アニソン&ゲーム音楽界を代表する作曲家・田中公平さんへのインタビュー。いよいよ最終日となる今回は、再び編集部員が田中さんのスゴさの秘密に迫ります!
令和リニューアル記念4日連続インタビュー
DAY4
田中公平流・才能を開花させる方法とは
編:歴史に名を残す作曲家には破天荒な方が多いということでしたが、日本の作曲家についてはいかがでしょうか?
田:日本人で言うと、アニソン界で鷺巣詩郎と菅野よう子は尊敬しています。鷺巣さんは『新世紀エヴァンゲリオン』、菅野さんは『カウボーイ・ビバップ』とかね。この二人の実力は私も認めています。
編:田中さんがスゴいと感じるような同業の方、例えば「自分ではこの曲は作れないな」と思うような曲を作る人には、嫉妬のようなものを感じたりするのですか?
田:嫉妬というよりも単純にスゴいなと思いますよね。私はあの人じゃないし。確かに私には作れないものかもしれないけど、向こうだって私のようには作れないでしょうしね。
編:なるほど確かに!
田:まぁ若い頃は、一瞬ありましたけどね。自分より全然下だと思っていた人がヒットを出したりした時に。やっぱりまだ若くて、今のような位置に来てないから。とはいえ、嫉妬はほとんどないですね。嫉妬は自分の身を焼く炎ですから。何にもいいことない。やめたほうがいいです。羨ましいと思ったり、ああなりたいと憧れたり、そういうのはいいですけどね。そこから這い上がろう、頑張ろうという原動力になりますから。
編:ここまで作曲家の話を伺いましたが、作詞家はどうでしょうか?
田:作詞家はあまり詳しくないですけど、畑 亜貴という世界で一番酷いヤツがいますよね(笑)。面白い人ですよ。『日刊スゴい人!』でもインタビューしたらどうですか?
編:いいですね是非! 田中さんからもご推薦いただけると。
田:「取材? いいわよ。まずはカニ料理ね。次はフグ。最後はお寿司ね」「キミは取材前にいくら掛かるねん!」「じゃあギャラから引いといて」「いやギャラより高いわ!」みたいな感じ(笑)。
編:ぶっ飛んでますね(笑)。
田:今のアニメ界は彼女がいないと回らないですからね。『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』、『ラブライブ!』。とにかく大変な数ですよ。あと及川眠子さん。彼女もスゴい。離婚話が面白すぎて一晩聞いていても飽きない(笑)。昔、「お金がいる~!」って言ってきたから何事かと思ったら「トルコ人の夫が現地に洞窟を掘ってホテルを作ると言い出した」と。結局、いつまで経ってもホテルができずに泣き寝入りしたんですよね。何億円か知らないけど(笑)。「でも『テーゼ』の印税だけで年に何千万円も入るんやからええやん」って、そんな話をしましたよ。
編:及川さんもスゴい人ですよね。
田:印税で『残酷な天使のテーゼ』にずっと負けてるのが悔しい(笑)。
編:改めて、これまでの音楽人生を振り返っていかがでしょうか?
田:ぶっちゃけ下積みもほとんど感じることはなかったし、ずっとトントン拍子でここまで来た感じですよね。
編:全く苦労はなかったですか?
田:ないんです。だから、こういうインタビューで苦労話を話せなくてすみませんって感じなんです。「いいトコの息子」で、金に一回も困ったことが無い。だってね、アルバイトした事無いんよ。嫌なヤツだよ絶対(笑)。
編:では、仕事をする上で気をつけていることはありますか?
田:女遊びもギャンブルもしない。何かやらかしたら、関わっている作品に迷惑かけちゃう。いくら高いワイン飲んでも迷惑にはならない。大体ワインで、マンション二棟分くらいはつ呑みましたからね(笑)。
編:そんなにですか! ワインでそこまでの話は聞いたことがありません。
田:ワインはいいことあるよ。これで人脈広がった。良いワインバーとかに行くと、安倍総理の秘書さんがいて「安倍さんと今度会いませんか?」みたいな話になったり。隣にテレビ局の偉い人が座ってて、私がわーっとアニメの話をしてたら「面白いね、オリンピックでやってみない? 関係者つなぐから」という話になったり。
編:ワイン人脈、スゴすぎますね。
田:それなりのお店に行かなきゃダメですよ。私はそのワインバーにずっと通ってましたね。
編:マンション二棟分のワインの話しかり、幼い頃にベートーヴェンのレコードを擦り減らした話しかり、田中さんは好きなことに対する情熱がスゴいと感じました。
田:何でも物凄く深いのが好きなんです。競馬でも血統からめちゃくちゃ勉強するし、将棋だって私、名人戦を観戦しに行きますもん。将棋は下手ですけどね。それでも会場でプロの人と話をして学ぶことが多い。今はさすがに藤井聡太君に会うのは難しいと思うけど、羽生善治さんとかなら、自分で会いにいけますよ。何でも深いほうが楽しいです。もちろん、本業のアニメも深くまで。
編:田中さんにお聞きした姿勢や考え方は多くの読者に役立つことと思います。最後に、ひとりの音楽作家として今後の展望をお聞かせください。
田:不安はありますよ。歳は取るし。でも自分の予感としては、ずっとこのまま走り続けてられるんだろうなと感じています。死ぬまで仕事があって、前のめりに死ぬんだろうと。机に突っ伏して、楽譜の上に。「でも、今週はまずいな、この案件あるし、これもあるし」とか。そういう感じで生きてます(笑)。
編:これからも素晴らしい作品を世界中に届けていただきたいと思います。ありがとうございました。
田:ありがとうございました。
ンタビュー:アレス 編成:Wahsy ライター:西秀進
(完)
◆オフィシャルブログ:田中公平のブログ My Quest for Beauty
https://ameblo.jp/kenokun/
◆株式会社イマジン 田中公平
http://www.imagine-music.co.jp/artist/tanaka/
◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式サイト
http://avex.jp/tsubasa-project/
◆『翼を持つ者 ~Not an angel Just a dreamer~』楽曲公式Twitter
https://twitter.com/tsubasa_PR
◆『アニメNEXT_100』公式サイト
http://anime100.jp/index.html
◆Amazon:田中公平作品
http://amzn.to/2kKph56
◆Profile
田中公平(たなか・こうへい)
作曲家・歌手
1954年大阪生まれ。
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業.
ビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)勤務後、米国ボストンのバークリー音楽学院に留学。帰国後、本格的に作・編曲活動を始める。
アニメ『ワンピース』、『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』の主題歌や、ゲーム『サクラ大戦』の主題歌をはじめ、アニメやゲームの音楽を多数手掛ける。
近年は作曲活動のほか歌手、演奏者として国内外でライブも行っている。
2002年 新世紀東京国際アニメフェア21にて、『ワンピース』でアニメーション・オブ・ザ・イヤー音楽賞を受賞。
2003年 『サクラ大戦』で第17回日本ゴールドディスク大賞アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。
2017年 『アニメ100周年アニバーサリーソング「翼を持つ者 〜Not an angel Just a dreamer〜」』。ささきいさお、水木一郎、堀江美都子、串田アキラなど、レーベルを超え集結した豪華アニソン・声優アーティスト23組が参加する、アニソン版『We Are The World』を目標に制作された本作は、「アニメNEXT_100」の公式ソングにも決定した。