今週ご紹介するのは、OriHime(おりひめ)という分身ロボットで「孤独」の中に暮らす人へ光をもたらし、その「孤独」を消すために日夜戦い続けるスゴい人。20年前には存在しなかった職業、ロボットコミュニケーターとして日夜「会えない人に会いにいく」その方法を考え続けている人である。子供時代に自分が体験した「孤独」の中に、今まさに暮らしている人々へ光を届けようとしている。そのスゴい足跡と熱い想いを4日間お伝えします。さあ、オリィこと、吉藤オリィ様の登場です!
令和リニューアル記念4日連続インタビュー
DAY3
大学生インターン特別インタビュー
インターン生:僕たち学生インターンからは、若者ならではの視点で吉藤さんに質問をさせていただきます。本日はよろしくお願いします。
吉藤さん:よろしくお願いします。
[吉藤さんの大学時代について]
インターン生(以下 学):吉藤さんが大学生のころ、コミュニケーション能力をあげるためにいろんな人と関わったり、片っ端からサークルに入ったりしていたそうですね。僕からすると自分の苦手なことに挑戦することって失敗するリスクがあって怖いのですが、どうしてそこまで行動することができたのですか?
吉藤さん(以下 吉):リスクを恐れなかったから行動できたというよりは、当時の私にとって、リスクを恐れて何もしないことの方がリスクが高かったから行動できたんですよね。新入生歓迎会って一年生しかちやほやされないじゃないですか。それを僕は分かっていたし、コミュニケーション能力がなかったので、一番ちやほやされるこの瞬間を逃すわけにはいかないと思って色々なサークルに顔を出したり、大学の研究室を見に行ったりしましたね。だって自分が大学の教授だとしたら、入ってきたばかりの大学一年生が見学に来たら嬉しくないですか?
学:確かにそうですね。
吉:だけどそうやって全部の研究室を回ってみたら、結局入りたい研究室がなかったんですよね。
一つの理由としては、当時の私は体が弱かったこともあり、30歳までに自分の目標である「世の中からの孤独の解消」をするという人生30年計画の下に行動していたので、20代後半にならないと好きなことに取り組めない大学の研究室は自分に合っていないと思ったんです。
もう一つの理由としては、大学の研究室に入って論文を書くよりも、直接的に人の暮らしや生活を変えることがしたかったんですよね。そして自分がしたいことができる研究室がないなら自分で研究室を作ってしまえと思って、大学の研究室に入らずに自分の研究室である「オリィ研究室」を作ったんです。
学:なるほど。大学時代はかなり能動的に活動されていたんですね。
吉:そうですね。もうちょっと色々なことをできた気もしますけど。
[大学生へのアドバイス]
学:今の大学生は受動的で流されて生きている人が多いように思うのですが、大学生はこういうことをして過ごすべきだというアドバイスをいただけないでしょうか?
吉:基本的には自分がしたいことを自分のペースでしたらいいんじゃないですかね。一つオススメするとしたら、必修なんて忘れて興味のある授業にだけ参加するっていうことですね。履修してない授業でも潜って参加したりして。僕も大学の途中からそうするようになったんですけど、必修を忘れた瞬間に、大学って行かなくてはならないものじゃなくなるんですよ。そうやって自分の意志で学校に行くようになると、大学には面白い授業がたくさんあるということに気づくんですよ。例えば映画監督がスピーチをしていたり、建築家と一緒に大学の周りを歩いて建物の説明をしてくれたり。課題をやらなくていいのもいいですしね。
学:相当思い切ったことをされていたんですね。必修の授業に行かないと卒業ってできないですよね。
吉:そうですね。僕は大学を卒業しているという身分よりも大学生という身分であること自体に価値があると分かっていたから、休学を4年間して1度留年してから大学を中退しているんですよね。
学:大学生という身分に価値があるとはどういうことですか?
吉:先ほど言ったように僕は履修していない授業に参加していたんだけど、履修していないにも関わらず誰よりも積極的に授業に参加していたんだよね。そんなことしているうちに教授に気に入られて別荘に連れて行ってもらったり、産学連携室っていう教授と社長たちが研究をしているところの最年少サロンメンバーとして入れてもらったり、普通は経験できないようにことをたくさんさせてもらいました。学生という身分がないと普通こんなことさせてもらえないですよね。
学:確かに。学生の特権を存分に使っていたんですね。
吉藤さん:そうそう。中退を勧めるわけじゃないけど、なんで卒業しなきゃいけないんだろう?とかを問うことは大事だと私は思っていて、大学時代にいろんな人に対してなんで大学って卒業しなきゃいけないんですか?って聞いて回っていたんですよね。
そこで言われたのが、アカデミックな世界で活躍したいなら、世界的に認められるためにもちゃんとドクターをとりなさい。と言われました。だけどドクターとるのって天才でない限りは27,28歳までかかるんだよ。そうなってくると私の30年計画には適用されないよね。
他に卒業する理由としては、就職に有利っていうのがあるけど、当時の僕はどっかの企業で働きたいという思いも無かったから、僕には関係ないよね。いざとなったら町工場の職人になろうと思っていたからね。職人って学歴関係ないし、黙々と物作りするのは好きだし。
親が泣くぞとかも言われたけど、正直なところ大学生になるまでだけでも泣かせまくってるんですよね。だから関係ないと。
あとは他にはせっかく入ったんだから、とかよくわからないことを言う人もいましたね。なんだろう、これは宗教なのかな?って思いましたね。(笑)
[ 自分をつらぬくためのマインド]
学:人の目が気になってしまうとか自分に自信がないという理由で、周りと違ったことができないという人が多くいると思うのですが、話を聞いていると吉藤さんにはそういったところがあまりないように感じます。吉藤さんのように、周りがしていないことでも自分がすべきだと思ったことをやり通すには、どのような考え方をしたらいいと思いますか?
吉:人とは違うことでも自分がやると決めたことに取り組めるモチベーションとしては、僕が人と同じことをするのが嫌なタイプだっていうのはあるかもしれないですね。
他の人が面白いといっていることを面白いと思えなかったり。奈良県の野球の始球式とかやったことあるんですけど、今でも野球のルール分かってないんですよね(笑)
学:なるほど。吉藤さんはそもそも人と違ったことをしたいという思いがあるんですね。
吉:そうですね。多分、周りに合わせて行動している人たちは周りの人たちがどこに向かおうとしているのかをちゃんと見ていない気がします。だから集団行動をしているときは、その集団の進む先が自分の望む方向に繋がっているかを考えることが大事だと思う。例えば自分がなりたい職業がサラリーマンじゃなくてアーティストだったらみんなと同じことばかりしてていいのかって話になるじゃないですか。
学:確かにそこまで先を見据えられている学生は少ないと思います。
吉:今新卒とかインターンを採用している立場からいうと、自分の道を進んでいる人の方が就職でも採用してもらえる気がするよ。だって普通に4年で卒業している人より、一年間休学して世界回って、その時に撮った写真がカンヌの賞取りました。って人が来た方が面白いなって思うもん。
学:確かに。自分が採用する側だと考えるとそうかもしれません。
本日はありがとうございました。
取材:アレス 構成:Noriko 翻訳(英):Tim Wendland
学生:阿部颯樹(上智大学4年)
♦分身ロボットで働く。アバターギルドプロジェクト
寝たきりでも社会で働きたい人のために
♦著書 「孤独」は消せる。サンマーク出版 (2017)