コロナで世界の様相は一変し、今までの当たり前が当たり前ではなくなった今日。大企業さえも副業を認める時代に、多くの人が多様な選択肢に迷いを深めています。今日ご紹介するのは10年以上も前からパラレルキャリアを築きあげてきたTOMOKINさん。冷静と情熱の間を自然体で生きてきたその日々を伺いました。
面白いをツクル
YouTuber/会社員 TOMOKIN様
見どころ
―YouTuberとしての低迷期
―TEDサンフランシスコへの登壇
―米国でも本業・副業を両立
編:ある意味YouTuberとして第二フェーズを迎えられたとも言えますね。
T:そうかもしれません。現代のジレンマというか、YouTuberって平和が訪れることはなくて、常在戦場というか。視聴者数を増やしたいという思いから始めるYouTuberさんも多いと思いますが、登録者数が増えるまでの悩み、増えた後の悩み、その過程で受け取るネガティブメッセージなど、本当にストレスが多い職業です。子どものなりたい職業NO.1と聞いたことがありますが現実はなかなか過酷です(笑)。
編:今はそのストレスに勝てず、命を絶たれる方も出ている時代です。そういった方とTOMOKINさんが違うのはどのような点だと思われますか。
T:僕はいい意味でも悪い意味ではあまり視聴者のコメントを深刻にとらえていないのが良いのだと思います。世の中にはいろんな考えの人がいるのだから、寄せられた意見もそのうちの一つにしかすぎません。
編:強いですねー!
T:以前オフ会のようなものをした際に気が付いたのですが、コメントで誹謗中傷する方もオフ会に来てくださるんですよ。僕のこと嫌いじゃないのかなと心配に思うのですが(笑)。で、そういう方は実際に会ってみると穏やかな方が多い。僕を誹謗中傷したことを覚えていないのかもしれません。僕は誹謗中傷された人とその内容を覚えているし、あ、この方だなって気が付くこともあるのですが、実際その方はとても無口で温和な人だったりするんですよ。対面では何も言えないけれど、ネットでは饒舌になる。そういう人もいます。
編:不思議ですね。
T:だから僕もコメントはコメントとして、受け流していますね、全然気にならないです。あまり気になる人は精神的に疲弊してしまうから、よくないですよ。そういう点では僕はYouTubeに向いているのかもしれません(笑)
編:さて、第二フェーズを迎えられたその時、次の一手はどのように打たれたのでしょうか。
T;実はちょうどその頃時を同じくして、会社で海外駐在をする機会を得ました。YouTubeは低迷期を迎えていましたが、会社では自分のキャリアアップのためには絶好の機会をいただいたわけです。2017年ですね、アメリカのサンフランシスコへ駐在しました。役割は最新技術のリサーチです。
編:サンフランシスコといえば世界のIT技術や企業が集まるシリコンバレーがありますね。会社としては重要な役割です。
T:ここで今のキャリアに続くAI技術に出会いました。それまではSEとしてプログラミングや設計が主な仕事だったのですが、AIテクノロジーの将来性には僕自身がこれはと思ったし、会社としても取り入れていこうという評価になりました。
編:本業でも大活躍ですね。
T:せっかくサンフランシスコにいるのだからこの機会をYouTubeに活かせたらという思いも生まれました。海外層を増やすこともできるだろうし、日本の視聴者にも新しい環境での動画配信を見てもらえるなと思いました。調べてみたら近々、TEDサンフランシスコが開催されるという事だったので、主催者にDMで直接連絡を取ってみたんです。
編:思い立ったら即行動。ですね
T:運よく何人かの方にインタビューの機会をいただけたので、日本人であること。ビートボックスができることなどを自己紹介をしたところ、出演許可をいただきました。これは本当に幸運なことで、やはり日本人であることも大いに影響していると思います。なかなかアジア人のそれも日本人が出演というのは当時はまだ珍しかったですから。登壇者8人中、唯一の日本人でした。
TEDで披露した英語スピーチ
編:英語で現地の方へのプレゼンですから、英語力も必要ですよね。
T:英語自体は、駐在が決まってから、日本で毎日少しずつ英語をオンラインなどで勉強して身につけました。駐在での生活も含めて、プレゼンまでにはそれなりの英語力が身についていました。
編:すごい。ほんとに軽やかに必要なスキルを身に着けて行動に移されてきたんですね。
T:ただもちろんTEDでプレゼンするというのは結構なことですから、出演許可をいただいてから本番まで1週間しかない中でプレゼン原稿を作って練習もしました。当日は観客もたくさんいたので緊張しましたよ。
編:すごい経験ですね。
T :TEDに出て僕自身が大きく変わったことというのは、英語スピーチに自信がついたことです。当日のTEDプレゼンでは、今から思えば間違った表現もありましたし、発音だって微妙です。でも僕自身はどんな幼少期を過ごして、今サンフランシスコのTEDに出演しているのかというプレゼンとしては大成功でした。重要なのは僕自身が何かを伝えたいと思っている人間だということでした。
編:伝えたい、発信したいという思いの先にYouTuberであるというのはなんだか運命というか宿命というような気もしてきます。
T:YouTuberであるからこそ、常に周囲にアンテナを巡らせているというのはあるかもしれません。
TED出演はサンフランシスコに駐在してから半年くらい経っていたのですが、アメリカならではの経験を積極的にやろうと常に考えてはいました。ビートボックスで路上ライブもやりましたし、NYでは地下鉄の中でも挑戦しました。
NY地下鉄内でのライブ時
編:すごい。映画などでも有名な場所ですよね。なんだか危なさそうです(笑)。
T:最初は誰かに怒られるのかなとも思ったのですが、皆さんから拍手してもらいましたし、チップもいただきました。こういった映像もYouTubeで配信しましたので、視聴回数がまた少しずつ伸びるようになったんです。
編:与えられた環境を思いっきり楽しんでいらっしゃいますね。
T:そうですね、そのうちにAI技術をコアにした部署が新設されることになりましたので、帰国してまた本社勤務となりました。今もAIエンジニアとしてAI技術の研究や開発に携わっています。
編:会社員生活とYouTuberとしてのパラレルキャリアもそろそろ10年となられるわけですが、会社の同僚の方などに気が付かれたりはしていないのですか?
T:気が付いている人は気が付いていますね。「やってるんだね」と声をかけられたこともあります。以前、僕の本名を入れるとYouTubeに出てくるみたいで、それで気が付いたみたいなことを言われたことがあります。ただ、同じ部署の同僚たちは日々の業務上でYouTubeのことに触れてくる人はいないので気が付いていないのか、気が付かないふりをしてくれているのか、それはわからないのですが。
編:副業はOKだったんですか?
T:もちろん会社として積極的に推奨というわけではないでしょうが、YouTubeに動画をあげるくらいは趣味の延長だろうというところでしょうか。会社からお咎めを受けたことは今まで一度もありません。会社をさぼってやっているとなると別ですが、会社での業務に支障は出ていませんしね。逆に会社の考え方も変わってきていて、個人のアイデアでビジネスを思いついたら社内で新規事業化するという雰囲気が出てきている、時代の流れも感じますね。
編:時代がTOMOKINさんに追い付いてきた感じですね。
T:逆に社内の新規事業部の案件でちょっと手伝ってくれないかという声掛けをもらうこともあったりして、本業と副業のキャリアがシンクロする局面もあります。
編:まさにパラレル。今の時代の働き方というのがぴったりですね。
T:平日は会社員で土日がYouTuberとしての活動というのが主な働き方です。企業案件でPR動画作成などを請け負うこともあります。先日は中国の企業の依頼で、AI搭載の英会話アプリのPR動画制作をお手伝いしました。
編:会社でAIエンジニアとして働く経験とYouTuberとしての活動がシンクロしてTOMOKINさんだから成立するビジネスとなった好例ですね。
T:今はコロナの影響もあってリアルライブというのができていません。ただTikTok動画配信も始めたのでそこから新たにYouTubeへ見に来てくれる人も出てきています。
編:コロナで副業に挑戦する人も増えてきました。どんな副業が良いのか頭を悩ませる人も多い時代です。何かアドバイスなどいただけますか。
T:僕の場合はあまり大きな目標を立てないことが大事かなと思っています。小さいけれど自分が好きな事から始める、やってみるのが大事です。目標を大きく定めてしまうと、その途中で様々な影響や出来事が起きてゴール達成までにやめてしまうこともあると思います。自分が継続できるサイズでまずは初めて見ること。
編:TOMOKINさんならではの視点ですね!今日はありがとうございました。
T:ありがとうございました。
◆TOMOKINさん プロフィール
1988年生 兵庫県出身 関西学院大学法学部卒、大手企業入社(至現在)
AIエンジニア/YouTube(22万人登録者)
【出演】
Abema TV「スピワ月曜theNight」「AbemaPrime」
関テレ「桃色つるべ」「ジャニ勉」
ニコニコ超会議など