『伝説巨神イデオン』を始め数々のアニメに携わってきた、アニメーションクリエーターのスゴい人!

「刺激」を受けし出会い

負けず嫌いでアニメーターに!?

ここからが佳境!

『樫の木モック』『科学忍者隊ガッチャマン』『銀河鉄道999』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』…
特にアニメに詳しくない方でも、いずれかは知っているであろう、綺羅星のようなタイトルである。
この全てに関わったアニメーターが、本日登場するスゴい人。
仕事を始めるまで、アニメにはまったく興味が無かったという。
どのような経緯で、アニメの世界に入ったのか?
一時代を築いた作品群はいかにして生み出されていったのか?

さあ…
アニメーションクリエーター
作画スタジオNEOX 顧問 湖川 友謙様の登場です!

「色」へのこだわり

子どもの頃から「色」への興味は強く、小学生の時、ぬり絵の見本のバランスが嫌で、勝手に塗った記憶があります。
サンライズの4作品、『伝説巨神イデオン』『戦闘メカザブングル』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』では、監督から「色監督をやれ!」と言われ、私の色相感が体現されていると思います。
彩色のプロの方の助言もありましたが、主張を押し通した。
色の世界は感性なので、1ヶ所でも他の意見を入れると、世界が成り立つ事は無いからです。
今考えると、若い頃は結構強引だったとも思う。
しかしながら、それぞれの作品に色世界を語っている自負も、またある。
私の色使いを理解できないと語る人達もいますが、色彩感覚は自然から吸収し、学び取ったものを咀嚼し、個人の中からのみ生み出されるものだと思います。

「刺激」を受けし出会い

中学時代、抽象画が得意な先生がいたんです。
デッサン力に優れ、生徒の作品に赤い点を3つ足しただけで「道展」に入選させたほどの方。
授業中に「独創性」を語り続けていて、私は大変に影響を受けました。
なので、私はいまだに「独創性」を求めています(笑)
高校1年生の時、友人に借りた「ボーイズライフ」に、さいとう・たかを先生の『007』新連載予告の画が載っていました。
「ナンダコレハ!すげえ!!」と、画にぶっ飛ばされるような衝撃を受け、何度も模写したものです。
これを切っ掛けに、メカしか描かなかった私がマンガの人物画を描くようになったのですが、高2で立体に心動かされ「日本のミケランジェロになる」と志を彫塑に決定。
立体は平面を超えていると感じたのです。

負けず嫌いでアニメーターに!?

20歳のある日、知人が「東京ムービー」を受けるというので、私も試験に興味があって同行しました。
ですが知人は落ち、私は内定をいただいたものの、アニメを描く事に抵抗があり、悩みました。
初日は無断欠勤(笑)
折角なので覗いてみようかと、次の日に午後からのんびり出社。
出社3日目は〆切日で、作画監督から「湖川も動画をやれ!」と言われたんですが、人に聞くのが嫌で、自分で考えながらの作業でした。
「原画」はポーズから構図から全部決める仕事で、「動画」は原画と原画の間を繋ぐ仕事、その上に作画監督がいるんです。
私の初めての動画を見た作画監督から「お前は原画をやれ!」と言われ、流石に前知識無しでは、と拒否したんですが、しばらくして結局、原画もやる事になりました。

竜の子プロダクション外注時代

東京ムービーを9ヶ月で退社し、フリーランスの人生が始まります。
22歳の頃、『科学忍者隊ガッチャマン』で、アオリ(下から見た顔)、フカン(上から見た顔)の描き方理論を、サイコロに目を付けたものをヒントに見つけ出し、同時に自分なりの「立ちポーズ」も見つけ始めていました。
そして『樫の木モック』で、パース(遠近法)の根本となる「アイレベル」という考え方を見つけ出した。
この事は私にとって多大なる「目から鱗」でしたし、理論本を出版した時、目を持って開眼したので、eyeをとって「eye level」と造語し、発表しました。
その後、パースを取得したお陰で、困難であったメカの描き方が簡単に理解できた。
拙著『アニメーション作画法』は、20代の学びから生み出された結晶と言えるのです。

東映アニメーション外注時代

竜の子プロの先代が亡くなられ、以前から誘いのあった東映動画の外注となりました。
2年が過ぎた頃、私を大切に思ってくれていた制作の方から、劇場長編のキャラデザインと作画監督をやらないかと誘われました。
それがいつの間にか『さらば宇宙戦艦ヤマト』の依頼に変わっていて。
『ヤマト』は、メカからエフェクトまで、パースの実力が発揮された仕事だったと思います。
『銀河鉄道999』は、私の想う作画で、鉄郎とメーテルが走り過ぎて行きました。

サンライズでの価値観

『イデオン』という世界は、漫画ではない画、動きを模索しました。
主なロボットデザインは3体、「バッフ・クラン」(敵方)側の軍服は、良くあったドイツ軍服のモチーフを避け、着物から発想を得ました。
今考えると、穴開きファッションの先駆けかも(笑)
バッフ・クラン側の「白色」の強いイメージは、具体性を生み出せた。
劇場版では人物の動画を全て手直ししました。
これは私にとっても前代未聞でしたね。

『ザブングル』一考

この作品でのロボットデザインは数多く手がけていますが、最初に手がけたのは「プロメウスタイプ」でした。
子どもの頃から家で鶏を飼っていたんですが、私は鶏の脚の「バネ感」がやたら気になっていました。
それが感覚に取り入れられたんでしょう。
現在でも言われている、いわゆる「鳥脚メカ」の始まりでした。
日本でも模倣されていますが、実写では『ロボコップ』の敵メカがそのまんまで、制作スタッフが「日本のアニメをパクった」と証言しています(笑)
他にも数多く使われていますが、また別の発想が必要ですね。
鳥脚ばかりでは、個性が無さ過ぎる(笑)

『ダンバイン』での実験

キャラデザインでは、最初のイメージを止め、目のハイライトを多過ぎるほど入れてみた。
可愛らしさとは何か?
意図的に魅力的なキャラを作って、ファンを取り込めるのか?
気味悪さとは何か?
と、実験をしたくなって、出来上がった。
今思うと、悪影響も与えた、と反省点もありますが、何か事を起こすと、その裏面も同時に走り始めるのが現実なのです。

再びの『ヤマト』

『宇宙戦艦ヤマト復活篇』は、ほとんど私の思いを出し切れていない状態と思っています。
もし2部が有るとして私が関わるとするなら、本来の『ヤマト』構築の為、力を添えたいですね。

ここからが佳境!

作画法については、その後の発見・発想、問題点も多い為、今後も出版していく予定です。
2017年は6月に画集出版、7月に『ダンバイン』Blu-ray BOX発売、8月は恒例の東日本大震災チャリティの7回目を6日間開催して、9月は舞台を9公演こなしました(笑)
でも、まだまだこれからが佳境。
現在はとあるゲームのキャラデザインと画面構成、アニメ『日本の昔ばなし』の絵コンテを作成中です。
TVシリーズのビジュアル監修と3D監修や、10月からはまた別のシリーズの作画監督と動物のアクションチェックの仕事も始まります。
他にも作画監督と原画を一人で担当する話もあって…。
とにかく、やりたい事、多過ぎかな(笑)

取材を終えて

「湖川立ち」と呼ばれる独特の立ち姿の描き方、現在アニメ業界で使われている概念・用語を多数持ち込まれたこと。
アニメーションでの業績は知っていたが、どのような方なのかは存じていなかった。
昨年から芝居に出演したり、何年も持続してチャリティを開催したり、60代後半とは思えない行動力。
エネルギーに満ち溢れている、というのが第一印象だ。
「若い人たちが元気がないと心配になっちゃって。明るい顔で帰ってもらえると安心するんだよ」というお言葉の通り、語るお話は全てが面白く、何度も噴き出してしまった。
また折にふれてお話を伺いたいものである。
仕事では、現在3Dの世界に足を踏み入れているという。
「アニメーションは一生やっていくからね」
今後の活動からも、目が離せない。

プロフィール

湖川友謙(こがわ・とものり)
アニメーションクリエーター

1978年『さらば宇宙戦艦ヤマト─愛の戦士たち─』で劇場作品の初作画監督を務める。
1980年『伝説巨神 イデオン』でキャラクターデザイン、作画監督を担当。
以降、富野由悠季監督とコンビで『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士 ダンバイン』『重戦機 エルガイム』を相次いで発表、ロボットアニメの一時代を築く。
1986年に発表した作画技術書『アニメーション作画法』『アニメーション作画法・実技編』は、後続の多くのクリエイターに影響を与えた。
その後も『さよなら絶望先生』『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』『宇宙戦艦ヤマト2202 嚆矢篇』など、数々のアニメ作品に携わっている。
2011年の東日本大震災を受けて、毎年チャリティイベントを開催しており、2017年8月13日には7回目のイベントを立川市で開催。
また、2016年より役者もこなしており、2017年9月6日〜10日、中野区「ウエストエンドスタジオ」で二度目の舞台出演を果たした。
2017年11月26日には、好評の内に幕を閉じた舞台の感謝イベントに登壇する予定。

◆湖川友謙オフィシャルブログ
http://mo111room111.blog71.fc2.com/

◆近刊『湖川友謙 サンライズ作品画集』

◆聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX I 湖川友謙イラスト複製原画セット

◆株)酔いどれ天使 第4期臨時株主総会『Re:エンジェルナイツ』感謝祭(舞台)

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