テレビゲームに組み込む人工知能を作るスゴい人!

どん底に突き落とされた学生時代

ゲーム作りというのは、一種のアート

人工知能の発展と将来

本日登場するスゴい人は、さまざまなテレビゲームのキャラクターを動かすための人工知能「AI」の開発に携わっているスゴい人!
そんな彼は学生時代を京都大学、大阪大学、東京大学で過ごし、人工知能開発への道を歩んできたが、ある行きすぎた行動をとってしまいどん底に突き落とされてしまう。
そのような過去や世界的ヒット作品を生み出した彼の考え方やゲーム、人工知能についてこれから迫っていく。

さあ…
ゲームAI開発者
三宅 陽一郎様の登場です!


人工知能と僕

僕は人見知りをするタイプで、一人で考えるのが好きでした。
やりたいことに執着がなく、強い欲求を持たないので、うまく人間になりきれていないという感覚がありました。
僕から見ると人間は雄々しくて、僕はそれをはたから見ている感じがあり、人間ってどうなっているのかな、と。
それが人工知能に惹かれる理由です。
人工知能も人間になれていないから。

人工知能の時代

僕が5歳から15歳までが第二次AIブームの時代でした。
映画とか、アニメとか、小説とか、色々なところからAIのイメージを植え付けられました。
今でも印象的なのはターミネーターや、松本零士ワールドです。
その影響で、人工知能いいなぁという思いはあったけれど、プログラムを始めるまで自分で作れるとは思っていませんでした。
コンピュータだけど人間臭いというか、そこに惹かれたんです。
それが本当にやりたいこととわかるまで、時間がかかりましたけど。

混迷の学生時代

最初は数学者になろうと思っていて、京都大学に入りました。
でも数学者になれる人は学年で1人いるかいないかというほどの狭き門で、今度は物理をやるために大阪大学の修士課程へ。
その後、実験装置を作りたいと思って、東大の工学系博士課程に進みました。
東大時代の実験で、電気回路に超電導を組み込んでそれに振動を与えると、カオティックな挙動をするんだけど、必ず同じポイントに帰ってくる周期性があることを見つけました。
そういった回路の内側と外側の関係を用いて、外側を環境、内側を知能というモデルで人工知能を組み上げられるのではないかと思って、論文を書いて学会発表などを繰り返しているうちに、本来の研究からそれてしまい、研究室を出ることになりました。
勝手にやっちゃダメなんですよ、学生だから。
指導教官の言うことを聞かなければいけない。
当時は生意気だったし、「俺は世界で一番新しいものを発表しないと意味ない」みたいに思って。
博士号も取れずに辞めたくなかったけど居場所もないので、学校を去ることになりました。
わかっていたけれどもつらかったです。
博士号取っていたら逆にエリートとしてできたけど、僕はそれが取れなかったんです。

人工知能に携わる

その先は人工知能やりたいなと思って、色々なゲーム会社を回りました。
東大の博士課程まで行って博士号持っていない僕の立場は微妙で、なかなか仕事は決まりませんでした。
その中で一社とってくれて、人工知能をやることができて、すごく感謝しています。
そこで僕が思っていた人工知能を実際のゲームに組み込んで、それが結構ゲーム業界で話題になったんです。
ゲーム業界にはカンファレンスというものがありまして、それで発表したら、結構好評でした。
それで業界で連続セミナーをやってくれませんかという依頼が来て、全6回でAIの連続セミナーを1年くらいやったかな。開発者向けに100人くらいで。
その頃から人工知能をゲームに組み込む、といった仕事が始まりました。
そのときは30歳でした。

ゲームの仕組みの変化

昔のゲームはスクリプトといい、どの場所でどの動作をどの場合でするかっていうパターンを、状態ごとに指定します。
でも今はゲームの規模が大きくて、何万通りも作らなくてはならなくなるから、それができない。
だから自律型AIを作ろうというのが僕の立場です。
操り人形じゃなくて、キャラクター自身に目と耳と鼻と感覚をつけて、世界を感じさせて、情報をもとに思考して、自分の体を動かしていきます。
かつてのゲームはゲームデザイナーが脳でした。
でも今はキャラクターのほうに知能を持たせるという作り方をします。
どちらもいい面もあるし、悪い面もあります。
けれども自律型AIしか、大型ゲームに関しては道がないんですよね。
それはこの15年かけて変えてきたことです。

ゲーム作りとは、アート

ゲームの開発って余裕がないんです。
時間が無く、プレッシャーもあって。
なぜかというと、ゲーム作りって仕事だけど、アートでもあるから。
作品を作っているから。
だからみんな妥協せず働いてしまうんです。
僕は世界で一番いいAIを入れようと思っているし、ある意味仕事であり仕事でない、仕事を超えた使命感のようなものを感じています。
ゲームの歴史を作っている気持ちです。
歴史に自分の作品を一個一個載せたい、というのがあるんですね。

ユーザーを引き込む

ユーザーをゲームに引き込むには、ユーザーの心理から何を導き出すかがキーになります。
戦闘ゲームでは生存本能を呼び覚まし、恋愛シミュレーションゲームは性的欲求を生み出します。
そのために声をつけ、しぐさをつけて、「この女の子好き」っていう感情を呼び起こします。
その時にも一回パニックにさせる。
例えば、第一章で女の子が寄ってきて仲良くなる。
ところが第二章では突然音信不通になって、何を言ってもぷいっとされる。
そうやってユーザーを混乱させてから、その状態に「でもやっぱり好きでした」みたいなドラマを作る。
倒錯させることが重要です。
現実かゲームかわからなくなるような瞬間を作ってあげるんですね。
そうすることで没入感を一気に強めて、ぐっとゲームの側にユーザーを引き込む。それを何度も繰り返して、ゲームの奥深くまでユーザーをいざないます。そうすると、キャラクターの存在感が増す。
ゲームのリアリティは、ユーザーが作り出すリアリティ。
ユーザーの心理を操ることで、自身で作り出させるようにします。
ゲームが他のエンターテイメントと全く違うのが、インタラクティブということです。
ユーザーのコマンド操作でゲームに参加できる。
それはゲームにしかできません。
いわゆるアカデミックな研究ではないですけど、どうやればユーザーの心理を引き出せるかという研究です。
ユーザーを倒錯させて、ぐいっと引っ張るような仕掛けを何段階も作っています。

人工知能の意識を作りたい

人工知能が自分自身を認識するといいますか、何らかの仕掛けで意識とかを作れたらと思っています。
それを作れる可能性があるのはゲームだと思うんです。
ゲームには世界があるので。
目と耳と鼻と思考をつけて、感じたものを考えて、自分で動いていくところを、もうちょっと発展させれば、体験とか主観とか意思決定とか作れるんじゃないかと思います。
生きているうちにできるかはわからないけれど、そこにたどり着くまでの間に今までにない新しい技術なり知見なり、面白いものがたくさん埋まっている気がするんですよ。
今のところその方向に行きたいのは僕くらいです。
ちょうど僕は争いが嫌いなので、一人でとぼとぼ歩いて行って、「あー、なんかみつけた」みたいな。
そういうのができたらいいですね。

取材を終えて・・・

これだけゲーム業界において実績を作り上げているにも関わらず、幼い頃からプログラミングをされていたわけでもなかったという。
ただ、「うまく人間になりきれていない」という幼い頃から三宅さんの心の中にあった感情が独自のAI理論を作り上げたのかもしれない。
人とAIとの大きな違いの1つは何ですか?と質問した所「空間認識能力」であるとおっしゃった。
人は一瞬にしてその空間を認識し、歩ける所歩けない所がわかるが、AIは細かく教えないとその空間を歩けないという。
確かにそうだ。人は過去の体験・経験の中から良くも悪くも自分が正しいと思える世界を作り上げているのだろう。


プロフィール

三宅陽一郎(みやけ・よういちろう)
ゲームAI開発者京都大学、大阪大学、東京大学を経てゲーム会社に就職。
テレビゲームに組み込むAIの開発をしながら、人工知能の進化、発展のため尽力。IGDA日本ゲームAI専門部会代表。DiGRAJ理事、CEDEC委員。
【著書】
◆『人工知能のための哲学塾』 http://amzn.to/2sRe01V
◆『絵でわかる人工知能』 http://amzn.to/2qVhMa6
◆『人工知能の作り方:「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか』 http://amzn.to/2sRzdsm

  

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