神の手を持つ男!般若心経の世界観を形にする、現代アートのトップランナー DAY1

本日登場するのは、山口県在住、神の手を持つアーティスト、中村敦臣様。国内外の個展や展示会で高い評価を受けていながら、その気取らない人柄がとても素敵です。その不思議な魅力はどこから来るのか。般若心経を深く理解し、社会を思考的に見る姿勢。まさに天賦の才能を与えられたアーティストです。

 

切り絵アーティスト 中村 敦臣様 DAY1

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見どころ

―幼い頃から思考した「人間関係」

―般若心経から得たインスピレーション

―切り絵という手法を使ったアート表現

手先が器用だった幼少期

山口県周南市で生まれてからずっと周南市で生きてきました。

昔から手先は器用でしたね。特にいつからとかはっきりは思い出せませんが、小学校の成績は5段階評価で図工だけはずっと最高評価の5でした。1,2,1,2,1,2,5みたいな(笑)。県の絵画コンクールで入賞したことも何度かありました。折り紙なら立方体のようなちょっと複雑なものを作ったりね。ラジコンカーにもはまりましたねー。実家の子供部屋は今でもラッカーで汚れたままです(笑)。

姉はとても成績優秀で、勉強においては比較にもならないくらいの僕でしたが、この誰にも負けない図工の成績というのが僕の自尊心を支えてくれたのだと思います。といってもすごく成績が良くなりたいなんていう願望さえ、特にもっていませんでしたけどね(笑)

 

父も母も普通の人でしたが、僕が2歳の時に離婚して、母親と3人で暮らすようになりました。小学校2年の時に新しい父親ができましてね。幼い僕にはなかなか難しい状況だったりもしたのですが、そのお父さんとの関係性を長い年月をかけて構築していくことで人の在り方などを観念的に学んだという側面はあると思います。実の親ではない人が親として接してくれる時、年齢的に未熟な心でそれを受け止めるのは本当に難しいことです。その教育的な想いや意味よりも、親ではない他人に叱られることの理不尽さが先に立つことも多かったですから。しかしその自分が置かれた環境についてもどこか俯瞰的にとらえていて、「なぜ自分はこのような環境を与えられたのだろうか」などと考えるようになりました。親子とは何か。他人とは何か。家族とは何か。この義父との関係性をきっかけにして人と人とのかかわり方を深く考える性格になったのかもしれません。

 

般若心経との出会いと死生観への醸成

小学校3年生くらいの時に手塚治虫さんの「ブッダ」や「火の鳥」を読む機会があって、衝撃を受けました。特に釈迦が悟りを開くシーンというのが当時の僕には強烈でしたね。一人の人間が一生を終えるまでの意味、生まれてくる意味や死ぬことの意味、今日を生きているということの意味などを考えるきっかけとなった作品です。なぜか般若心経や仏像などには小さい時から興味がありまして、特に般若心経には傾倒しました。中学生の時の図工で弥勒菩薩のレリーフを作成したくらいです。さきほど述べましたように成績は良くなかったのですが、般若心経が好きという影響もあり、高校は地元の般若心経系の学校へ進学しました。高校の同級生はちょっとやんちゃな人も多かったのですが、みんな年頃の男の子ですので通学の電車で女子校の生徒を意識する毎日でしたね(笑)。僕もご多分に漏れず、その日の髪形がものすごく重要な青春時代でした(笑)。般若心経系の学校に通ったからなのかどうかはわかりませんが、男女の関係性という中からも僕は人の生き方についての観念を学んでいたと思います。

 

当時から多くの女性とお付き合いをさせていただきましたが、いつも大体最後は僕が振られるんです。

付き合ってくださいと言われて付き合ったとしても最後は振られるというこのつらい現実(笑)。

なぜなんだろう。っというのは当然考えましたし、そもそもなぜ男女は出会いと別れを繰り返すのか。

自分の親もそうですしね。ここからも人の心の移ろいや、短い出会いと別れの意味や意義などを割と深く考える機会を得ました。男女の性欲なんかも、これは一体何だろうとかね。性欲の先には交尾があって、繁殖があり、種の保存があるわけですよ。時にはその行為自体がもう面倒だなとか思うときだってあるわけじゃないですか。だけどそこに快楽というものが存在すると、人間はそこに向かえるわけですよ。だからこの性欲自体も神様や仏様の見えざる手によって組み込まれた神聖なものなのではないかと考えていました。

 

日常にあふれていた創作の機会

高校卒業してからは地元の建設業に就職しました。建設現場での仕事を通じてもやはり手先の器用さが幸いすることも多かったです。建設廃材の木材やアルミ材なんかでちょっとした作品を作りもしました。コンクリートでテーブルや、時にはワイヤーアートをしたり。水彩画なんかを書いたりもしました。その時に欲しいという方がいれば差し上げていました。自分でいうのも何ですが、素人にしては割といいものができていたので、お店に飾ってくださる方もいましたね。ただ、だからといってこれを一生続けるのはどうなんだろうというのは常に考えていました。例えばテーブルを一つ作って、皆が喜んでくれたけれど、これを商売にするには材料仕入れてたくさん作って、販売してって考えるとやる気を失っちゃうよなーとかね。同じものを大量生産するという仕事は、僕自身が本当にやりたいこととは違う気がして、それでは自分の中の熱いものが持続しないような感じがありました。

そんな折に、ある日突然、本当に偶然的に切り絵に行きついたんです。すごくお世話になっていた方がいましてね、今でもずっとお世話になっているのですが、当時の僕の、まだ何者でもない才能というか感性みたいなものを大切にしてくださる方がいて。ある日、買い上げるからの方から何か作品を作ってくれと依頼がありました。皆が楽しく飲んでいるようなそんな絵が欲しいということでしたので描いたのですが、僕としては何とかしてその方にもっと感謝の気持ちを伝えたいなと思って。絵を描いただけでは何か足りないような気がして。いろいろ考えていたのですが、ふと身近にあったカッターナイフを使って、その絵を切ってみたいという衝動にかられたんです。七福神の絵でしたね。直感的に切り絵に行きついて。切り絵アートというカテゴリー自体も知らない中で「すごいものができた!」と実感できる作品ができあがったんです。自分が発明したというくらいの衝撃的な出会いでした。今までの様々なアート作品とは違う、まったく新しい自分の一つの表現方法を確立したのではないかと予感がありました。この感覚は今でも持ち続けているのですが、僕は常にだれもいない道を探していて、発明に近いものを創造することに喜びを感じます。いつも新しい何かに挑戦するような気持で作品を創りたいですね。

自分の作品へのこだわりとして、般若心経に由来する作品を初期の頃からずっと作ってきたのですが、ある日地元の高校時代の友人と話す機会がありました。彼は代々のお寺の跡取りでね、僕なんかとは別格の般若心経徒なわけです。ところが僕は若気の至りと言いますか、ちょうど個展を開いたり、話題にしてもらったりする機会が増えてきて、切り絵アーティストとして自信がついてきたころだったんですね。彼に向かって「俺、ちょっと般若心経がわかってきたよ」なん偉そうに言ってしまったんですよ。そしたらその彼は本当に正直に「中村すごいな、君は。俺はまだまだ般若心経が何かわからないでいるんだ」と穏やかに答えたわけです。ガーンと、頭を殴られたような気になりました。すぐに自分の浅はかさに気が付いたし、なんという不遜な考えを軽々に述べてしまったのだろうと大いに反省しました。それからはあまりの衝撃に、般若心経という概念からあえて少し距離をとった作品を創るようにもなりました。

インタビュー:NORIKO  翻訳:Tim Wendland

◆Proile&略歴

中村敦臣 切り絵アーティスト

公式サイト:https://www.atsuomi.jp/

Facebook: https://www.facebook.com/atsuomikirie

Instagram: https://www.instagram.com/atsuomi._paper_cut_artist/

光る折り紙販売店:浜松町 宇宙の店  https://spacegoods.net/

1974年山口県生まれ。 切絵アートクリエーター

2011年 国際グループ展(ニューヨーク・セーラムギャラリー)

2012年 国際グループ展(ニューヨーク・セーラムギャラリー

2014年 第15回ジャパンエキスポ招待作家(フランス パリ)

2015年 マイフェアドラゴン展(東京 南麻布 シャラ・パール)

2016年 もしもしにっぽんFESTIVAL 2016(東京 渋谷)

2017年 ONISHI PROJECT/Winter Group Show(アメリカ ニューヨーク)

2017年 TOKYO INTERNATIONAL ART FAIR 2017(東京 渋谷ヒカリエ)

2017年 「神の手ニッポン展」第3期 神の手アーティストに選任

2018年 敦臣「切絵の現在2018」展 山口井筒屋美術ギャラリー(山口)

2019年 さくら咲くや @ 百段階段 (東京 雅叙園 内 国指定文化財百段階団)

2019年 超絶技巧!の否定と肯定〜中村敦臣 切絵の現在〜(岐阜県 美濃和紙の里会館)

 

 

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