今日から2日間にわたってご紹介するのは、女優のえまおゆう様。難関で知られる宝塚音楽学校の受験をどのように突破し、誰もが憧れるタカラジェンヌのトップにまで上り詰めたのか? 今だからこそ話せる宝塚の世界の裏側とともに、えまおさんのスゴさに迫ります。
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宝塚トップスターの原点
編集部(以下編):本日はよろしくお願いいたします。
えまおさん(以下え):よろしくお願いいたします。
編:トップスターにまで上り詰めたえまおさん(※宝塚時代は絵麻緒ゆう)ですが、幼少期はどんな感じだったんですか?
え:4人兄妹の末っ子だったんですけど、あまり姉や兄と似てなくて、近所でも「病院で生まれた時、間違えてもらわれちゃった?」とか「上のお嬢さんは綺麗なのに一番下の子はお粗末よねと」と言われるほどでした(笑)。
編:それは酷い! 意外ですね。
え:でも、すごく言われるもんだから、自分にはだらしないイメージがずっとあって。小学生の時はいつもスカートじゃなくてパンツスタイルでした。
編:パンツが似合う活発な女の子だったんですね?
え:よく近所の小さい子を集めて学校ごっことかしてましたね。積極的でとりあえず自分で何でもやりたがるタイプ。例えば、ある女の子がある男の子のことが好きだってわかったら、男の子のランドセルを奪って「この子とちゃんと仲良くしてくれたら返してあげる!」みたいなことをしていました(笑)。昔から正義感だけは強かったと思います。
憧れてもいなかった宝塚を目指した意外な理由
編:そんなえまおさんが宝塚と出会ったきっかけは何だったんですか?
え:11歳離れた一番上の姉がフォーリーブスの大ファンだったんですが、出待ちをして帰りが遅くなって父にこっぴどく怒られたことがあったそうなんです。でも宝塚歌劇なら男の人の追っかけでもないし、観に行っても良いという許しが出たらしく。それで姉が宝塚にハマって、私も小さい頃から家族によく連れていってもらってたんです。3歳くらいからじゃないかな。
編:お姉さんは宝塚を目指そうとはならなかったんですか?
え:なったんですよ。ところが、姉が宝塚に入りたいと言い出した際、矢代の叔父(※劇作家で宝塚の演出経験もある矢代静一氏)が、「お姉さんは宝塚に向いてないけど、一番下の子は何か持ってるから、入れるならあの子だよ」と言ったらしくて。それで時が流れて、今度は姉が私に「あんたが宝塚を受けなさい」と言い出して、化粧品で宝塚っぽいメイクをさせられたりしていました(笑)。叔父には「やるなら男役のほうがいい」とアドバイスされて、中学くらいから身長を伸ばすために母にはやたらめったら牛乳を飲まされていましたね。
編:それで、えまおさん自身も宝塚を目指そうとなった?
え:「じゃあ入ってあげてもいいけどね」くらいな感覚。私はトシちゃん(※田原俊彦さん)が好きで、テレビで振付を覚えては次の日に学校で踊ったりしてましたから。あとは山田邦子さんみたいにモノマネタレントになりたいとも思っていました。自分では宝塚に憧れとか全然なかったんです。
編:え~。そんな子がなぜ宝塚に!?
え:うちの従姉妹(※女優の毬谷友子さん。矢代氏の次女)が先に宝塚に入ってたんですが、ある時「ぶんちゃん(※えまおさんの愛称)はお嬢さんだし、あんな大変な所は絶対無理よ。入ったところですぐ辞めちゃうわよ」って言われたんです。でも私、そう言われると負けず嫌いなんで「じゃあ、やってやるよ!」とムキになって(笑)。
編:具体的にはどのように頑張られたんですか?
え:高校2年で宝塚音楽学校を受験してるんですけど、1年生の終わりくらいから宝塚受験のためのバレエに通ったり、声楽の先生に習ったり、日本舞踊も元宝塚出身の先生に学びました。宝塚音楽学校で教えている歌の先生のところにも東京から関西まで稽古に通いましたね。1週間、稽古三昧。
編:受験まで怒涛の1年だったんですね。負けず嫌いの原動力、スゴいです。
え:ええ、そこから勝負のように必死に。振り返ってみれば、人生で一番がんばった1年かもしれない。
天海祐希さんも一緒だった! 宝塚音楽学校の受験秘話
編:宝塚音楽学校を受験した時の印象に残っているエピソードはありますか?
え:第三次試験の当日に母と大ゲンカしました(笑)。泊まりで関西に行ってたんですが、試験会場に受験票を忘れちゃったんです。当時は携帯電話もないので宝塚ホテルまで猛ダッシュで戻って、下のロビーから部屋に「ママ! 受験票をテレビの横に忘れてきちゃった! いま下にいるから持ってきて!」って電話したんですね。そしたら母が「前の日からちゃんと準備して行きなさいって言ったでしょ! そんなんだったら落ちるわよ!」って怒り出して。私も「うるせえクソババア!これで落ちたらママのせだからね」ってホテルのロビーで言い返して、会場まで走っていきましたね(笑)。
編:やっぱり負けん気がスゴいですね(笑)! 実際の試験はどんな感じなんですか?
え:最後の三次試験は10人でグループ面接でした。私の順番は10人のうち9番目で、面接では器械体操をアピールしようと思ってたんです。でも、先に3人も器械体操をして被ってしまい、四人目でこれは敵わないと思って、急きょ得意なトシちゃんのモノマネをしました(笑)。お団子頭でレオタードにゼッケン付けて素足で「I say Bye-Bye 哀愁でいと~♪」って、脚を上げて『哀愁でいと』を歌ったら審査員がみんなゲラゲラ笑い出して。あと1人受験生が残ってるのに会場はしばらく笑いがおさまらなかったです(笑)。
編:宝塚の面接でモノマネって前代未聞じゃないですかね(笑)。
え:喜多弘先生という劇団の振付の先生が試験官でいらっしゃったのですが、(先に宝塚に入団していた)うちの従姉妹に「お前の従姉妹おもしろいな~。面接でモノマネしてたで。審査員の先生みんな点数を書き換えてたで」って言ってたそうです。結果、私は合格者42人中、入学成績3番で入ったんです(笑)。
編:スゴーい!! ちなみに1番は……?
え:天海祐希。
編:そうなんですね。天海さんはどんな感じでした?
え:彼女とは受験の前から友達だったんですが、ブルック・シールズみたいだなと思っていつも見てました。「ゆりちゃん(※天海さんの愛称)やっぱ綺麗だね」って私が言うと「何いってんのよ~」って感じ(笑)。
宝塚独特の厳しい規則に涙も…‥
編:こうして見事、1985年に宝塚音楽学校に入られたわけですが、入学後はやはり大変でしたか?
え:ええ、厳しかったです。入学式の前日に説明会があって規則書みたいなのを渡されるんですけど、それを覚えてこいなんて言われないわけです。でも、入学式が終わって教室へ移動する時に「入り方が違う!」と、いきなり注意されるわけ。ドアノブを片手で持っちゃいけないとか、教室の入り方だけでもいろいろ決まりがあって中に入れてもらえないの!
編:入学早々、洗礼があったんですね。
え:自主的に覚えてなかったのも悪いんですが、他にも、どんな重い荷物も必ずバケツ持ちで持たなきゃいけないとか、本科生の方(※宝塚音楽学校は2年制で、1年目は予科生、2年目は本科生と呼ぶ)に喋りかけるときは「失礼します。お願いします」と最初につけないといけないとか、とにかく規則がたくさんあるんです。ゆりちゃんと2人で「どうしよう、ここは何なの……」みたいな状況になって(笑)。入学式に来てくれていた姉は、「明日から大変だから、みんなで美味しいものでも食べに行こう」って言ってくれたんですが、1日目から外食している姿が誰かに見つかったら大変だと思って、結局姉に“ホカ弁”を買って来てもらいました。
編:いきなりそんな心理状態になってしまうとは……。
え:もう怖くなってビビってました。ピンで前髪を留めて、おでこを出さなきゃいけないっていう規則もあったんですが、「ピンの留め方が汚い」と注意されて、ゆりちゃんと2人で泣きながらピンを留める練習をしたのをよく覚えてます。
編:宝塚音楽学校といえば寮生活の厳しさも知られますが?
え:そうそう、中々お風呂に入れなかったんですよ。
編:えっ!?
え:寮のお風呂って、入浴時間が午後7時から8時半までが予科生、8時半から10時半までが本科生って決められてたんです。私は学校の講堂掃除の担当だったんですが、学校が閉まる8時まで本科生が1人でも残っていると帰ることができなかったんです。学校から寮までダッシュしても15分はかかる。でも、予科生って8時から8時半までは本科生にお風呂を渡すために掃除しないといけなくて、実質8時までに入浴しなきゃいけなくて。
編:全然、間に合わないじゃないですか!
え:そう、だから我慢できなくて夏とかは介護用品で身体を拭いたりしていました。(笑)。
宝塚音楽学校時代のターニングポイント
編:厳しかった音楽学校時代に、ターニングポイントになった出来事はありますか?
え:本科生になった時なんですが、羽山紀代美先生という大好きな振付の先生がいたんです。男役と女役のペアダンスする授業の時に、先生が女役になったりして振付をするんですけど、ゆりちゃんを男役のパートナーに選んですごくショックを受けたこともあるくらい惚れ込んでいました。その羽山先生に本科の最初の頃「そんな太ってたら踊れないよ」って言われたことがあるんです。私、予科の時に太りすぎちゃってて、好きな先生にそんなこと言われたのがすごくショックで、そこから急激にダイエットしました。1週間に5キロとか。
編:やると決めたらトコトン突き進む、えまおさんの本領発揮ですね。
え:でも食べずに一気に体重を減らしたので体調を悪くしちゃって、ちゃんと食べて痩せようという方向に転換しました。学校が終わるとすぐ夕飯を食べて、自主稽古をして次の朝まで何も食べないとか。それと同時に、ダンスだけは成績あげようと毎朝、予科生が掃除するタイミングから一日中、踊っていました。そんな生活を続けて、羽山先生から「それ以上、痩せなくていいよ」って言われた時は、すごく嬉しかったですね。結果的に、ダンスの成績は卒業の時に1番になって、卒業成績も4番でした。
編:さすがですね。ちなみに、えまおさんには「自分もこうなりたいな」と思うような理想の先輩はいらっしゃったんですか?
え:特にいなかったです。大地真央さんとか、従姉妹と同期の三城礼さんとか、素敵だなとは思う方はいましたけど、自分の憧れている人は自分と同じタイプではないから(笑)。だから「ダンスならこの人」「セリフはこの人」みたいな感じで目標にしてたかな。
(明日へ続く)
インタビュー:アレス 校正:NORIKO ライター:西秀進
◆Profile えまおゆう
1987年 4月 宝塚歌劇団初舞台 星組に配属 歌、ダンス、芝居と三拍子揃った華やかな男役として活躍
2002年 雪組トップスターに就任
2002年 9月 宝塚歌劇団退団
退団後は女優として数多くの舞台に出演、また歌手としてもコンサート、ディナーショーなど様々なステージで活躍している。
◆CD 「Un Sourire / えまおゆう」 価格:2,000円(税込み)
収録曲 「This is My Love」 「And Now」 「See You」 「Smile」 全4曲
DRUMS:岡本敦男、まぁびい BASS:山田章典 GUITAR:本園太郎 KEYBOARD:青柳茉莉 SAX FLUTE:大堰邦郎 ACCORDION:桑山哲也 CHORUS:久路あかり
お問い合わせ ブンズメイト:bunsmate@mail.goo.ne.jp
◆えまおゆう バースデーライブ2020
・日時 9月26日(土)19時30分開演 ☆シークレットゲスト出演あり
・場所 ラドンナ原宿
東京都渋谷区神宮前4-28-21ハーモニー原宿B1 03-5775-6775
最寄駅 JR山手線「原宿」駅より徒歩7分
・チケット代金 ¥12,000(ワンプレーのお食事とウェルカムドリンク付) 座席完売御礼! 生配信はまだございます!
チケット申込はこちらから bunsmate@mail.goo.ne.jp
・生配信 視聴チケット¥3,500-(販売手数料 ¥100-) 生配信チケット残り僅かです!
チケット申込はこちらから https://twitcasting.tv/c:mzrecords/shopcart/25857