1年間は潜らないという覚悟
いきなりの世界大会は58号線
全財産はスーツケース1個に
ここ数年、日本のフリーダイバーが世界でメダルを獲り続けている!
昨年の世界大会でも女子団体戦は金メダルを獲得した。
この世界大会は2年に一度なのだが、
2012年 フランス大会 金メダル
2014年 イタリア大会 銀メダル
2016年 ギリシャ大会 金メダル
更に個人でもCWT95m(足ひれを付けて潜る)、FIM81m(足ひれ禁止で潜る)など好成績を収め優勝している。
今日はそんな人魚ジャパンの1人であるスゴい人に登場頂く。
海の中にいるほうが自然だという彼女の人生を聞かせて頂こう。
貴方も海の世界に興味を持つかもしれない。
さあ…
フリーダイバー
福田 朋夏様の登場です!
かまくらが隠れ蓑
すごく大人しい子どもでした。
小学校2年生から水泳をしていたのですがプールはあまり好きではなく、小樽にある従兄弟の家に夏場は行き、殆ど海で泳いでいたのを覚えています。
北海道なので、かまくらを作ったりしたのですが水泳に行きたくないからって、かまくらの中に隠れていたらしいんです(笑)
人と争うことが元々好きではないのですが、選手コースになり、毎日のように厳しい練習を繰り返し、全国大会に出場したりもしました。
中学に入り友だちとも遊べない事が嫌になり「水泳を辞めさせて欲しい」と親と話し合い、水泳のコーチも家まで説得に来たりしたのですが、辞めさせてもらいました。
スキューバ?タンク必要かな?
水と関わることは大好きで、20歳の時、母と一緒に沖縄に行き初めて体験ダイビングをしたのです。
それからスキューバダイビングにハマり、休みがあると沖縄の海にスキューバダイビングをしに行っていたのですが、ある時、水深10mぐらいにある洞窟を素潜りでくぐり抜けている人を見たのです。
その時、私は酸素タンクを背負っていたのですが「これ、もしかして要らないんじゃないのかな?」と思って翌日から素潜りをしてみたらすごく快適で、魚たちとも対等に感じられ、すごく楽しかったんです。
スキューバダイビングとは全く違う世界に入った感じでした。
地上での世界ではなく、この海の中の世界が本物だ!って思えたぐらい神秘的で、純粋な世界に一瞬で魅了されてしまったんです。
海に恋して沖縄移住
年に何度も沖縄に行っているうちに、毎日のように海に入る生活をしたいと思ったんです。
洋服屋さんで働いたり、モデルをしたりしていたのですが、子どもの頃からの感覚で「なんでこんな小さい所にいるんだろう」という気持ちがすごく大きくあって。
世界中を回って、地球をもっと楽しみたいという気持ちのほうが近いかもしれません。
北海道で働いて費用と時間をかけて沖縄にいくのなら、いっそ沖縄で働いて毎日海に入る生活をした方が効率的だと思ったんです。
でも、沖縄に移住するなら手に職を付けた方が良いと思い、ネイルやマツエクの技術を1年間学びました。
1年間は潜らないという覚悟
北海道から沖縄に引っ越し、米軍基地の近くにあるネイルサロンで働き始めました。
基地の近くという事もあり8割ぐらいがアメリカ人でした。
接客を通じ、自然と英語を学べたのでその後、海外に飛び出す時に非常に役立ちました。
ネイルサロンで働きながらモデルの仕事もして、結構忙しく、実際は週1回ぐらいしか潜れませんでした。
もっと自由に潜りたいと思い、自分のお店を出すのですが、1年間は土台を作るために働きました。
お客様のアポイントが無い時間を狙っては潜れたのですが、アポイントを優先し天気の良い日でも我慢する日もありました(笑)
お客様も増えスタッフも入り、やっと頻繁に潜る生活ができるようになりました。
いきなりの世界大会は58号線
2010年に沖縄で世界大会があり、セーフティーダイバーとして関わらせて頂き、世界中のトップフリーダイバーの潜りを間近で見たんです。
こんな深い所まで良く行けるな、変な人達だな、と思いながらも私もやってみたいと思ったんです(笑)
私にもできるって、心の何処かで思ってもいたんです。
翌年の4月からトレーニングを始めて、働きながら潜っているので、毎日ヘトヘトでした。
世界大会に出場する為の記録を取りに行こうと臨んだ沖縄の大会が台風で中止になってしまい、世界への切符は手にできなかったのですが、先輩たちに「コーチで来れば」と誘われギリシャ大会に同行させてもらいました。
世界大会と同時期に開催される小さな大会に出たりしていました。
世界大会の当日、団体戦のメンバーだった女性選手が鼓膜を破いてしまい、3人で臨む団体戦の枠が空いたから急遽出場することになったんです。
当時のパーソナルベストは56mだったのですが、大会ではそれを上回る58m潜れたのです。
実はこの58という数字は沖縄にある58号線からイメージした数字なんです。
深度を自己申告するのですが1m刻みでイメージして一番しっくり来たのが日常目にしている58号線の58だったので(笑)
でも、この数字感覚っていうのも凄く大切なんです。
不思議な事ですが、ベスト記録より浅くてもその時イメージした数字がしっくり来ないと上手く潜れなかったりするんです。
全財産はスーツケース1個に
フリーダイビングが好きすぎて夢中になってしまい、世界中のフリーダイバーと連絡を取り、ホテルに泊まったりアパートを借りたりしていろいろな所でトレーニングしていました。
1年間ほどはスーツケース1つが当時の私の全財産で世界中を飛び回っていました(笑)
普通の生活をした方が良いのかなと一瞬思ったのですが、海に潜ってみるとやっぱりやめられないなって。
潜ることは心を磨くこと
フリーダイビングってただ潜るだけじゃないんです。
自分の中に潜る作業でもあるんです。
海に嘘はつけないので、素の自分にならないと海に跳ね返されるんです。
潜る前に自分の中を綺麗にする作業をしないとダメで、何かを抱えて潜るといつもの半分も潜れなかったりします。
本当に良い精神状態で、ハッピーな気持ちで潜らないと、良い潜りができません。
精神と身体が整うと海が受け入れてくれるんです。
自分の中にある小さな海を、大きな海に合わせていく感じで潜るんです。
海と一体感を感じて溶け込むんです。
そして、海はものすごいPOWERをくれます。
ネイルサロンを経営している時、海に潜った日はもの凄くお客様が来て、お客様がみんな口を揃え得て「今日はPOWERを貰った」と言ってくれるんです。
潜れば潜る程に感性は高まり、イメージした事がすぐに手に入るようになり、不思議なんです。
海に入ると「なんでこんなにも物事が上手くいくのかな?」って、それを追い求めていたらここまで来ていました。
この海の魅力をトークショーやツアーなどを企画して伝えて行きたいです。
取材を終えて
福田さんは1年半程前に新しい伴侶と結婚された。
お相手はNYを拠点にハイブランドの写真を撮るカメラマンさんで、福田さんが都会の生活に疲れてくると海に放してくれるという(笑)
フリーダイバーは各国で開催される大会に遠征するのだが、その期間は1大会あたり1ヶ月前後らしい。
年に5回行けば1年の半分は海外生活。
現在の人魚ジャパンは岡本美鈴さん、廣瀬花子さん、福田朋夏さんであるが、3人は非常に仲良しだという。
喧嘩は全くせず、誰かが落ち込んでいると自然と手を差し伸べ、遠征時は1ヶ月間の共同生活になるが気を遣うこともなく自然体で過ごせるという。
海と真剣に向き合うことで身体も精神も磨かれ続けている3人は、僕らが想像できない絆で結ばれているのかもしれない。
潜っている間は地上では味わえない瞑想状態に入るそうだ。
これからも大好きな海に潜り続け、海から受け取ったインスピレーションを多くの人に伝えていって欲しいと思う。
プロフィール
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