創立115年を迎えるサーカスを継承するスゴい人!

本番中の事故、絶望の淵で気づいた大切なこと

社長になり、待っていたのは10億円の負債

夢は常に思い描き続ける

「サーカス」
それは見るもの全てを虜にする演技で、興奮と感動に満ちた夢の空間へと導く。
本日登場するのは、親子三代で115年間にわたりサーカスを守り続けるスゴい人。
年間120万人を動員し、その実績と歴史から世界最大三大サーカスとして名を連ねる木下大サーカス。
しかし、過去には10億円以上の借金を乗り越え今日に至る。
この危機に、逃げずに立ち向かった彼の心の強さの秘密とは。

さあ…
木下サーカス株式会社
代表取締役社長 木下 唯志様の登場です!


知らずに飛び込んだ厳しい世界

大学受験の時に早稲田、慶應、上智、明治を受けました。
慶應に入るために浪人しようと思ったんですよ。
でも父が浪人してはいかんと言うので、結局、明治大学に入学しました。
中学校で野球部を辞め、高校で柔道部を辞めたため、父から「お前は“けつわり(途中で投げ出す)”だ」と言われました。
その言葉が強く頭に残っていて、大学に入ったら4年間同じ部活動をやり通そうと決意していました。
でもどこに入ろうか決めていなくて、まず勧誘で連れて行かれたのが日本拳法部でした。
これは全然違うなと思い、その隣で練習していた体育会の剣道部に興味を持ち、入部しました。
20人入った同輩は、インターハイで優勝した連中とか、非常に有名な選手だらけでした。
そこに、私は厳しい練習を知らずに初心者で入ったんです。
結局、卒業まで続いたのは私を入れて4人しかいないんですよ。16人辞めているんです。上の代も下の代も4人。
それだけ練習が厳しくて、人数が一番少ない時期でした。

はじめに目指したのは別の道だった

姉、兄、姉、私の4人兄弟で、私は次男だからどこにいってもいいだろうということで、商社マンになろうと就職活動をしていました。
最終的に大学が金融に強かったので、就職課長の先生から「君は大学で苦労しているし、成績も優秀だから住友銀行と三和銀行を受けに行きなさい」と言われ、6月に三和銀行に内定しました。
家族会議で「家に戻ってこい」という話になったけれど、それを断って東京に戻ってまた勉強していました。
しかし10月に父が入院したわけですよ。
人生長いようで短いかもしれないと思い、結局、父と兄の言ったようにしようと、内定をお断りして木下サーカスに入社しました。

サーカスの世界を知る

木下サーカスを立派にしようと、入社前に約1ヶ月間海外のサーカスを見るためにデンマークのコペンハーゲンに入りました。
ロンドン、ブラックプール、マドリード、バルセロナと周って、そのあとローマ市内でイタリアの有名なサーカス団「オルフェイサーカス」を見ると円形のステージが2つあり「すごいな」と思いました。
そしてヨーロッパ最大のミュンヘンのクローネサーカスは3000人入る常設館に超満員ですよ。
また、ヨーロッパのオーナー達は実際に舞台に出ていることを知りました。
兄は営業だから、私は舞台に出ようと決めて日本に戻り、「俺が入る以上はすごい会社にするぞ」と青雲の志を抱いて入りました。
入社したらまずは道具の出し入れ、いわゆる後見からはじめました。
4月1日に入社して、5月の半ばぐらいから空中ブランコをスタートしました。
剣道をやっていたからか、一ヶ月で初舞台に立てました。普通ならあり得ません。
今でも剣道のマメ、空中ブランコのマメは残っています。

本番中の事故、絶望の淵で気づいた大切なこと

ステージに立って3年目に空中ブランコの落下に失敗して、第七頸椎を損傷しました。
それがきっかけで風邪をこじらせ、39度以上の熱が1週間あまり続きました。
しかし当時は受け手が1名、飛び手が4名しかいなかったから、体調が悪くてフラフラでも休めませんでした。
それから結局、3年間入院しましたね。
生きる歓びも望みもないわけですよ。
こんなことでは仕方ないなと思い、そこに行くとどんな病気でも治ると言われる、奈良の信貴山にある断食修行道場へ行きました。
約1ヶ月間の断食をして60㎏の体重が10㎏減り50㎏になります。
3年間で半年に1度、6回断食修行をしました。
そこで何を学んだかというと、感謝の心でした。
病気にかかるのは感謝の心が失せたときなのではと、6回目の断食の時に思いました。
でも、常に感謝の生活を送るのは難しいので、ふとしたときにそう思うようにしています。
また、寝るときに100回ありがとうと言って寝なさいと教えて戴きました。
言霊(ことだま)と言いまして、言葉の中に霊魂があるから、良い言葉を伝えれば良くなるし、悪い言葉を伝えれば悪くなることを感じるようになりました。私は40歳で社長になったんですよ。
脳幹出血で一年間寝たきりだった兄が、44歳の若さで亡くなったのです。
そして私が引き継いだ当時、木下サーカスには約10億円の負債がありました。
経理の先生や周りの皆さんから「木下さんやめよう。今だったらまだ木下家に10億円以上の資産があるから、全部払っても少しは残る。毎年何億もの赤字が出たらダメだからやめた方がいいよ」と言われました。
でもその時に、剣道部で培った絶対に諦めないという不屈の闘志が沸いてきました。
そのとき姫路で公演の予定になっていました。
父が姫路城の前でやれと言うので現地を見に行ったら、地下駐車場の上に公園がある、そこにのでトラックは入ってゆけない。機材が運べないわけです。
だけどその時私は妥協しないで、「その場所でやるためにはどうしたらいいだろうか」と考え、100トンの大型クレーンでそっと下ろし、人力で台車やコロを使って機材を移動し、その場所での公演を実現しました。
結果、多くのお客さんが来てくれました。場所が当たったんでしょうね。
それがスタートライン、大きな分岐点でした。
その時にお客さんが来なかったら、継続は難しかったでしょう。
「無理ですよ」と言って他のところに移っていたら、あれほどのお客さんは来てくれなかったかもしれない。
結局、10年間で10億円を全部払いました。
毎年2億円の黒字を出さないと半分は税金で持ってかれるから、大変なことでした。
その当時は事務所だってマンションを借りて寝泊りをして。
節約をしてお金がかからないようにしたこともありましたね。

夢は常に思い描き続ける

「Dreams come true 」
自分の夢や目標を常に描いておかなくてはいけません。
念というのは自分の思いだから、執念というか一念というか、岩をも通すような強い気持ちを貫いていくことが大切だと思います。
その際、色々な試練があるわけですよ。
その試練に耐えるためには、自分の健康が大切です。
だからリフレッシュしないといけません。
私の場合は温冷浴。闘病生活中に学んだ温冷浴をその当時からずっと続けています。

これから目指す道

世界で最高峰のサーカスのフェスティバルである、モンテカルロ国際サーカスフェスティバルでゴールドメダルを目指す。
モンテカルロプロジェクトです。
この大会には国立のロシアも中国も北朝鮮も来ていますからね。
木下サーカスの年間動員は120万人と世界でもトップレベルなわけですよ。
ただ動員数だけではなく、内容もどんどん良くしていますが、もっと良くしなくてはいけない。
それと同時に社員の福利厚生、待遇も良くしていきたい。
これらが一番大きな目標です。

取材を終えて・・・

取材前に公演を拝見しました。
社長自ら、入退場時一人一人に「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と挨拶されていました。
スタッフさんのおもてなし力、そして何より仮設トイレがとてもきれいに掃除されていて気持ちよく使えたことに感動しました。
長年続いていてこれだけ多くのファンがいるのは、社長をはじめスタッフさん全員が同じ想いでお客様と接しているからだと思いました。
お話を伺い、起こる出来事全てをプラスに考え、全てを活かして挑戦する方だと感じました。
取材時に「どんなショーが良かったですか?」と社長から質問され、私が「空中ブランコは憧れます」と言うと、その場でスタッフさんに電話をかけ、実際に空中ブランコを体験する事ができました。
私の中では、「飛ぶなんてあり得ないだろう」と思っていたので、この即決とリーダー力を目の前で体感できた事はとても光栄な事でした。
サーカスの世界大会で優勝するという目標を達成される日を楽しみにしています。


プロフィール

木下 唯志(きのした・ただし)
木下サーカス株式会社代表取締役社長、世界サーカス連盟大使
1950年岡山市生まれ。
1974年明治大学経営学部卒業。同年木下サーカス株式会社入社。
1981年常務取締役海外本部長兼務。
1991年4代目として同社代表取締役社長に就任。
2006年日本仮設興行協同組合理事長に就任。
2011年モンテカルロ国際サーカスフェスティバルの審査員に日本人として初めて選出される。
2015年1月モナコのステファニー王女より、世界サーカス連盟の2015年の大使 Ambassadeur du Cirque 2015に任命され、世界で6人目の特別大使となる。
明治大学体育会剣道部出身、剣道三段。

◆木下サーカスホームページ http://www.kinoshita-circus.co.jp/

◆札幌公演開催!
期間:6月10日(土)から8月29日(火)まで
会場:札幌市 旧 月寒グリーンドーム駐車場特設会場
詳細はコチラ
http://www.kinoshita-circus.co.jp/htmls/sche/sche-01.htm

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