今回ご紹介するのは埼玉県川口市にある航空機手荷物入れ用ミラー世界シェアNO.1のミラーメーカー、コミ―株式会社の代表取締役、小宮山栄様。ご自身の才覚と努力で日本を、世界を便利にそして安全へと導いてきた方です。生活の中にある「?」を形にする。まさにマーケティングの王道を体現した方とも言えます。
コミ―株式会社 小宮山栄社長様 DAY2
DAY1を読む
ミラー開発のきっかけ
そんなある日、知り合いの方が凸面ミラーをもってきました。回転看板にでもつけてみたらというので2枚貼り合わせてね、中の空洞にモーター入れて、自動でぐるぐる回るような鏡を作りました。それを天井からぶら下げているとね、風もないのに、なぜ回転するんだとみなさん不思議に思って、面白がってくれました。ただ、作ってみたものの、具体的な使い道はまだ思いついてなくて。そこでこれを「回転ミラックス」という名前で展示会に出してみたんです。そうしたら一度に30個注文してくれた人が出ました。作っておいて、販売しておいてこう言うのもなんですが、「30個も何に使うんだろう」と(笑)。思い切ってその会社を見に行きました。田端銀座商店街にある、当時は総合スーパーの「白菊」さんです。入ってみたらね、回転ミラックスが3階までの各階に10個ずつ、天井からぶら下がってぐるぐるぐるぐる回転してるわけ。不思議な光景でしたよ(笑)。それはなんと万引防止のためだったんです。当時の白菊さんでは万引きによる損失というのに悩まれていましてね。その解決に使えると思ってご購入くださったわけです。なるほどなぁ。と思いましたね。自分の「なんだかおもしろそう」が誰かの役に立つ。これがまさに今も続くコミーの原点です。それを実感、体感した瞬間でした。「面白い」だけでは駄目で、その先にユーザーを満足させられるのかという視点が無いとビジネスにはならないのだと理解しましたね。そこからうちはショップミラーのメーカーとして新製品をたくさん開発するようになりました。店内にミラーを設置することで、お客様の動向が見えるようになります。商品を探しているお客様を見つけてすぐにお手伝いができるようになったりして、万引き防止のみならず、顧客サービス向上や売り上げアップにも効果があったのです。この鏡は「気くばりミラー」という商品名で会社の業績を大きく上げました。
衝突防止のためのミラー
ユーザー視点が教えてくれるビジネスの種
広い範囲を映すミラーは通常は凸面ですが、平らで、貼るだけで広く映るミラーはできないかと思って開発したのが世界初の「FFミラー」です。当初はエレベータで役に立っていましたが、航空機の手荷物入れにあったら中のものが一目で見えるではありませんか。これを航空機用として商品開発に取り組みました。極めて難易度が高かったのですが、航空機会社もアドバイスをくれ、導入してくれました。航空機会社に感謝しています。
コミーの航空機手荷物入れ用ミラー世界シェアNO.1の「FFミラーAIR」は1999年のボーイング747のJAL機に初めて装備されました。それ以降、エアバス社や、EUではスカンジナビア航空への取り付けなどが大きな契機となり、今に続いております。このFFミラー開発と世界シェアNO.1への道のりはまさにユーザー視点への気づきと導きの連続でした。FFミラーというのは通常の鏡よりも視野が大変に広くなっています。学校や街中などで皆様の周りにもきっと一つや二つあるはずです。普通の鏡より視野が広いという特性を生かして、飛行機内では天井近くの手荷物入れの中に一枚ずつ貼られています。CAさんが忘れ物をチェックするのに大変役に立つということで納入を進めていたのです。それまではCAさんは座席のステップに乗り、手探りで手荷物入れを点検・確認していたのですが、この鏡を取り付けることでその作業がとても簡単に、そして確実に実行できるようになったのです。また、もちろんお客様自身が忘れ物の存在に気が付くこともできるのです。つまりコミーミラーを取り付けるのは「お客様の為」。お客様の忘れ物防止を目的として、我々は製品の営業活動をしていました。ところが、1999年10月スカンジナビア航空を始めて訪問して、ミラーが役に立っているか尋ねたところ、担当の方から伺ったのは忘れ物防止よりも「Bomb Check(ボム・チェック)」つまり不審物チェックでCAの役に立っていると聞きました。まさに「回転ミラックス」と同じで、ユーザー視点のニーズを顧客から教えてもらうことになったのです。
メディア掲載も多数
箸ほど面白いものはない。これをライフワークに‼
今コミーでは新しく「箸」の事業に取り組んでいます。またミラーとは全然違う話なのですが(笑)もともとは私自身の「箸って面白いな」という一視点からスタートしたのですが、今やすっかり会社の事業として取り組んでいます。我々日本人が毎日使っている「箸」。二本の棒だけでできているシンプルな道具です。何千年の時を経てもずっと変わらずただの2本の棒。だけどそれで日々の暮らしの中で食べたり、調理したり、何かをつまみ上げたりしていますよね。シンプルだからその素材の多様性も面白い。木や金属、プラスティックなどなんでもありますし、また値段もいろいろです。使い方は全部同じなのに。一体「箸」っていつから始まったのか。なんて考えだしましてね。箸の文化はとても長いですし、もちろん使うのは日本だけでないですよね。中国も韓国もアジア域内では古くから使ってきた文化があります。誰が一番最初に考えたのか。日本人の手先が器用だと言われる一因に「箸」が関係していると思います。「箸」について考え始めたら止まらなくて、とても面白くなってきたんですよ。私自信もシャッターの文字書きから始まり、看板屋からミラーまで、ものづくり一筋で生きてきましたから、その原点はすべて「手」なんです。人生で長い時間使う「箸」をもっと楽しみながら学ぶ会があってもいいなと考え、2006年 国際箸学会(2016年一般社団法人に)を設立しました。大学生に「箸」についての講義を行ったりもしています。「箸」という身近でシンプルな素材を通じて、年齢も性別も、国籍も違う共通の話題を提供できるようにと箸のゲームを開発して「箸技」とネーミングしました。ピーナッツの模型を箸で移動させる速さを競ったり、箸の様々な使い方をルールにしたゲームがあったりします。それを商品化したのが「箸タイム」™です。すでに日米の両方で特許を取得しており、将来的には国を超えて楽しんでもらいたいです。最近はリモートで、社内外の人とオンライン箸タイムを楽しんでいます。箸タイムはデイサービスなどで機能訓練に取り入れてもらっています。使っている人に話を聞きに行ったところ、大変好評で、まさか、認知症の人たちも喜んでくれるとは思いませんでした。箸が縁でたくさんの人と出会い、「出会いの喜び 創造の喜び 信頼の喜び」を感じています。また、面白いと思っていることを商品開発して、コミーは創業50年余年。おかげ様で、新商品を生み出し、ユーザーと共に喜ぶ会社になりました。
箸タイム
◆プロフィール
小宮山 栄(こみやま さかえ)
・コミ―株式会社 代表取締役
公式サイト https://www.komy.jp/
長野県小諸市生まれ 信州大学工学部卒 1968年コミ―工芸(現コミ―株式会社)創業
・一般社団法人 国際箸学会 会長
公式サイト https://kokusai-hashi.org/
・箸タイム 購入はこちらから https://www.hashiwaza.jp/hashitime
◆著書
◎「箸の話をきいてくれ」 2020年 コミ―物語選書02 840円
【取材を終えて】
世界シェアNO.1の会社の社長さんと聞いて、緊張気味に伺いましたが、会議室に現れた瞬間からとても気さくにお話を聞かせていただき、また社長様自身が人との出会いを大切にされているということがとてもよくわかりました。会社入口のお出迎えのボードにはきちんと印刷された「日刊スゴい人様」の文字が。社長のホスピタリティ精神がきちんと社員教育されていて、素敵な会社だなと思いました。