カレー好きなら聞いたことがあるだろう、神田カレーグランプリ。千代田区 神田には全国でも有数の400店以上のカレー店がひしめく。その神田で2011年から開催される神田カレーグランプリを立ち上げたのが 中俣拓哉(なかまた たくや)氏。日本人にとってカレーは家庭料理の代表格で、だれにでも大切な味が一つはあるだろう。まさに日本の食文化の代表メニュー、カレーの激戦区でナンバーワンを選ぶこのイベントを主催する氏にここまでの生き方とカレーにかける意気込みを伺った。
カレーのパワーで日本を元気に!
僕でもできる!って勘違い
ところがですね、私はここで大きな勘違いをしてしまいました。そういうビジネス雑誌でしか見ないような方々と実際にお会いしてみると、WEBやマーケなんかの知識は俺の方が上だなとかね。そりゃそうです。素晴らしい経営者ですから聞く力もスゴイわけで、スクエニ社の事業企画担当者のプレゼンも真剣に聞いてくださる。スクエニ社の名前があるからお会いできているわけです。
それに加えて、当時はいろんなアイデアを社内で提案していたのですが、やはり会社の方針や上司の意向など、様々な理由で実現しないわけですよ。ま―それが会社としては普通ですよね。だけどそんな中で勘違いしてしまって、僕のアイデアはスゴイ。これなら僕が自分でできるんじゃないか、いや、自分でできるぞ!なんて勘違いしてしまい、そのうえ何もチャレンジしてこなかった自分を変えたい思いも手伝って退職、2005年に独立をしました。
自分の想いや考えを仕事に!
それから1年くらい紆余曲折あり、長年温めていたアイデア、「予防医学」を扱う会社を設立したんです。コスメやサプリを取り扱って、来る超高齢化社会に向けて、寝たきりや介護状態をできるだけ短くできるような商品を創りたいという思いがありました。まだ予防医学という言葉も主流ではなくてね。同時に、スクエニ時代に考えていた地方創生、地方の産品を使ったエンタメというのを実現していこうと動き始めました。当時、僕のこの考えに賛同してくれた社長さんが千代田区在住で、神田祭りやさくら祭りなどいろいろな地域活性をやっている方だったんです。それで代田区活性化で何かやってみないか。というお声がけをしてくれて。そこで始めたのが、さくら祭り会場で地方の特産品を集めたイベント。何年か繰り返すうちに、秋のスポーツ祭りでも食のイベントをしないかとの話をいただきました。そこで、地方の出店と並んで神田のカレー店に出てもらったのがきっかけで生まれたのが、神田カレーグランプリです。
仲間に救われたどん底時期
2011年に神田スポーツ祭りの特別イベントとして第一回がスタートしました。イベント自体は順調で話題性もあったので第二回、第三回と開催、企画も進んでいたのですが、2013年、スポーツ祭りの主催者がカレーグランプリから離れることとなりました。もともとスポーツのイベントなのにカレーイベントの予算を負担するのはどうなのか?といった理由もあったかもしれません。一方で、私たちのほうでは予算面でも頼れるものがなくなり、すべて自分たちで調達しなくてはならなくなりました。
ほぼ時を同じくして本業の事業では大手取引会社3社が薬事法で引っかかってしまって、売上げを維持することが困難な状況となりました。カレーのイベントのために動けば動くほど、お金にならないという状況だったんです。社員もいましたし、私自身の生活もある。イベントは収益と呼べるものはまったく期待できず、赤字になれば補填すれしなければなりません。かなりなどん底ピンチでした。
さすがに悔し涙が出ましたね。でもそこで助けてくれたのが今まで一緒にイベントを創ってきた仲間だったんです。僕が会社の事業に専念する間、仲間たちが手を貸してくれて、イベントの運営を進めてくれました。「中俣はただ委員長でいてくれればいい、あとは僕たちでやるから」と。予算や人手は依然足りていない状況なのに、です。本当にこの時の仲間の想いに救われたし、今でも感謝をしています。
デザインなど何でもやってきたスキルが身を助ける
会社の方は、従来のように商品販売で売上を戻していくにはまだまだ時間がかかりそうでしたので、まずは広告デザイナーとしてチラシのデザインやウェブサイト、ランディングページを創ったりして売上げをつくりました。サプリやコスメなどの販売経験から薬機法の知識がありましたから、使ってはいけない表現などがわかっていたので楽天などの大手サイトさんから需要があり、結果的にまた広告代理店のような仕事をすることとなりました。経験がまさに自分の窮地を救ってくれた瞬間でした。
片方で、仲間たちがつないでくれたカレーイベントは着実に知名度を上げていきました。TVなどメディアでも露出が増えるようになりましたし、予選に出たいというお問い合わせも増えていきました。このイベントの果たす役割はたくさんあって、もちろんカレー好きの参加者に神田にある多彩なカレーの名店を紹介できる場であることはもちろん、カレー店同士がお互いに知識や経験を共有してさらに技術を磨いていく機会でもあります。参加してくださった日本人のシェフも外国人のシェフもみんな自分のカレーに自信を持ち、そして日々研鑽を積んでいます。改めてこの神田カレーグランプリというイベントは日本のカレーという食文化を通して、社会に良い影響を広められる素晴らしいイベントだなと考えています。
神田カレーグランプリのこれから
イベント当日は参加者による投票方式で、食べたお客さんが気に入ったお店に投票をしていきます。グランプリ決定戦とは別に約4ヶ月半におよぶスタンプラリーを開催しており、全店を制覇した参加者には神田カレーマイスターの称号を授与します。広くから集まるこのマイスター達は横のつながりもできて、お互いに交流を深めています。この10年以上に及ぶベントの開催の中で、少しずつ少しずつ工夫や改善をして今日があります。コロナの時も、外でのイベントではありましたがたくさんの困難を乗り越えて開催しました。今後も時代に合わせてイベントの在り方は変化していくこともあると思いますが、その前向きな変化も含めて人々や地域の発展を支えるイベントでありたいと思います。また、この神田カレーグランプリのノウハウを活かして、地方で例えば岩手カレーグランプリなどを開催できたらその地方の活性化にお役に立てたり、新しい人的交流が深まったりすると思いますので挑戦してみたいですね。カレーは世界の多様な文化を、食べることを通して共有することができますし、さらに人と人が繋がれる素晴らしさがあります。カレーは世界を平和にすると本気で考えています!
中俣拓哉氏 プロフィール
1969年 埼玉県生まれ
神田カレーグランプリ実行委員会 代表
2024年神田カレーグランプリ決定戦!