形での取引となっていたのですが、改善すべき点が多々あることがわかりました。そこで事情を把握するため、現地に行ってみると、さらに根の深い問題が発生していました。桑田代表に、「現地に住んで時間をかけて取り組まないと改善しないと思います」と報告。「私が行ってきます」と申し出ました。買取部隊は全国展開するために必死でやっている。弊社では、“何でも買い取り”をアピールポイントとして店舗数を拡大し、買取量が急増していましたが、買い取ったあとの下支えとなっていたのがタイ社で、商品の重要な卸先であり、大きな受け皿だったので、これがダメになってしまったらまずい。販売部門の担当として、自分が立て直すのは当然という思いがありました。

タイ赴任と文化の違いに戸惑う毎日

タイ社は、ブランド品の販売と買取をするエコリング香港社(以下、香港社)の子会社として設立されました。僕が赴任したのは2016年。入社してちょうど10年目でした。赴任当初は日本人との気質の違いに戸惑うこともありました。現地の社員はやる気がないというわけではないのですが、仕事に対する向き合い方が違うというか、遊びとか、リラックスした自分の時間を日本人よりも大切にしているなという気がしました。もちろん全員じゃなく、勤勉な人もいますし、日本人以上にバリバリ働く人もいるんですが。

初めは日本人的な感覚を伝えていこうと思って試行錯誤したんですが、なかなか伝わらない(笑)。だったら、こちらが合わせていくしかない。よくよく考えたら、日本人がタイに行って、タイの土地で商売を始めて、タイ人のお客様から収益をいただき、自分の給料を得ているわけですから、日本人のスタイルに合わせてもらおうというのは少しおこがましいと思いました。「日本人的に」という考え方は捨てて、「エコリング社としては」という伝え方で社員教育を進めました。それによって意識を変えて、現在、幹部として活躍してくれている社員もいます。もちろん、変わることなく辞めていった社員もいるのですが、彼らにとって辞めることはそんなに悲しい出来事ではなく、フランクに辞めていくケースが多い。こちらとしては辞めてほしくはないですが、そういう文化でもあります。

孤軍奮闘の日々とタイ語教師との運命的な出会い

自ら手を上げて現地に行ったわけですが、立て直しはなかなか進まず、大変な状況がしばらく続きました。特に最初の2年は、責任者の処遇も含めた厳しい対応をとる必要がありました。でも、今まではそれで回ってきた組織ですから、そこを変えようとすると反発も大きい。僕らと感覚も違うし、その責任者に協力的な者もいました。こちらは僕1人で乗り込んでいって、タイ語は話せないし、来たばかりでいろいろと口出しはするし。彼らにとっては邪魔な存在なわけです。いろいろな抵抗に遭い、目に見える改革ができないまま、あっという間に数週間が経ってしまった。そうした状況を打開しようとしたとき、僕がまず実行したのが「タイ語を覚える」ということでした。現地語を覚えないと始まらないと。今から考えると、短期間で改善しなくてはいけないのに、悠長に語学を勉強している場合ではないとも言えるんですが、なぜかそう思ってしまって、タイ語教室を探して、先生に自分のオフィスに出張していただいて勉強することにしたんです。

1回のオンライン経営会議が一番の楽しみに

そのタイ語教室のシステムはチケット制で、1時間分のチケットを複数枚購入してスケジュールに合わせて使用していく。で、初めに10枚買って、2枚使って勉強してみたのですが、日本語でいえば、“あいうえお”から始まるようなものですから、こんなことをしていては、習得するまでの間に会社が潰れてしまう。そこで、社員との面談や社内の情報収集をするために、先生にチケット分の時間、同席してもらい、僕の隣で通訳をしてほしいとお願いしたんです。先生も快く引き受けてくれて。会議に入ったり、さまざまな部署の話を独自に聞いてくれたり。で、いろいろとお願いしているうちにチケットを使い果たしてしまった。

僕は業務が前に進んでいる実感があったので、今度はチケット3か月分を購入し、引き続き通訳をお願いしました。3か月も経つと、彼女は会社の内情をほぼ理解してくれていました。そこで、「弊社で一緒に改善に取り組んでくれませんか?」とスカウトして、秘書として入社してもらい、その後の社内の抜本的な立て直しに力を貸してくれました。社内が正常化するまで2年近くかかりましたが、社内調査をする間に、後ろめたい社員はどんどん辞めていきました。そんな状況でしたが、いま振り返っても、疲れたとか、しんどいとは思いませんでした。その頃の一番の楽しみが、月1回、桑田代表と香港社の社長と行うオンラインでの経営会議でした。普通、会議って業績報告したりするので、みんな気が進まないと思うんですけど、僕は早く会議が来ないかなと思っていた。日本語で腹を割って話ができるし、さまざまなアドバイスももらえるのが非常に有意義で楽しみにしていたんです。

コロナ禍での緊急事態対応に奔走

赴任して2年ほどで社内の立て直しが終わり、2018年になると組織にまとまりが生まれ、それにつれて商品も売れていき、業績も伸びていきました。やっと仕事らしい仕事ができるという状況になったので、店舗を増やしたり、新しい倉庫を借りたりと、準備を整えていきました。ところが2019年あたりから、少しずつ業績が頭打ちに。

そこに2020年、新型コロナウイルス感染症が追い打ちをかけました。タイでも感染者が確認されたため、123日、タイ政府からロックダウンの宣言が出され、翌日から誰も出社できなくなりました。オンライン会議を開いてさまざまな意見を出し合っていたところ、香港社から届いたブランド品が売れていることがわかりました。さらに出社できなくても、社用携帯電話を使って写真を撮って、SNSを使って常連さんに販売できるんじゃないかという意見が出たんです。商品は店舗にありますが、国の方針で出社はNGという状況。ただし、経営者や経理関連など一部の部署は出社してよいという例外があったので、「自分が店舗に行って、商品を撮影して画像を送るから、みんなでSNSを駆使して販売してくれ」と指示しました。コロナ禍での社員一丸となった大作戦の始まりです。

<DAY2へ続く>

川端宏氏 プロフィール:

1979年、大阪府生まれ。2006年、エコリング入社。尼崎店配属後、同店店長、北関東エリア、関東エリアのマネージャー職等を歴任し、16年、常務取締役。17年、Eco Ring Thailand Co.,Ltd. 代表取締役社長として、同社の立て直しに尽力。254月、エコリング代表取締役社長に就任。

エコリング公式サイト:https://ecoring.co.jp/

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