ゲームの世界を現実にしたい
悩んでいる中で突然現れたチャンス
世界レベルでリサーチ
インバウンド(外国人観光客)の急増に伴い、宿泊施設の他にもう1つ不足問題が深刻化しているものがある。
それは、物の預け先。
大量の荷物を抱えながら、預け先がなく途方に暮れる“コインロッカー難民”を救う、物の一時預かりの概念を覆すサービスを考案した若き起業家が注目を集めている。
幼い頃より商売の世界に触れ、ITの進化とともに育ち、彼は何をきっかけにこのビジネスを思いついたのだろうか?
さあ…
ecbo株式会社
代表取締役社長 工藤 慎一様様の登場です!
小学生で初めてのビジネス
初めてビジネスをしたのは小学校3年生の時でした。
僕はマカオで生まれて、父親は経営者でした。
トレーディングカードにハマっていたのですが、日本では10円のカードが中国では100円で売っていたのです。
もしかしたら、上手くお小遣い稼ぎできるのではないかと思って、父親に交渉して1万円をもらい、日本で買ったカードを中国で売ってみたのが最初のビジネスです。
結果的に売上が14万円、利益としては13万円になりました。
ポーチに沢山お金が入って楽しいなと思ったのですが、買ってくれたカードショップの人が「ありがとう」と言ってくれたのが嬉しかったです。
お金を頂きながら、喜んでもらえる商売に興味を持つようになりました。
小学生から大学生までトレーディングカード以外にiPhoneケースやモバイルバッテリーなど色々なものを売買しました。
両親とはよくビジネスの話をしました。
需要と供給のバランスをつかめずに、買いこんだ商品を売ろうとしたらすでに物流が整って供給が行き届いていて、全く売れずに赤字になるなど失敗も沢山しました。
ゲームの世界観を現実にしたい
商売以外に興味を持ったのがテクノロジーでした。
ロックマンエグゼというゲームが影響を受けたものの一つでした。
舞台が100年後の世界で、インターネットに繋がっているスマートフォンのような端末を全人類が持っていました。
その中で自分の分身となるAIを持った「ネットナビ」が何でもやってくれました。
その世界観が面白いと感じたのです。
僕の場合はお金を儲けたいというより、価値提供していきたい考えが強いんです。
ロックマンエグゼで繰り広げられる、インターネットと現実世界が繋がる様な、イノベーションを起こしたいんです。
Uberが日本でも立ち上がる時、直感で「このビジネスは大きくなるから触れておきたい!」と思いインターンシップしました。
ただ、実際にUberで働いてみると周りはビジネスの世界で百戦錬磨、チームとしての仕事の仕方も一流でした。
僕はUberに大きく貢献できませんでしたがこの人達に追いつき、追い越すにはどうすればいいのかと考えるようになりました。
冷静でいるためにしている習慣
参考になったのはサッカーです。
活躍する選手、評価される選手は天才かどうか以上に、継続したバリューを発揮できる人であり、メンタル面の強さが大事だと気づきました。
上手くいかない時やストレスがかかった時は自分のパフォーマンスを上手く発揮出来ません。
そんな時は自ら作ったメンタルチェックリストを読み上げ、客観視するようにしています。
これは常に更新しています。
メンタルが強い人は冷静に自分のビジョンを見据え、適切な行動を取り続けているのです。
サービスをスタートし3ヶ月で多くの媒体に取り上げられ、昔の自分だったら調子に乗って浮足立ってしまったと思います。
だけど自分を客観視することで冷静に次の目標に向かって行動出来るようになりました。
悩んでいる中で突然現れたチャンス
自分の強みは小学生の頃から商売の事を考え続け、実践してきた事です。
Evernoteにも無数のビジネスアイデアを書き留めています。
世の中にまだ存在しないものを作ること、0から1を作るのが得意でもあります。
そして、数々のアイデアの中から実現出来そうで、一過性のものでなくインフラとしても広がりのある、デリバリー付きのトランクルームをやってみようと思いました。
やってはみたのですが、ベンチャー企業がやるビジネスにはまだ早いと悩んでいました。
そんな中で転機になったのが、2015年8月中旬に渋谷を歩いていた時に外国人から荷物の預け先を探していると声をかけられた事でした。
40分探したのに見つからない。
後で調べてみると、渋谷にはコインロッカーが1400個しかなく、大型のコインロッカーに関しては約90個しかなかったのです。
世界レベルでリサーチ
コインロッカーが足りないからコインロッカーを増やす、荷物預かり所を作る、というのは場所の確保や、投資が掛かりすぎる。
デッドスペースのあるカフェにスーツケースを預けられるサービスがあったら面白いんじゃないかと思いました。
世界でもまだ誰も始めていなくて、各国の法的にも問題がないかも調べました。
翌月に試験的なサイトを作って、渋谷の馴染のカフェに協力してもらい、手ごたえを感じました。
コインロッカーの歴史を調べたら、1964年(前回の東京オリンピック)に生まれ半世紀経っても殆ど変化をしていなかったのを知り、「コインロッカー難民」を救うべく、今年(2017年)1月にリリースしました。
ブランドの信頼を築き、ファンを増やす
東京海上日動さんと業界初の保険も作りました。
一見すると、安全な日本だから成立するモデルだと思われてしまうかもしれませんが、他人の車に乗るのは怖いと思われたUberも、今はみんなが安心して乗れる。
そういったブランドイメージと、企業が担保する安全・安心を提供したいと考えています。
2018年3月迄に全国1万店舗を目指しています。
まずは、店舗数の拡大とユーザビリティ改善を優先しています。
1000万人のユーザーを獲得するより100人のファンを作ろうと僕らは意識してやっています。
店舗側にとっては負担がなく、副収入も得られ、ユーザーは事前に予約できて安心して荷物預かり出来る。
預けるついでに店舗サービスを利用してくれたら、店舗はさらに嬉しいですよね。
将来的には海外旅行する時に預けた荷物が、遊んでいるうちにホテルの部屋に届いている。
そんな世界を目指しています。
取材を終えて・・・
お名前から予想される通り、愛称はコナン君でした。
弱冠26歳にもかかわらず、グローバル視点を持ったビジネス展開をされているのは、育ってきた環境が大きいのだろう。
お金儲けではなく、世の中に新しい価値提供をする事を喜びとする若者は、どんどん増えている。
大手物流会社が運送費の値上げに踏み切ったが、コナン君曰く「システムを改善すればまだ効率化を図れる」という。
日々、自分の心と向き合い社会貢献を使命とされて活躍している若者が、これからの世の中を大きく変えて行くのだろう。
プロフィール
工藤 慎一(くどう・しんいち)
1990年生まれ。日本大学経済学部卒。
2014年、Uber Japan 株式会社にてインターンを経験。
2015年6月、ecbo株式会社を設立し代表取締役社長に就任。オンデマンド収納サービス「ecbo」をβ版運営。
2017年1月、世界初のシェアリングサービス「ecbo cloak」を立ち上げ。
◆会社ホームページ https://ecbo.io/
◆荷物一時預かりサービス「ecbo cloak」 https://cloak.ecbo.io/